〔礼拝用建物〕借金返済ができず境内建物が差押えされることはある?

宗教法人への差押え

宗教法人の資金というのはお布施が自動的に入ってくるものでなければ、それが将来も保障されるものではありません。

収益を目的とする法人ではないために自助努力がなければ立ち行かなるところもあります。

そのため、何か事業を行おうとするときには借り入れで賄うケースというのもあるかと思います。

しかし、もし貸す側が何の担保もなく金銭を貸し付けたとすれば実はリスクの高い取引をしていると言えます。

何故なら宗教法人には多くの財産があるように見えて、実は礼拝用建物については差押えが難しいケースが多いからです。

今回はどのような条件で差押えができるのか、またそもそも差押えとはどういうものなのかを見ていきましょう。

差押えについての基本知識

差押えとは、国家権力によって特定の有体物または権利について、私人の事実上・法律上の処分を禁止し、確保することになります。

民事上も刑事上も差押えというものは存在するのですが、この記事では民事手続きにおける差押えで、民事上の手続きになると民事執行法が根拠法になります。

差押えをする理由は、債権者(お金を貸した側)が債務者(お金を借りた側)が自身の財産を勝手に処分することがあるので、それがないように国が処分の禁止をすることです。

基本的に差押えというのは強制執行を行う前の段階の措置で、いつまでも債務者が自己の財産を自由に処分できる状態にしておくと、債務者は執行を免れようと財産の譲渡や隠蔽を行なう可能性があるため処分を制限し、債権者の回収の機会を確保する必要があります。

一方で債務者が生活するのに必要な部分は差押えを禁止、無剰余差押(強制執行後配当が出ない差押)、超過差押(債権者の被保全債権の額が予想配当額を上回る差押)を原則禁止することで債務者の保護を図っています。

このような前提で宗教法人が持つ礼拝建物や土地について考えていきましょう。

礼拝用の建物・敷地を登記することができる

宗教法人法66条には宗教法人が所有しかつ礼拝の用に供していれば土地、建物をその旨登記することができます。
「礼拝の用に供している」とは礼拝用に使用しているという意味です。
(登記)
第六十六条 宗教法人の所有に係るその礼拝の用に供する建物及びその敷地については、当該不動産が当該宗教法人において礼拝の用に供する建物及びその敷地である旨の登記をすることができる。
2 敷地に関する前項の規定による登記は、その上に存する建物について同項の規定による登記がある場合に限りすることができる。

第2項については礼拝の用に供している敷地であっても、礼拝の用に供していない建物がそこに建っていればその旨の登記はできないということになります。

もう一度確認すると以下の2条件で登記ができます。

宗教法人が所有

礼拝の用に供していること(但し、敷地は礼拝の用に供する建物が建っていること)

もし、このような登記申請をお考えの方は司法書士へ相談ください。

礼拝用建物・敷地と登記されていると差押えができない

礼拝用の建物、敷地として登記されているとその不動産は差押えできません。

その根拠は宗教法人法83条が根拠になります。

(礼拝用建物等の差押禁止)
第八十三条 宗教法人の所有に係るその礼拝の用に供する建物及びその敷地で、第七章第二節の定めるところにより礼拝の用に供する建物及びその敷地である旨の登記をしたものは、不動産の先取特権、抵当権又は質権の実行のためにする場合及び破産手続開始の決定があつた場合を除くほか、その登記後に原因を生じた私法上の金銭債権のために差し押さえることができない

既に礼拝不動産が担保に入っていたり、破産手続き開始をした場合は除きますが、登記後に発生した私法上の金銭債権のために差し押さえることはできません。

逆に捉えると礼拝用の建物として登記をする前に金銭の貸し借りをした場合は、その私法上の債権に対して差押えができるということになります。

もし、宗教法人に金銭を貸し付けている場合に差押えを検討するのであれば、その貸し付けが登記前か登記後かをまず確認ということになります。

今から登記しておきたいという場合は?

既に借り入れをしている、又はその予定があるなど様々なケースがあると思いますが、実際に礼拝の用に供しているのにその旨の登記をしていない宗教法人は存在するのではないでしょうか。

その場合は宗教法人から申請することができます。

但し、その場合には所轄庁による境内地・境内建物の証明を受ける必要があります。

宗教法人法第67条には以下のように定められています。

第六十七条 前条第一項の規定による登記は、当該宗教法人の申請によつてする。
2 登記を申請するには、その申請情報と併せて礼拝の用に供する建物又はその敷地である旨を証する情報を提供しなければならない。

各宗教法人を所轄する所轄庁を確認の上相談しに行きましょう。

所轄庁って?という方は以下↓のページも確認してみてください。

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宗教法人とは? このブログでも度々、宗教法人についての記事を公開してきていますが、そもそも宗教法人って何?という疑問があると思います。 墓地について語るうえで絶対に外せないのは宗教法人。 宗教と墓地は密接に関わっているからこそ宗教法人の基本的なことは押さえておかなければいけません。...

一方で、礼拝の用に供しなくなった場合は遅滞なく抹消しなければなりません。

(礼拝の用途廃止に因る登記の抹消)
第六十九条 宗教法人は、前条の規定による登記をした建物が礼拝の用に供せられないこととなつたときは、遅滞なく同条の規定による登記の抹消を申請しなければならない。前条の規定による登記をした土地が礼拝の用に供する建物の敷地でなくなつたときも、また同様とする。
ただ、この場合に申請をしなかったとしても特段罰則は宗教法人法で規定されていないようです。
この辺りは礼拝を辞めたかどうかの証明や判断というのは実は客観的に難しい部分もあるのかもしれません。