〔宗教法人設立〕3年必要な理由とは

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宗教法人設立には数多のハードルが存在する

宗教法人を作るにはどれだけ時間がかかりますか?

という質問を受けたとしたら私は少なくとも3年。と答えます。

この答えに対して「そんなに!?」という反応が素直なところでしょう。

株式会社であれば数日で設立が可能ですし、宗教法人と同じ認証主義の法人と言えばNPO法人ですが、NPO法人であっても数カ月で設立が可能です。

設立が難しいだけに税制上の優遇など法人化のメリットは大きなものです。

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立ち上げが難しい法人というのは宗教法人以外にもあるわけですが、恐らく3年もというのは日本で一番法人化に時間がかかるのが宗教法人と言ってもいいのではないかと思います。

今回は宗教法人の立ち上げがこんなに時間がかかり、難しいということを記事にしていきます。

宗教法人法に基づく申請

申請の際にどのような書類が求められているかについて宗教法人法の第13条に定められています。

(規則の認証の申請)
第十三条 前条第一項の規定による認証を受けようとする者は、認証申請書及び規則二通に左に掲げる書類を添えて、これを所轄庁に提出し、その認証を申請しなければならない。
一 当該団体が宗教団体であることを証する書類
二 前条第三項の規定による公告をしたことを証する書類
三 認証の申請人が当該団体を代表する権限を有することを証する書類
四 代表役員及び定数の過半数に当る責任役員に就任を予定されている者の受諾書

全て重要な書類ではあるのですがこの中でとりわけ肝になるのは宗教団体を証明する書類です。

何を以って宗教団体を証明するのか。

「私たちは宗教団体です!」と言葉で主張したところで誰も信じてくれません。

誰が見てもこれは宗教団体と判断ができるだけの書類を揃えなければなりません。

証明する書類で最も肝になる書類、それは「宗教団体規則(規約)」になります。

この規則は宗教法人規則のベースになるものと考えてください。

宗教団体規則の制定を責任役員会で議決したときから法人化への道は始まります。

責任役員会って何?という方は以下の記事も読んでみてください

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3年を要する根拠と実績

宗教法人規則というのは認証主義です。

宗教団体が規則を定めればその通りに役所が認める考え方が認証制度で、法律に反しさえしなければ即法人化すべき話ではあります。

本来は株式会社の準則主義に近いと言えます。

しかし昨今、オウム真理教の事件や租税回避などを目的とした宗教法人の悪用が社会問題化する中で設立に高いハードルを設け、安易に宗教法人を作れないようにしたという歴史的な経緯があります。

このような経緯で設立には以下のような審査基準(規則等の認証に関する審査基準)が設けられています。

綜合的な判断が求められる

規則等の認証に関する審査基準(抜粋)

宗教法人法(以下「法」という。)に基づく規則、規則の変更、合併及び任意解散の認証に関する審査に当たっては、法の規定の外、特に以下の点に留意して行うものとする。

一 設立に係る規則の認証について

(一) 法第二条に規定する宗教団体としての要件を具備するか否かの審査に当たっては、その個々の要件が、宗教団体の特性によって多種多様であり、また、相互に関連することもあることから個々には弁別し難い場合があるので、総合的に判断を行う。

日本における宗教団体は大半が寺社になりますが、キリスト教の教会やイスラム教のモスクなどもあります。

宗教団体の特性というのは宗旨の違いもありますし、目的、活動場所、活動形態など様々ですのでそこは都道府県知事によって総合的な判断が行われるということになります。

綜合的な判断が求められる背景から、前例のない新宗教よりも従来からある宗教の方が認証されやすいというのは実際あるかもしれません。

過去3年間の実績

3年を要するという一番の根拠は、過去3年間の活動実績を行政が確認しなければならないということから来ています。

(二) 法第二条の宗教団体とは、同条に規定する要件を形式的に具備するのみならず、現に団体としての実体を有し、社会通念上他の個人又は団体とは区別された独自の活動を行っている団体をいう。

したがって、認証申請に係る団体(以下「当該団体」という。)が宗教団体であるかどうかについては、次の点に留意の上、(一)を踏まえて判断する。

① 当該団体が法第二条に規定する主目的のための宗教活動を行っているかどうかについて、法第一三条第一号に規定する当該団体が宗教団体であることを証する書類(以下「宗教団体であることを証する書類」という。)として、過去三年間程度の実績の一覧の添付を求め、これを客観的に証明する写真等により確認すること。

② 信者及びいわゆる宗教教師の存否について、宗教団体であることを証する書類として、その一覧の添付を求め、適切な方法により確認すること。なお、信者の数については、宗教団体としての実体の確認の観点から審査すること。

③ 宗教団体としての実体について、次の事務運営、経理及び財産の状況について調査し、確認すること。

ア 宗教団体であることを証する書類として、当該団体の組織、意思決定方法、財産の管理等に関する規約の添付を求め、過去三年間程度これに従った運営がなされているかどうかを調査すること。

イ 宗教団体であることを証する書類として、過去三年間程度の収支予算書及び収支計算書の添付を求め、その真実性とともに、予算の執行が他と区別される独立した経済主体として行われているかどうかを調査すること。

ウ 宗教団体であることを証する書類として、財産目録の添付を求め、礼拝の施設に係る不動産などの財産が、他と分離独立した当該団体自身のものであるかどうかを調査すること。なお、団体の永続性についても検討すること。

④ 法第二条第一号の団体については、現地において礼拝の施設を確認すること。なお、礼拝の施設については、当該団体の特性及び慣習を考慮の上、公開性の確保についても検討すること。

⑤ 法第二条第二号の団体の実体については、被包括宗教団体との関係に関する実績をも調査することにより確認すること。

過去3年の実績や書類が必要になるのはまとめると以下の3点です。

1.宗教活動をしている写真
2.宗教団体規則通りに運営していることを証明する書類
3.収支予算書・収支計算書

これらの活動実績を証明するには短期間では不可能です。

特に宗教活動をしている写真については遡って作成することは不可能です。

また宗教団体規則の通り運営しているかを証明していることや、収支予算・決算書類についても実際に運営をしていない限り、架空のものでは証明が困難です。

場合によっては預金通帳なども必要となるので、その残高と収支決算の現預金残高と一致するかどうかなどの問題もあり遡って作成することは難しいと言えます。

綜合的に判断がなされるということは、多方面に亘る資料を基に団体としての実質を備えているか見られるということです。

事業内容の適正さ

3年の実績というのは一番高いハードルになるわけですが、宗教法人化してから行う公益事業やそれ以外の事業の内容によっては認証されない場合があります。

(三) 当該団体が法第六条に規定する公益事業その他の事業を行うこととしている場合、次の点を審査する。

① 公益事業その他の事業の規模が過大である等により、法第二条に規定する宗教団体の主たる目的を欠くこととなっていないかどうかを確認すること。

② 公益事業以外の事業については、法第二条に規定する宗教団体の主たる目的を達成するための業務と矛盾し、又はこれに支障を生じさせるものは、宗教法人の行うことのできないその目的に反する事業に当たると解されるので、この観点から検討すること。

公益事業の規模が過大になっていれば本来の布教活動を行う目的が欠くようなこともあります。

例えば、墓地や納骨堂の運営をする宗教法人で広大な霊園を設置するようなことが想定されると、布教活動よりも墓地を売るために設立するのか?という疑問を持たれます。

実際に設立当初から数百、数千人と信者がいることは極めて稀なことなので、仮に墓地を運営するにしても身の丈に合った規模でなければ認証はされません。

公益事業以外の事業に関しても、本来の宗教法人としての目的と外れていないかというのは重要です。

使用しない境内地を駐車場として信者以外に貸し付けをすることは認められるかもしれませんが、活動に支障が出るような事業というのは認められない場合があります。

疑いがあれば調査が入る

当たり前のことですが、申請時に提出した実績を証明する書類に疑いを持たれるような場合は、解明のための調査が行われます。

(四) 法第一三条に基づき提出された書類について、その証明している事実の存否に理由ある疑いを持つ場合には、その疑いを解明するための調査を行う

この調査内容ですが、追加書面の提出であったり礼拝施設等の現地調査などが考えられます。

もし申請した内容に虚偽の事実が含まれていた場合は過料に処されます。

宗教法人法(抜粋)

第八十九条 宗教法人を設立しようとする者が所轄庁に対し虚偽の記載をした書類を添付して第十二条第一項の規定による認証の申請をしたときは、当該申請に係る団体の代表者は、十万円以下の過料に処する。

一度、このような虚偽の申請をしてしまうとこの代表者からの申請はその後認められにくいこともあります。

役所との信頼関係は認証を受けるうえで重要ではないでしょうか。

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真っ当に宗教活動をしていて、団体から法人化したいという布教者も多くいる一方で売買によって宗教法人を活用したいという方もいるでしょう。

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宗教法人売買とは何かという記事を書いたことがありますが、思いの外アクセスの数が多いです。

やはり検討されてる方やどのようなものか知りたいという方は多くいらっしゃると思いますが、売買になると場合によっては設立より高いハードルを超えないといけないケースがあります。

また、宗教活動を冒涜しているという見られ方もしますので、3年間の実績を証明して設立を目指して欲しいというのが私の意見です。

勿論、信者さんを救うためのやむを得ないものであれば許容される部分もありますが、長く続けていくためにはどのような選択をすべきか考えましょう。

高々3年間の実績を証明できない宗教団体は、宗教法人を持っても30年の活動をすることは不可能でしょう。

永続性が求められるからこそ3年という時間は決して長いわけではありません。

宗教活動は宗教法人にならなくてもできることですので宗教法人売買は慎重になるべきです。

まとめ

  • 宗教法人の設立は審査基準によって厳しいハードルが設けられています
  • 厳しいハードルの1つとして3年間の実績が求められています
  • 虚偽の申請によって設立の認証を受けようとすると科料に処される場合があります

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