〔宗教法人の収支計算書〕作成しなくてもよい場合がある?

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宗教法人の収支計算書

宗教法人の収入と支出を把握することはとても大事なことです。

恐らくお金の出入りについては日頃から気にされている宗教法人が大半だと思います。

宗教活動とは言え資本主義社会の現代においてお金の流れに無関心でいることはできません。

収入の内、プラスとなった収支差額は次年度以降に繰り越したり積み立てていき将来的に境内建物などの補修費に充てるなど計画的に金銭を管理するところが多いでしょう。

このような収入と支出の一覧表を収支計算書と呼ばれ、基本的に宗教法人は作成しなければなりません。

しかし、原則があれば例外もあります。

実はこの収支計算書、作成が免除されている宗教法人があります。

今回は宗教法人は収支計算書を作成しなければならないことと、どのような要件で作成が免除されるかについて詳しく見ていきます。

収支計算書の作成、備付、閲覧及び提出義務

作成、備付義務

収支計算書の作成等が義務付けられているのは宗教法人法25条からです。

毎会計年度終了後3カ月以内に財産目録と収支計算書を作成しなければなりません。

宗教法人法(抜粋)

(財産目録等の作成、備付け、閲覧及び提出)
第二十五条 宗教法人は、その設立(合併に因る設立を含む。)の時に財産目録を、毎会計年度終了後三月以内に財産目録及び収支計算書を作成しなければならない。
2 宗教法人の事務所には、常に次に掲げる書類及び帳簿を備えなければならない。
一 規則及び認証書
二 役員名簿
三 財産目録及び収支計算書並びに貸借対照表を作成している場合には貸借対照表
四 境内建物(財産目録に記載されているものを除く。)に関する書類
五 責任役員その他規則で定める機関の議事に関する書類及び事務処理簿
六 第六条の規定による事業を行う場合には、その事業に関する書類

例えば3月末決算であれば6月末までに作成しなければなりません。

そしてこの収支計算書を作成したら宗教法人の事務所に備え置かなければなりません。

この「備え置く」という言葉ですが、深く考える必要はありません。

単純に事務所内に置いておくだけで構いません。

ただ、どこに置いているかは把握しておく必要があります。

さらに、置く場所については特段、決められていませんが事務室など執務を行うような場所であったり、集会室など信者さんが集まる場所など比較的自由です。

閲覧

収支計算書は作成して、置いておけばよい。というわけにはいきません。

場合によっては閲覧をさせる必要があり、毎年所轄庁に提出しないといけません。

ではどのような場合に閲覧をさせないといけないのか確認していきましょう。

宗教法人法(抜粋)
(財産目録等の作成、備付け、閲覧及び提出)
第二十五条
3 宗教法人は、信者その他の利害関係人であつて前項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項各号に掲げる書類又は帳簿を閲覧することについて正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者から請求があつたときは、これを閲覧させなければならない
4 宗教法人は、毎会計年度終了後四月以内に、第二項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項第二号から第四号まで及び第六号に掲げる書類の写しを所轄庁に提出しなければならない。

閲覧という言葉の意味を確認しますと単純に「見せること」です。

見せるということは写しを渡すことではありません。

写しを渡すことで閲覧とするケースもありますが、基本的に見るだけですので内容が容易に拡散することはありません。

ではどのようなケースで閲覧をさせる必要があるのか見ていきましょう。
1 信者その他の利害関係人
2 閲覧することについて正当な利益があり
3 その閲覧の請求が不当な目的によるものでない
4 請求があつたとき

以上の4つの要件が揃うと閲覧をさせる必要があります。

どれか一つでも欠ける場合は閲覧させる必要はないと言えます。

例えば、信者さんから閲覧することについて正当な利益があるが不当な目的であった場合は請求があっても閲覧させる必要がないということになります。

しかし、不当な目的があるかどうかはなかなか判断が難しい場合があります。

そのような場合には閲覧請求書などのひな形を作成し、請求書欄に不当な目的でないことを誓約するような項目を入れておくことで対応すればよいかと思います。

提出義務

収支計算書を閲覧を請求される機会はなくても、毎年所轄庁には提出しなければなりません。

所轄庁というのは都道府県知事です。

これを毎会計年度終了後4カ月以内に提出する必要があります。

宗教法人法(抜粋)

(財産目録等の作成、備付け、閲覧及び提出)
第二十五条
4 宗教法人は、毎会計年度終了後四月以内に、第二項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項第二号から第四号まで及び第六号に掲げる書類の写しを所轄庁に提出しなければならない。

例えば3月末決算であれば7月末までに提出することになります。

因みに、作成は3月末決算であれば6月末までに作成する必要があり、作成期限と提出期限の間に1ヵ月の余裕が与えられています。

これだけ時間があれば余裕で提出できるはずですが実は意外と見落としがちです。

放っておくと所轄庁から督促状が来ることがありますので気を付けましょう。

これを無視し続けると…罰則もありえます。罰則については後でお伝えします。

そして提出に関しては所轄庁の留意義務も定められています。

宗教法人法(抜粋)

(財産目録等の作成、備付け、閲覧及び提出)
第二十五条
5 所轄庁は、前項の規定により提出された書類を取り扱う場合においては、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない。

この留意義務については具体的な事例があまりないのですが、提出した内容にケチをつけられた場合にその指摘の内容が宗教上の特性や慣習に触れていれば問題となるでしょう。

作成、備付、閲覧及び提出義務を怠ったら?

以上で説明したのは義務ですから、それを怠ればペナルティもあります。

さほど重くはないと思いますが、10万円以下の過料が課せられます。

宗教法人法(抜粋)

第十章 罰則

第八十八条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、宗教法人の代表役員、その代務者、仮代表役員又は清算人は、十万円以下の過料に処する。

四 第二十五条第一項若しくは第二項の規定に違反してこれらの規定に規定する書類若しくは帳簿の作成若しくは備付けを怠り、又は同条第二項各号に掲げる書類若しくは帳簿に虚偽の記載をしたとき。

五 第二十五条第四項の規定による書類の写しの提出を怠つたとき。

これらの義務を怠って過料を課せられたというケースは殆ど聞きません。

提出の督促状が届いたのを無視し続けたりするとあり得るのかもしれません。

また、閲覧請求をして閲覧した方が虚偽の収支計算書で、その内容に基づいて宗教法人と取引し、損害が生じて裁判沙汰になった場合などが考えられるかもしれません。

いずれにしてもケースとしては少ないですが何かの問題が発端で明るみになった場合に課せられることが多いのではないでしょうか。

収支計算書が免除されている場合がある?

ここまでで、収支計算書は作成しなければならないという話をしてきました。

しかし、原則があれば例外もあり一部の宗教法人には作成が免除されるケースがあります。

その理由は元々は収支計算書は作成する義務がなく法律が後からできたため、現在作成する義務があるのです。

このことについては「宗教法人法の一部を改正する法律(平成七年法律第一三四号)の施行について」(庁文宗第一三七号)と題し平成八年九月二日に各都道府県知事あてに文部事務次官から通知がなされてます。以下、一部を抜粋します。

(一) 収支計算書について 抜粋

① 宗教法人が、収支計算書を作成しなければならないのは、平成八年九月一五日以後に開始する会計年度からである。

② 当分の間、公益事業以外の事業を行っていない宗教法人であって、その一会計年度の収入の額が八、〇〇〇万円以内である場合は、収支計算書の作成義務を免除することとされているが、これは、従来収支計算書を作成していなかった収入規模の小さな宗教法人について直ちにその作成を義務づけることは、その事務負担などから困難が予想されるための経過措置であり、一会計年度の収入の額が八、〇〇〇万円以内の宗教法人に収支計算書を作成しないことを奨励するものではない。

④ 収支計算書の作成義務が免除される場合であっても、収支計算書以外の宗教法人法(以下「法」という。)第二五条に規定する書類及び帳簿に係る作成等の義務は免除されるものではない

また、収支計算書の作成義務が免除される場合であっても、収支計算書を作成していれば、事務所に備え付け、かつ、その写しを所轄庁へ提出しなければならない。

免除される条件を整理

1 平成8年9月15日以後の会計年度までに宗教法人となっていること
2 公益事業以外の事業を行っていない
3 一会計年度の収入の額が八、〇〇〇万円以内

この3つの条件の全てを満たしていれば収支計算書の作成等の義務は免除されます。

最近、宗教法人化されたところはこれらの条件2と3に関わらず作成しなければなりません。

この特例は既存の宗教法人を保護するもので、これから宗教法人化する場合は今の法律に基づく必要があります。

更に、「当分の間」とされていますのでいつまでも作成しなくてもよいというわけではありません。

何れは既存の宗教法人も作成が義務付けられることを念頭に作成されることをお勧めします。

それにしても8000万円って何を基準に?という疑問はありますが…

免除されるのは収支計算書だけ

もし収支計算書の作成義務が免除されていたとしても、それ以外の書類作成はちゃんとしなければなりません。

財産目録についても忘れずに作成しておきましょう。

仮に作成義務が免除されているのに収支計算書を作成していた場合は、所轄庁に提出しなければなりません。

作らなければ提出しなくてもいいが、作ってしまうと提出が求められるということです。

まとめ

  • 収支計算書は原則として作成しなければなりません
  • 作成だけでなく備付、閲覧、提出の義務まであります
  • しかし、一部既存の宗教法人に配慮する形で免除されているケースがある