〔お墓と後見制度〕寺院と檀家との新たな関わり方

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後見人住職

ここ数日、遺骨の引き取り手がないいわゆる、漂流遺骨に絡んだニュースが続いています。

納骨する人や場所がなくなってきていることに、ようやく社会がその重大性に気付き始めたということでしょうか。

今回取り上げる記事も同じく、漂流遺骨のことなのですが19人の後見人をしている住職さんが取り上げられています。

福井県越前町上糸生の祐善寺の岡崎賢住職さんです。社会福祉士で認知症高齢者の後見人をされています。

この後見人についてですが、2種類あるということご存知でしたか?

これからのお寺と檀家さんの関係として後見制度は重要だと思いますので、今回は後見制度を中心に記事にしていきます。

法定後見と任意後見

このブログをご覧になられている方の中には既に後見人を経験されている方もいらっしゃるかもしれません。

後見制度は大きく法定後見と任意後見の2種類があります。この2つについて簡単にまとめてみます。

法定後見

法定後見は、本人の判断能力が不十分になった場合に家庭裁判所の審判により後見人(保佐人・補助人)が決定され開始されます。(根拠法は民法)

この制度を利用する主旨は、すでに判断能力が不十分な人に代わって、法律行為をしたり、被害にあった契約を取消したりすることで、そのような法律上の専門性がある弁護士や司法書士が選ばれることが多いです。

法律専門家以外にも、判断能力が十分ではない認知症患者などが被後見人になるケースが多いため、社会福祉士といった福祉の専門家も後見人に就くことがあります。

誰が就くべきかは、親族等の申し立てに従い家庭裁判所が被後見人の状況をみて判断します。

この記事で紹介されている岡崎住職は社会福祉士ということですから法定後見によって就かれている案件も多いのかなと思慮します。

任意後見

今は元気ですが、将来、判断能力が不十分になった時に備えておくための制度です。

この任意後見の特徴は家庭裁判所が後見人を選任する法定後見とは違い、予め任意に選んだ人と公正証書で任意後見契約をすることで、支援内容を決められるというところです。

専門家と言えども知らない方を後見人として迎えるのは抵抗があるという方もいるでしょう。第三者だからこそ、公正な判断ができるという考え方ができますが、自ら選んだ人だから任せられるということもあります。

因みに任意後見、法定後見にも以下のような欠格事由があります。

1 未成年者

2 家庭裁判所で解任された法定代理人、保佐人、補助人

3 破産者

4 行方の知れない者

5 本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族

6 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者(任意後見のみ)

寺院との任意後見で漂流遺骨や無縁墳墓は減少するか

住職兼社会福祉士として困っている高齢者を救済していくのは、本来、宗教者としてあるべき姿なのかもしれません。

ただ、通常の布教活動と合わせて行うのは相当な負担でしょう。

家族同士のつながりが薄れている中で、寺院と檀家さんとの関係を強めることは昨今問題となっている漂流遺骨や無縁墳墓の問題に対して解決までは行かなくても、その糸口は見いだせるかもしれません。

何故なら、漂流遺骨と無縁墳墓の問題は両者ともに人間関係の希薄化からくるものだからです。

その方法論の一つとして、後見制度によって繋がることもあるでしょう。

任意後見によって、檀信徒の方の後見人になり、生前のこと、死後の葬儀、火葬、納骨、そしてその先の供養まで全て受けることは可能です。

そのことは以前記事にしました。

〔遺言〕だけじゃない!終活で大事な公正証書の話
NHKクローズアップ現代から 終活の落とし穴として、お墓の問題がNHKで取り上げられていました。 論点はいくつかありましたが、その中で名前や住所は分かるのに納骨する場所が分からないという問題についていろいろ考えるところがありました。 代々の家墓がある、終活で生前建墓したお墓や納...

死後について、制度面での改善を求めるのは第一生命経済研究所主席研究員の小谷みどりさん(48)。「日本の福祉政策では、医師が死亡診断書を書いた時点で、亡くなった人は『人』でなくなる」と指摘。住み慣れた地域で最期まで暮らせるように支援する地域包括ケアシステムの中に、墓まで組み込むことで「みんなが安心して死ねる社会が実現する」と話す。(記事抜粋)

厚生労働省によると地域包括ケアシステムの目的は「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援」です。

小谷氏が提言するように、お墓についても組み込むことは高齢者の尊厳につながることは間違いありません。

「みんなが安心して死ねる社会の実現」というのは容易ではありませんが、宗教もその役割を果たせると思います。