〔虚偽認証!?〕宗教法人「至誠光魂寺」架空の信者名簿で認証か?

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「信教の自由」巧妙に悪用か?

「信教の自由」は憲法によって保障されています。

このことは日本国憲法第20条で明確に定められています。

日本国憲法

第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

憲法第20条の考え方は一般的に「政教分離」という言葉で表され、政治と宗教は分離させるべきというものです。

このような考え方は宗教法人に関わる多くの手続きで適用され、配慮がなされています。

その手続き一つとして宗教法人の設立に関わる規則認証があります。

今回はこの規則認証の手続きで信教の自由を悪用したことが話題になっています。

佐賀県の宗教法人が陶器販売などを装い高金利で融資をしていた出資法違反事件で、逮捕された代表らが架空の信者を記した名簿を県に提出し、法人設立の認証を受けた疑いのあることが16日、捜査関係者への取材で分かった。

佐賀県の宗教法人が陶器販売などを装い高金利で融資をしていた出資法違反事件で、逮捕された代表らが架空の信者を記した名簿を県に提出し、法人設立の認証を受けた疑いのあ…

どのような形でこの宗教法人は「信教の自由」を悪用したのか今回は考えていきます。

信者名簿

信者名簿とは

信者名簿というのはまさに信者が記載された名簿です。

この名簿には一般的に氏名、住所、連絡先、性別、生年月日、信仰歴などが記載されます。

所謂、宗教法人が持つ顧客名簿であり要配慮個人情報です。

特定の宗教を信仰しそのために特定の寺院や教会、モスクなどに礼拝をしている人を記載します。

そうでない人のことを記入するのは原則NGです。

一方で複数の宗教法人の信者になることは自由ですので、重複することは可能です。

このような名簿を宗教法人は作成することになっています。

しかし、これは設立の絶対条件なのかという疑問も実はあります。

設立に必要なの?

宗教団体が宗教法人になるには多くの書類を行政に提出しなければなりません。

設立時に作成するものや、常に事務所に備えるものの2通りあります。

宗教法人法ではその書類の内容を示しています。

その中に、信者名簿はあるのでしょうか??

宗教法人法

第二十五条 宗教法人は、その設立(合併に因る設立を含む。)の時に財産目録を、毎会計年度終了後三月以内に財産目録及び収支計算書を作成しなければならない。
2 宗教法人の事務所には、常に次に掲げる書類及び帳簿を備えなければならない。
一 規則及び認証書
二 役員名簿
三 財産目録及び収支計算書並びに貸借対照表を作成している場合には貸借対照表
四 境内建物(財産目録に記載されているものを除く。)に関する書類
五 責任役員その他規則で定める機関の議事に関する書類及び事務処理簿
六 第六条(公益事業)の規定による事業を行う場合には、その事業に関する書類

実は宗教法人法においては信者名簿の作成は求められていません。

信者名簿の提出はあくまで行政が認証審査をするために必要としているものです。

法律で作成が義務付けられていなくても、信者がいてこそ宗教団体であり宗教法人です。

認証審査において求めることの合理性はあります。

宗教団体は人に対して布教するわけですから、その人がどれだけいるのか。

一人、二人なら認証はされません。

しかし名簿の内容を実質的に評価することは不可能と言えます。

行政は信者名簿の真贋を確認できない

「あなたは〇〇という宗教法人の信者ですか?」

そのような連絡が都道府県の役人からあったなんて噂は聞いたことがありません。

何故なら、これこそが信教の自由であり行政が誰がどのような信仰があるかなど知ることそのものが宗教に対する関与ととられかねません。

行政の側は内容の正確性を確認したいはずですが、そのような確認の連絡を信者がうけることで憲法第20条の侵害と感じることは十分あります。

また信者名簿のボリュームとして仮に30名前後であれば、確認が可能かもしれませんがこれが100名単位、1000名を超えると確認がほぼ不可能です。

このようなことを考えると信者名簿を行政に提出することの意義はあるのだろうかと疑問に感じることがあります。

作りさえすれば内容の真実性は問わないのか?

と、勘違いしたりそれを悪用しようとする宗教法人は今後も出てくる可能性があります。

悪用するとこのようなことが起こる

そして、宗教法人「至誠光魂寺」は確認できないことを悪用した結果、記事にあるようなことになってしまいました。

捜査関係者によると、県に提出された名簿には立石容疑者の知人らが信者として記されていた。ところが、合同捜査本部が名簿に記された百数十人のうち何人かに事情を聴いたところ、みな「私は信者ではない」「名簿に載っていることも知らなかった」などと、関わりを否定するような説明をしたという。県側も法人設立時に信者をチェックしておらず、でっちあげの名簿だった疑いが強まっている。(記事より)

しかし気を付けるべきはまだ百数十人のうち何人かしか事情を聞いていないので、全体としてどれだけ架空信者がいるのかは不明です。

実際には信者が百数十人のうち数十人がいれば宗教団体としての体はまだあると言えますが…

仮に信者がほとんどいないということが明白になった場合、この宗教法人に対して何らかの対処がなされる可能性があります。

解散命令の可能性

今回の事件で出資法違反で代表役員が逮捕されているわけですから今後の捜査にもよりますが解散命令が出る可能性があります。

その根拠は宗教法人法の以下の条文です。

 (解散命令)

第八十一条 裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。
一 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。
二 第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたつてその目的のための行為をしないこと。

出資法違反は勿論のこと、高金利の貸金業を営む目的で宗教団体を運営していたと判断されればこれは宗教団体の目的を著しく逸脱したものと捉えることができるでしょう。

まとめ

信者名簿を作成しておく意義は宗教法人の活動の根本は布教活動であってそれに賛同する人がどれだけいるのか把握しておくことにあります。

人がいてこその布教活動であるため、名簿があるというのが当然という考え方があります。

一方で、檀家制度を廃止するという大胆な寺院のことが書かれた記事を見つけました。

 日本人がなじんできた「お葬式のかたち」がいま激変している。従来型のお葬式ではなく、「家族葬」が広く受け入れられ、弔いの形は家から個へ――。葬儀費用の「見える化」と価格破壊は何を生むのか。AERA 8...

このような寺院は今後も増える可能性があります。

イスラム教であれば礼拝さえできればどこ(のモスク)でもいい。(礼拝する方向が大事という意味で)

という考え方もありますのでイスラム教の宗教観でいえば信者名簿というのは何の意味もなさないという考え方もあります。

このような悪用を背景に信者名簿がどれだけの意味を持つのか、グローバル化や寺院内における改革からその意義を考えていかなければなりません。