〔任意解散〕真宗大谷派寺院の解散認証に門徒が審査請求

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解散認証の取消を求める審査請求から

宗教法人が自ら解散をすることは認められています。

これを「任意解散」と言います。

活動自体が困難となった場合、檀信徒の散逸などで宗教法人としてではなく「宗教団体」として活動や宗教活動自体を辞めるような場合に自発的に行う手続きです。

これは設立に比べて当事者での合意が形成されていれば比較的容易にできます。

解散にももう一つ形態があります。「法定解散」です。

法定解散はある一定の事由に該当すれば当然解散するというもので破産手続の開始や認証取消、合併認証、規則で定める解散事由に該当する場合などです。

法定解散の中で有名なものは「解散命令」というものもありますね。

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どのような場合に解散命令が出るか記事にしていますが、宗教法人法81条に該当する場合は裁判所が解散を命令することができるというものです。

宗教法人を強制的に解散させるには司法の手によってしかできません。

その中で今回、任意解散を巡る審査請求が文部科学大臣になされその採決結果が公表されています。

裁決結果は「棄却」となっています。

今回はこの審査請求について記事にしていきます。

この審査請求のソースは以下のサイトで「宗教法人」と検索してください

29受庁文第1022号(受理番号)

却下ではなく棄却となった理由

厳密に言うと「却下」と「棄却」の二つは審査請求が認容されなかった点で共通しますが大きな違いが違います。

行政不服審査法という法律がありそれぞれの定義があります。

行政不服審査法 (処分についての審査請求の却下又は棄却)
第四十五条 処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。
2 処分についての審査請求が理由がない場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する。

却下は期間経過や不適法な場合になされ、棄却は適法な申立てではあるものの申立ての内容にに理由がない場合になされます。

そして今回棄却となった理由は審査請求をした方がその宗教法人の門徒であることが認められたことが主な理由となります。

なぜ門徒が審査請求人としての適格性があるかというと、審査請求というものが行政庁の処分に不服があるものと決められているからです(行政不服審査法2条)しかし、不服があれば無制限に誰でも認められるかというとそうではありません。

判例上は、処分について審査請求をする法律上の利益がある者、すなわち、その処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害された又は必然的に侵害されるおそれのある者であれば審査請求をすることができるものと考えられます。

宗教法人の解散によって法律上の不利益を侵害される者であれば審査請求が可能で、門徒も信者名簿に記載されていればその一例となります。

不服の要旨

今回、どの宗教法人の門徒から申立てがあったのかは分かりませんが、公開情報では全て特定されうる部分には〇〇で伏せられています。

ただ、後の方を見てもらえれば分かるのですが真宗大谷派の寺院というところまでは分かります。

審査請求人の不服申立ては,○○知事が平成○○年○○月○○日付けで行った宗教法人○○(以下「○○」という。)の任意解散の認証(以下「本件解散認証」という。)について,○○の門徒であると主張する審査請求人が,解散に同意したとされる門徒の大半は○○の門徒ではなく,ニセ者であり,○○の規則において解散の手続に必要とされる門徒の3分の2以上の同意が得られていないことから,文部科学大臣にその取消を求めるというものである。

解散に同意した門徒は「偽物」という大胆な主張がなされています。

ところで任意解散の方法については各宗教法人の規則に記載すべき内容ですが、一般的には全責任役員、全総代の同意+宗派代表役員の承認というところが多いのではないでしょうか。

今回の事例は「門徒の3分の2以上の同意」も必要というのはあまりないケースかと思います。

それだけ解散というものが門徒の利害に関わる重要なことと捉えているとも言えます。

そして門徒という資格がどのようなものなのかを考える機会にもなりそうです。

棄却された具体的な理由

文部科学省の判断について抜粋しながら適宜解説していきます。

まず必要な手続きを間違いなく取っていたのかを確認する必要があります。

任意解散の認証に当たって法人がすべき手続を経ていたか

(1)○○の規則で定める手続
責任役員会議事録及び総代の同意書から,平成○○年○○月○○日に責任役員の定数の全員及び総代の同意を得ていたことが認められる。また,承認書により,管長(○○宗憲(以下「宗憲」という。)第77条の規定により定められた寺院教会条例第26条の規定により宗務総長とされる)が平成○○年○○月○○日に承認したことが確認できる。
(2)公告
「公告証明書」,「宗教法人「○○」解散公告」及び「公告を証明したことを証明する写真」から,平成○○年○○月○○日から○○日までの10日間公告し,信者その他の利害関係人に対し,解散に異議があればその公告の日から平成○○年○○月○○日までにこれを申し述べるべき旨を公告したこと及び公告時の代表役員代務者である○○氏によれば,異議はなかったことが認められる。
(3)よって,以下で検討する門徒の3分の2以上の同意以外については,任意解散の認証に当たって法人がすべき手続を経ていたことが認められる。

任意解散に必要となるのは規則で定めた手続きと公告手続きの2点として門徒全体の3分の2の同意の部分以外は特段問題がないという判断をしています。

実際に不服申立の要旨はその点での不備は指摘していません。

問題は門徒をどのように捉えるか、3分の2を充足しているかの議論になります。

門徒の確認について

まず申立人側の主張から入ります。

(1)門徒の3分の2以上の同意を検討するに当たり,まず門徒について検討する。
(2)本件解散認証の申請者である○○氏は,処分庁に「解散につき門徒同意書」を46名分の同意書とともに提出し,解散に同意している門徒は、○○の門徒数50名の3分の2以上であることを証明するとした。処分庁はこれを認め,本件解散認証をした。
(3)審査請求人は,門徒について,以下のとおり主張している。
○○は○○年に住職かつ代表役員が亡くなり,不在となって以降,門徒が同じ教区にある3か寺(○○,○○及び○○)に,門徒名簿(以下「旧来の名簿」という。)と共に預けられ,現在に至っている。門徒を預かるということの意味は,一時的に預かるということであって,預けられた門徒は当該3か寺の門徒になるものではない。○○の門徒条例に従った手続はとられておらず,預けられた門徒は未だ○○の門徒(以下「旧来の門徒」という。)である。「解散につき門徒同意書」にいう50名の門徒のうち7名は旧来の門徒であるが,それ以外の43名は平成○○年以降に○○の境内地の整備や清掃の中心となった人々であり,これらの者(以下「新たな門徒」という。)は門徒であるということはできない。また,新たな門徒のなかには,○○とは別の寺院の檀家である等,○○に帰依していないことが判明している者がいる。さらに,旧来の名簿に記載されていて,50名に入っていない旧来の門徒が○○3名,○○3名の6名いる。加えて,旧来の名簿に記載はないが,門徒が預けられた後,代替わりをした場合等の親族も,○○の門徒である。

総門徒数が50名ということですので34名の同意があれば3分の2は満たせるわけですが、50名の内43名は別寺院の檀家でもあり門徒とは言えないということと、50名以外にも旧来の門徒、代替わりの門徒もおり3分の2を満たしていないという主張をされています。

それと今回の解散が住職たる代表役員が亡くなったことに起因しているのでしょうか。

この点は定かではないですが代務者が手続きしていることから後任の住職が就任しなかった(できなかった)可能性があります。

活動継続が困難であるならば解散させるべきという判断はいたって健全なように見えます。

処分庁による主張

○○の規則第40条の規定により効力を有するとされる宗憲第82条によれば,門徒とは「教法を聞信して真宗本廟に帰敬し,寺院又は教会に所属する者」であり,宗憲第84条の規定に基づいて定められた門徒条例第1条によれば「本派に帰依し,寺院又は教会に所属する者であって,門徒名簿に登載された者」である。
なお,○○に帰依しているか否かは人の内心に関することであり,処分庁がその内心に立ち入って調査すべきことではない。
(5)門徒については,処分庁が主張するように,「門徒名簿に登載された者」である必要があるが,処分庁は個々の内心に立ち入るべきではない。このため,処分庁による門徒の確認は,門徒名簿を確認することで足りると解される。この点について,処分庁は,本件解散認証の審査に際し,「解散につき門徒同意書」の記載により,門徒数が50名であると認めている。処分庁が,認証時に門徒名簿を確認していなかったことについては,調査不十分な点が認められるが,本件審査請求における審査において認証時の名簿を確認したところ,処分庁の主張のとおり,50名の門徒の確認ができた。
(6)一方,旧来の名簿に記載されていて,認証時の名簿に記載されていない6名については,門徒である可能性があるが,処分庁が主張するとおり,認証時の同意書には審査請求人を含む旧来の門徒も含まれており,故意に門徒の一部に対し同意を得る手続を取らなかったことを窺わせる事実は認められず,旧来の名簿に記載の門徒まで確認すべきだったとはいえない。
(7)なお,審査請求人は,門徒が預けられた後,代替わりをした場合等の親族についても門徒であると主張するが,(4)で述べたとおり,門徒条例第1条によれば,門徒であるためには「門徒名簿に登載された者」である必要があり,門徒名簿に登載されていなくても当然に○○の門徒となるとする根拠たり得る○○の規則又は宗憲等の定めは見いだせず,門徒とは認められない。

門徒の定義については各寺院、各宗派によりそれぞれあるわけですが、この寺院の場合は宗憲がありその中で門徒の定義をしています。

この中でどうとでも解釈できるのは「帰依する」という言葉です。

帰依というのは仏教用語でもありますが「拠り所とする」という意味があります。

そしてこれを証明するのは各門徒による意思によるもので、内心については外部からは判断ができないわけです。

一方で名簿には登載されていないものの、その寺院に帰依している方については門徒とは認めませんでした。

一部調査不足があったことは認めましたがこのことが結果を左右することはなかったようです。

個人的には極めて妥当な判断のように思います。

門徒のうち3分の2以上の同意を得ていたかについて

確認した門徒のうち,3分の2以上の同意を得ていたかについて検討する。
(1)(4)で述べたとおり,○○の門徒については,本件審査請求における審査において認証時の名簿により確認し,当該名簿のうち3分の2以上の者が同意しているかを認証に際して添付された同意書と照合して確認したところ,申請どおり,50名のうち46名の同意があり,門徒の3分の2以上の同意があったことが認められた。
(2)なお,仮に,審査請求人の主張する,旧来の名簿に記載されていて,認証時の名簿に記載されていない門徒を加えると,門徒数は最大56名となる。同意書は46名分あるが,審査請求人は,2名は錯誤による撤回を主張しているが,これを除いても,○○は少なくとも44名の同意を得ているので,3分の2以上(38名以上)から同意を得ていたことに変わりはない。

処分庁側の判断を是認したうえで名簿に登載されていないとする6名を加え、一方で錯誤で2名を同意者から外したとしても44名(同意者数)/56名(真の門徒数)でも3分の2を超えているため任意解散の判断は間違っていないという結論になります。

何故、審査請求をしたのか?

行政による許認可の結果によって、法律上の利益が害される場合は裁判所へ出訴できるのが通常です。

例えば墓地経営許可申請をして不許可処分となった場合は行政に不服申立てをせずに裁判所に申立てができます。

宗教法人法に関わる認証はそれができません。

何故なら、宗教法人法では行政訴訟をする前に不服申立をすることが決まっているからです。

これを不服申立前置主義と言います。

今回の裁決もそうですが文部科学省には宗教法人審議会という諮問機関があります。

この諮問機関は弁護士や宗教者、研究者など宗教分野の専門家で構成されています。

第33期宗教法人審議会 委員名簿(五十音順)を掲載しています。

まずこのような専門機関を経ても尚、決着が付かない場合は裁判所で審理することになります。

そうすることが裁判所の負担の軽減となり、今回の認証取消の申立ては審査請求がまず必要になるということです。

まとめ

記事が長くなりましたがまとめると

  • 真宗大谷派寺院で任意解散の認証取消申立てが起きましたが棄却裁決
  • 決め手になったのは門徒名簿
  • 門徒の定義は宗派によって違い、帰依しているかどうかは審査の対象外
  • 宗教法人法における認証取消は審査請求前置主義(いきなり裁判はできない)

今回の不服申立事例は氷山の一角で不服申立には至らないが当事者間でしこりが残ってしまった任意解散というのはあるかと思います。

「3分の2の門徒の同意」を要するという要件を満たそうとする以上は必ず一部の門徒は反対します。

全員同意する方が逆に不自然です。

今回は56名中44名同意・12名不同意となり現実的な結果かと思いますがこの場合は、不服申立てをある程度覚悟すべきです。

反対の12を多いと見るか少ないと見るかはあると思いますが、手続きの過程で同意をもらえるだけの説明がなされたのかが気になるところです。

解散したら終わり。ではなくそこからは別の意味での始まりもあります。

宗教法人を拠り所としていた少数の方がその後どのような行動をされるのか、さらに裁判所に出訴するのかも含め気になるところです。

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