〔墳墓需要〕算定するうえで考慮すべきこと

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ビル型納骨堂の増加から

大規模収蔵施設の特集をした記事を見つけました。

都市部を中心に、数万規模のお骨を収納可能なビル型納骨堂が増えている。 大胆なデザインとともに、入館に参拝者の生体認証が導入され、お骨が自動搬送技術で運ばれるなど、一般的な墓所のイメージを覆すその実情に迫る。

ビル型納骨堂についてはこのブログでもたびたび取り上げてきましたが、1万、2万もの焼骨を収蔵する施設は本当に必要なのか?

という疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。確かにこのような納骨堂が増えると懸念されることは沢山あります。

ビル型納骨堂が増える⇒納骨堂の過当競争⇒価格が低下or売れなくなる⇒経営不振によりビル型納骨堂の維持管理が儘ならなくなる⇒経営破たん⇒ビルの廃墟化

このような負のスパイラルに陥った時に大損害が発生し、許可をした行政側の責任も問われかねません。

実際に都心部で不足しているということは間違いないことではあるのですが

墳墓需要についてどのようなことに考慮すべきか、納骨堂経営許可を申請する側、許可する側がお互いに納得いく需要算定はどこにあるのか考えていきます。

墳墓需要を考える理由とは?

何故、墳墓需要を考えないといけないのか?

ということを考えてみます。

墓地や納骨堂というのは公益事業になります。公益事業の反対は収益事業と言えますが、いずれにしても事業という意味では共通しています。

事業が成り立つかどうかは需要と供給のバランスです。この点は非常に重要です。

墓地や納骨堂についても例外ではなく、納骨したい側と納骨を受け入れる側のバランスがなければ事業として成立しないことになります。

その為、墳墓需要がどれぐらいあるのかを考えて設置を許可するか認めていかないと不要な墓地や納骨堂が増え土地の有効利用ができなかったり、廃墟化してしまうという問題が出てきます。

確かに、人は必ず亡くなりますので納骨する場所は必要になってきます。その為、需要がゼロになるということはまずないでしょう。

しかし、納骨場所が飽和状態になると墓地行政上の様々な支障があるということを理解しておかないといけません。

この需要について一番切り込んでいると思われるのが全日本墓園協会です。

この協会から発表された報告書の中で

平成26年度総括研究報告書 墓地行政をめぐる社会環境の変化等への対応の在り方に関する研究の2章が大変参考になります。


墳墓需要を量るうえで考慮すべきこと

特定の場所で墓地や納骨堂の経営を開始するには経営許可が必要ですが、その際に墳墓需要を算出していく必要性があります。

算出するのは宗教法人側です。行政が主体的に調べることはありませんが、その需要計算が妥当なものかの審査はされます。

仮に檀信徒専用の墓地・納骨堂ということであれば現在の檀信徒数が需要のベースになることは間違いありません。

しかし、公募型墓地の場合は様々な要素を総合的に考慮しなければなりません。

ではどういった要素を考慮すべきか代表的なものを列挙していきます。

人口と年間死亡者数

これから墓地や納骨堂を設置しようとする地域にどれだけの人口がいて、年間どれだけの方が亡くなられるのかを統計情報としてまず考慮すべきです。

しかし、死亡者数や死亡率は常に一律ではありません。

今後、増加していくことは確実ですし、地方にもよりますが2060年までに死亡率は人口の約2%にまで増えるという需要計算が全日本墓園協会の報告書からも読み取れます。

定着数

ベースにすべき人口や死亡者数ですが、人ですので必ず異動が生じます。飛行機や新幹線の発展で移動が容易になった今、出生地で亡くなる人もいればそうでない方も多いでしょう。

墓地の設置をする地域で亡くなる方の人数を定着係数を乗じることで算出します。

全日本墓園協会では約8割が例年定着するという考え方のようです。

傍系世帯率

既に墓地を持っている方は新たに墓地を購入しないという前提で考えれば、傍系、いわゆる枝分かれした世帯が主に購入することになるでしょう。

この傍系世帯の数を算出するには先ほどの定着数を乗じることになりますが全日本墓園協会では地域さはあるものの、この数値を約2割と捉えています。

この傍系世帯がある程度把握できれば全体のパイが把握できると考えられます。

取得希望率

これは自治体などが実施した、アンケート調査などを参考にしてどれぐらいの割合で墓地や納骨堂を求めているかということを算出します。

傍系世帯だから全て墓地を必要としているわけではなく、一定割合で散骨や手元供養などをされる方も存在しますし、地域差は必ず出てきますのでこの辺りは全国一律ではありません。

アンケート調査も最も信用できるのは自治体が主体的に実施したものであるのは疑いようがありませんが、調査会社が実施しているものは調査委託をどのような団体がしているのかで中立性がどれぐらいあるかを見極める必要があります。

まとめ

以上で挙げた考慮すべき点は代表的なものです。

死亡率、定着率、傍系世帯率なども将来的な数値としては随時、見直しと修正をしていくべきでしょう。

冒頭でふれた万単位の納骨可能数は客観的な数値分析がなされているのかが問題で、どんぶり勘定でないか危惧されるところです。この点は行政に広い裁量があるため、あくまで参考という位置づけもあるかと思います。

ただし、永続性を担保することを考えれば販売可能壇数が多ければ多いほどよいという考え方もあります。

なぜなら、納骨堂は一般的に管理料は受け取らず、法要などのお布施が主な収入になってくるからです。法要も実施するかは利用者の判断ですし、年に1回の場合もあれば、3回の場合もあります。

30回忌などの節目でお布施が入らなくなるということもあるので、極力収容数は多めに確保し、永く販売ができるようにしておくということが重要という見方も可能でしょう。

もちろん、納骨堂や墓地が飽和するような墓地の許認可行政は慎むべきところもあり、そのバランスは難しいところがあります。