〔宗教法人の事業〕アイドルや映画事業を始める時に押さえておくべき手続きとは?

宗教法人とアイドル事業

昨今、一部の宗教法人でアイドルや映画を一つの導線として布教活動を行っているという話を聞きます。

宗教法人が所有する境内建物(本堂など)で女性が踊りや歌唱などのパフォーマンスをしたり映画を通して教義を広め理解を深める活動で実際はさほど数は多くはないのですが、やはり注目を集めるところがあると思います。

このこと自体はお寺に足を運んでもらうための導線として効果はありますし、布教活動の範疇であれば特に問題ないでしょう。

しかし、場合によっては宗教法人法が求める手続きを行わないといけない可能性があります。

これらを行わないことで罰則というものはありませんが関係者の理解があるのかないのか、区分経理の有無などが問われるかもしれません。

これからも寺院からアイドルが生まれることも願って真面目に考えてみます。

宗教法人が事業を行えるとする根拠

宗教法人法より

映画を撮影、放映したりアイドルを結成し観衆に歌や踊りを見せ、そのためにチケットを販売したりグッズを販売するということは一種の事業に当たると考えられます。

テレビでよく目にする皆さんが知っているアイドルは多くの場合は株式会社等の営利法人が運営しているはずです。

しかし寺院はこの営利法人が行っているようなアイドル事業はできません。

ただ、宗教法人の目的に反しない範囲で可能です。

その根拠は宗教法人法の6条です。

宗教法人法 (公益事業その他の事業)
第六条 宗教法人は、公益事業を行うことができる。
2 宗教法人は、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができる。この場合において、収益を生じたときは、これを当該宗教法人、当該宗教法人を包括する宗教団体又は当該宗教法人が援助する宗教法人若しくは公益事業のために使用しなければならない。

このことから宗教法人の目的に反する事業というのはできません。

例えるのはなかなか難しいのですが、寺院であれば仏教を否定したり、聖書を語るようなことかもしれません。

公益事業という言葉が出てきましたが、宗教法人が行う墓地経営などが当たります。

一方で公益事業以外の事業というのは国税局が分類する34業種に分類される事業になります。

これらは宗教活動で受領するお布施とは違い事業による収入ということで法人税が課税されます。

この34業種はどのような事業なのかは国税庁が示しています。

34種の収益事業(国税庁より)

宗教法人は収益事業を行う場合に法人税を納める義務がありますが、この場合の収益事業とは、34種類の事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいいます。

これらの事業に係る事業活動の一環として、又はこれに関連して行われるいわゆる付随行為も収益事業に含まれるとされています。

34業種

物品販売業 写真業 美容業 不動産販売業 席貸業 興行業 金銭貸付業 旅館業 遊技所業 物品貸付業 料理店業その他の飲食店業 遊覧所業 不動産貸付業 医療保健業 製造業 周旋業 技芸教授業 通信業 放送業 代理業 駐車場業 運送業 運送取扱業 仲立業 信用保証業 倉庫業 問屋業 無体財産権の提供業 請負業(事務処理の委託 鉱業 労働者派遣業を受ける業を含みます。) 土石採取業 印刷業 浴場業 出版業 理容業

私たちが今後創出していくと考えられる事業や創出してきた事業はこの34業種に収まるのではないでしょうか。

宗教法人がその目的に反しない範囲での34業種となると、例としては倉庫業としてペットの納骨堂事業や、境内地を月極駐車場などに利用する駐車場業などが思い浮かびます。

事業を行うことについて認証を得る

宗教法人は収益事業を行う場合は宗教法人規則において都道府県知事又は文部科学大臣の認証を受けておかないといけません。

その根拠としては宗教法人法第12条にあります。

第二章 設立
(設立の手続)
第十二条 宗教法人を設立しようとする者は、左に掲げる事項を記載した規則を作成し、その規則について所轄庁の認証を受けなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 設立しようとする宗教法人を包括する宗教団体がある場合には、その名称及び宗教法人非宗教法人の別
五 代表役員、責任役員、代務者、仮代表役員及び仮責任役員の呼称、資格及び任免並びに代表役員についてはその任期及び職務権限、責任役員についてはその員数、任期及び職務権限、代務者についてはその職務権限に関する事項
六 前号に掲げるものの外、議決、諮問、監査その他の機関がある場合には、その機関に関する事項
七 第六条の規定による事業を行う場合には、その種類及び管理運営(同条第二項の規定による事業を行う場合には、収益処分の方法を含む。)に関する事項
八 基本財産、宝物その他の財産の設定、管理及び処分(第二十三条但書の規定の適用を受ける場合に関する事項を定めた場合には、その事項を含む。)、予算、決算及び会計その他の財務に関する事項
九 規則の変更に関する事項
十 解散の事由、清算人の選任及び残余財産の帰属に関する事項を定めた場合には、その事項
十一 公告の方法
十二 第五号から前号までに掲げる事項について、他の宗教団体を制約し、又は他の宗教団体によつて制約される事項を定めた場合には、その事項
十三 前各号に掲げる事項に関連する事項を定めた場合には、その事項

収益事業の内容について34業種の中から示し、その管理運営についてどのようにするのか認証を受ける必要があります。

また、そこで得た収益をどのように処分するのかも決めておかないといけません。

収益事業の内容は登記事項です。

ですので誰でも登記簿を見ればその宗教法人がどのような事業を行っているのか一目でわかります。

ただ、多くは事業自体を行っていないケースがあり登記簿では表れない部分もあります。

アイドルや映画事業を行うには

このような前提で宗教法人がアイドル事業を行う際に行うべきことを考えてみます。

まず、34種類の事業のうちアイドルというのはどの分類に属するか考えると、「興行業」ではないでしょうか?

興行(こうぎょう)とは芝居やコンサート、スポーツイベントにおいて、鑑賞、観戦を主な目的とした観客を集めることを目的とした催事を指す。(wikipedia)

このことからアイドルと呼ぶかは関係なく芝居やコンサートをする場合は興行というくくりに入りそうです。

さらに、グッズ販売も同時に行うのであれば「物販業」に当たるでしょう。

これを宗教法人規則に載せるためにはまず責任役員会などで規則変更を議決し、包括宗教法人の承認を受けることになるでしょう。

その上で、都道府県知事の認証を受ける手続きが必要になります。

宗教法人規則には以下のように記載されるかと思います。

事業種別 興行業
事業名  アイドルグループ名
所在地  〇〇県〇〇市・・・

事業種別 物販業
事業名  アイドルグループ名
所在地  〇〇県〇〇市・・・

認証されれば登記をしなければなりませんので登記申請が必要です。

何故、登記しなければならないかというと以下のような条文が宗教法人法52条2項1号にあるからです。

(設立の登記)
第五十二条 宗教法人の設立の登記は、規則の認証書の交付を受けた日から二週間以内に、主たる事務所の所在地においてしなければならない。
2 設立の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的(第六条の規定による事業を行う場合には、その事業の種類を含む。)
二 名称
三 事務所の所在場所
四 当該宗教法人を包括する宗教団体がある場合には、その名称及び宗教法人非宗教法人の別
五 基本財産がある場合には、その総額
六 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
七 規則で境内建物若しくは境内地である不動産又は財産目録に掲げる宝物に係る第二十三条第一号に掲げる行為に関する事項を定めた場合には、その事項
八 規則で解散の事由を定めた場合には、その事由
九 公告の方法

罰則は存在しないが…

実は規則を変更せずに収益事業を行った場合に宗教法人法上の罰則は存在しません。

しかし、何が問題になるかというと規則認証がなされていないということで責任役員会や包括宗教法人の承認を得ずに行っているという見方をされることです。

更に、宗教活動で得られる収入と収益事業で得られる収入と別々に会計管理されているかが不透明です。

例えば物販で得た収入を収益事業としてではなく、お布施として処理してしまうなどそれぞれの収入を混同してしてしまうと法人税の問題が出てきてしまいます。

一般会計と特別会計に分けて区分経理を徹底することが重要です。

会計専門家の関与は勿論ですが、表向きも宗教法人規則の整備を行っておくことも大切です。

大半は守っていただいているところが多いと思いますが。

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