〔火葬場〕施設数と法律上の定義

墓地や納骨堂だけでなく火葬場についても考えよう

火葬場は墓地、埋葬等に関する法律で墓地や納骨堂と同じく規制されている施設の1つです。

墓地や納骨堂について詳しく書かれた記事は多数あるのですが火葬場について法律的、統計的な解説をしているものがほとんどないのが実情です。

墓地や納骨堂については購入後も度々足を運ぶのに対して、火葬場は長い人生でも数回程度しか行かないのではないでしょうか。

それだけに暮らしに身近なものではないので、詳しく知る機会はないかもしれません。

しかし、火葬場は一部株式会社等の民間が運営しているところがありますが大半は官です。

税金で運営されている部分もありますので知っておいても損はないでしょう。

火葬場の運営や火葬場の数が適正なのかを見ていくことは市民側も求められるところではあります。

このような火葬場について墓地、埋葬等に関する法律や統計資料などを基に考えていきます。

全国の火葬場数

総数

全国の火葬場数は平成29年度の衛生行政報告例から4112件存在します。

しかし、恒常的に使用している火葬場で過去1年以内に稼働実績のある火葬場の数で言うとその半分以下の1437件となります。

逆に2675件は恒常的に稼働しておらず過去1年間は実績がないということになります。

これらの大半は今後も稼働する予定はなくいずれ廃炉するか、稼働中の火葬場の予備的施設として残存しているのではないかと想像されます。

設置主体

設置主体は火葬場総数4112件に対して地方公共団体は1965件で半分ですが、恒常的に稼働している施設に目を当てると1437件に対して1374件と地方公共団体以外の火葬場は殆ど稼働していないということになります。逆に稼働しているのは自治体が運営しているところが大半であるということです。

恒常的に稼働している民間の火葬場を見てみると公益法人が3件、宗教法人が8件、その他は52件と少ないながらも存在することが分かります。

その他の設置主体ですが察するに株式会社や組合、財産区などになるのではないかと思われます。

株式会社で現在も稼働しているところは、採算が取れる場所で一定の人口が集中しているところというのは想像できそうです。

全国火葬場データベースが厚生労働省のページで公表されています。

全国火葬場データベースについて紹介しています。

このなかで、どのような設置主体があるのか確認ができますが大半は地方公共団体ということが分かります。

政令市の状況

多くの政令市は複数の火葬場を抱えているのですが、千葉市、仙台市、堺市、京都市はそれぞれ1箇所のみ(稼働中)となっています。

1箇所のみで運営しているのは恐らく炉数が多く同時に多数の死体を火葬できる施設である一方で、火葬場数の多い政令市は逆に炉数が少ないのではないかと思われます。

また2箇所で稼働している政令市については、昔から稼働している火葬場が施設の耐震性や老朽化などの問題で新たに設置し当面併存し、いずれ古い方を廃止するような状況になっているのではないかと思います。

火葬場数の状況

衛生行政報告例から火葬場の数値を取り出して以下の通り分かりやすくまとめていますので参考にして下さい。

「火葬」と「火葬場」の法的な定義

墓地、埋葬等に関する法律から

それぞれの法的な定義を知るには墓地、埋葬等に関する法律の二条に記載されていますので以下に引用します。

墓地、埋葬等に関する法律 第二条

2 この法律で「火葬」とは、死体を葬るために、これを焼くことをいう。

7 この法律で「火葬場」とは、火葬を行うために、火葬場として都道府県知事の許可をうけた施設をいう。

全く難しい話ではないのですが、死体を葬るために焼くことが火葬、火葬場はこの火葬するために都道府県知事から許可を受けた施設のことです。

この許可を得ているかどうかというのは非常に重要です。

火葬場として許可を受けていない場合は、法律上の火葬場というの定義に当てはまらず火葬場のような施設で火葬をしているということになり、墓地、埋葬等に関する法律違反や死体損壊等の刑法罪になりうるということは注意が必要です。

市長から火葬場の許可を受けずに火葬していた施設

実際に墓地、埋葬等に関する法律違反になるかは悪質性の度合いに寄りますが、実際に許可なく火葬していたことが問題となった施設があります。

神戸新聞NEXTの記事を紹介します。

兵庫県明石市は22日、市営斎場「あかし斎場旅立ちの丘」(和坂1)が2011年の建て替え時から7年半、市長の許可を得ずに違法状態で火葬をしていたと発表した。同日会見した市は「早急に不備の改善を行う」と謝罪。許可書は24日の交付をめどに手続きを進めているが、市民生活を優先し、斎場は通常通りに運営するという。

火葬場を設置する際、墓地埋葬法は都道府県知事の許可を義務付け。1998年に県から市に事務委任された。市は同斎場を2011年5月に建て替えた際、新たに市長への許可申請が必要だったが、手続きを怠っていた。

斎場を管理する市市民生活局の永野潔局長は「職員に認識の欠如があったのではないか」と釈明。当時の担当者はすでに退職しており、詳しい事情は今後確認するという。

また、同法では斎場の管理者である斎場管理センター所長が、経営者である市長に毎月の火葬状況を報告する義務があるのに、報告を怠っていたことも判明した。

合田和央斎場管理センター所長は「斎場が市の施設であることから、経営者、管理者はいずれも市長だと誤認していた」と説明。「管理者を届け、市長への報告も行う」とした。(勝浦美香)

 兵庫県明石市は22日、市営斎場「あかし斎場旅立ちの丘」(和坂1)が2011年の建て替え時から7年半、市長の許可を得ずに違法状態で火葬をしていたと発表した。

この問題は明石市で起きたことですが他の自治体は問題がないと言い切れるでしょうか?

火葬場の許可は基本的に更新等はありませんが、建替えて内部構造が変化したり一部を増炉したり廃炉をするのであれば墓地、埋葬等に関する法律10条2項に関わる廃止や変更許可が必要です。

その度に、市長へ申請しているのかは自治体の良識に任されています。

施設によっては許可証を掲示しているところもあるかと思いますがそうでない場合、どうしても確認したい場合は情報公開請求をするなどするしかありません。

許可の有無がうるさく言われる理由

明石市のケースも情報公開から発覚したという噂もあるのですが、何故、火葬場の許可があるかないかをうるさく言われるかというと、この記事を読まれている皆さん自身やその家族が無許可の火葬場で火葬されたとすればいい気持ちになるでしょうか?という心情的な部分。

後は衛生面や火葬炉の技術的な基準を満たしているかなど、死体を取り扱う施設ですので、ある意味で焼骨を預かる墓地や納骨堂以上に厳しい基準が求められるのではないかと考えられます。

民間で自由に火葬場が開業できないという制度がある意味を行政は理解しなければなりません。

火葬場職員の資質向上を

所長の発言から

先ほどの神戸新聞の記事の最後にあった2文で衝撃的な発言があります。

また、同法では斎場の管理者である斎場管理センター所長が、経営者である市長に毎月の火葬状況を報告する義務があるのに、報告を怠っていたことも判明した。

合田和央斎場管理センター所長は「斎場が市の施設であることから、経営者、管理者はいずれも市長だと誤認していた」と説明。「管理者を届け、市長への報告も行う」とした。

管理センター所長が管理者は市長という発言には衝撃があります。

「では、管理センターは何を管理しているの?」という疑問しかありません。

市長(市)では管理できないから(又は適当でないから)管理センターを設けているという趣旨を理解していないわけです。

施設の維持管理はしていたという説明になると思いますが、墓地、埋葬等に関する法律上の管理者責任は基本的に同一人格が行うべきですしそれが一般的です。

むしろ別々にする必要性がありません。

所長がこのような発言をされるということは職員には墓地、埋葬等に関する法律が十分に理解されてない懸念があります。

ただの事務処理を怠っただけ。と安易に捉えるべきではありません。

国の通達から

実際に国の通達において維持管理を行うものと墓地、埋葬等に関する法律上の管理は同一の者が行うのが適当という見解が示されています。

昭和46年の通知ですが現在もこの考え方は有効です。

○火葬場管理者の資質向上について

(昭和四六年六月二九日)

(環衛第一一九号)

(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省環境衛生局長通知)

近年、都市地域の拡大、農村地域の近代化等社会的、経済的構造の変化に伴い、火葬場施設の移転、増改築等、その整備が進められつつあるが、これが施設の近代化、合理化の進展とともに、その維持管理については、公害防止の見地も加えて益々重要性を加えつつあることは周知のとおりである。火葬場には、墓地、埋葬等に関する法律第12条の規定により必ず管理者を置くべきものとされ、その任務については、同法第13条から第18条までに規定されているところであるが、当該施設の維持管理についても、この管理者がその任に当たることが適当と考えられ、その維持管理の適正化を図るためには、当該管理者の資質をさらに向上させることが必要である。このため、今後火葬場経営者においては、主として下記のような知識及び素養を有する者を選定するよう配慮するとともに、現に勤務する管理者に対しても適切な現任訓練を行わせるよう指導方格段の御配慮をお願いする。

1 墓地、埋葬等に関する法律および火葬場の設置、維持管理上関係する法律、例えば公害関連諸法、建築基準法等の知識を有すること。

2 火葬場施設の維持管理を中心とする知識を有すること、例えば燃焼工学、衛生工学、電気工学、機械工学等

このことから火葬場の管理者には墓地、埋葬等に関する法律をはじめ維持管理をする上で必要な知識が求められています。

このような知識は墓地や納骨堂を管理する側には求められていませんが、火葬場には高い水準の能力を求めています。

そのような能力を持ちえるのは民間では容易ではなく、地方公共団体が適任という結論になるというのは理解できます。

しかし財政的な問題で難しいというのも実情です。

その場合は複数の地方公共団体で火葬場管理のための組合を立ち上げて、合理化を進めることも選択肢ですし実際にそのような取り組みをしている火葬場は存在します。

今後も人口が流動的になり火葬場の適正数が変化していく中で、廃止や統合など進めながらも技術や知識などの運営ノウハウは散逸しないような取り組みも行政には求められます。

フォローする

この記事についてもっと聞きたい、ご意見などありましたらLINEで友達追加をしていただき個別にお問い合わせ頂けます。

友だち追加