〔墓じまい〕行政書士法と改葬申請代行

行政手続き代行を売りに墓じまい集客はいいのか

今やインターネットで「墓じまい」と検索すれば無数の業者が一瞬で画面に出てきます。

墓じまいを請け負う業者やその業者を紹介するサイトは山のようにあるわけですが、その中で以前から気になっているのが「行政手続き(改葬申請)を代行」「申請書の提出代行」などの言葉。

ここで言う、行政手続きや申請書というのは改葬許可申請のことを指しています。

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この改葬許可申請というのはさほど難しいものではありませんが、一般の方からすれば一生に一回あるかないかの手続きではないでしょうか。

慣れない手続きを代わりにしてくれるというのであれば、その業者に墓じまいを依頼する強い動機になりえます。

しかし、この改葬許可申請の代行を業務に謳う場合に気を付けてほしい法律があります。

行政書士法というものです。

ほんの一部の業者だと思いますが行政書士ではない方が申請代理を請け負っているのではないかと疑念を持たれかねないHPが存在しています。

行政書士法ってご存知ですか?

行政書士の業務について

行政書士という職業は既に耳にしたことがあるかもしれません。

司法書士と混同されやすいのですが、行政書士自体どういう仕事をしている職業なのか意外と知られていません。

勘のいい方はもうある程度この後の話の流れは読めているかもしれませんが…

改葬申請のような行政手続きを専門に行うのが行政書士になります。

行政書士は法律で定められた業務を行う国家資格者のことで、この法律を行政書士法といいます。

行政書士法には行政書士が業として行える内容を規定する一方で無資格者の方はそれができないようになっています。

以下、行政書士が行う業務についての条文を抜粋します。

行政書士法
(業務)
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

この条文を短くまとめると

他人の依頼を受け報酬を得て官公庁に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類作成を業としているということです

もっと分かりやすく言うと依頼を受けてお金をもらって役所へ提出する書類作成をすることは行政書士にしかできないということなんです。

更に官公庁に提出する書類については作成だけでなく提出についても代理することができます。

勿論ですが確定申告や訴状などの書類は税理士法や弁護士法など行政書士法以外の法律で規制されていますので行政書士でも作成はできません。

行政書士となる資格とは

このような業務を行う上で必ず必要になるのが資格です。

どうすれば資格を取得できるかは以下のような要件があります。

(資格)

第二条 次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有する。

一 行政書士試験に合格した者
二 弁護士となる資格を有する者
三 弁理士となる資格を有する者
四 公認会計士となる資格を有する者
五 税理士となる資格を有する者

六 国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間及び行政執行法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第四項に規定する行政執行法人をいう。以下同じ。)又は特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員又は職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して二十年以上(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校を卒業した者その他同法第九十条に規定する者にあつては十七年以上)になる者

年に1回の行政書士試験に合格することを始め、公務員として一定期間行政事務に携わるなど行政書士になるにはいろいろな方法が存在します。

さらに業務を行おうとすれば日本行政書士会連合会で行政書士として登録することが必要です。

行政書士でないものが業務を行うと…

行政書士でない(有資格無登録含む)方が書類作成代理や提出代理をすることを規制する条文があります。

第八章 雑則 (業務の制限)

第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。

そして、重い罰則があります。

墓地、埋葬等に関する法律の罰則とは比較にならない重さですね。

第九章 罰則
第二十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 行政書士となる資格を有しない者で、日本行政書士会連合会に対し、その資格につき虚偽の申請をして行政書士名簿に登録させたもの
二 第十九条第一項の規定に違反した者
つまり、改葬申請代行を表向きに行政書士でない方が謳うのは実はリスクがあることになります。

業としてとは? その線引き

「業」としてとは一体どういうことなのかという疑問に至るかと思います。

簡単に言えば「仕事として」「業務として」ということで金銭を得ているかどうかということになるでしょう。

業というのは1回でも行えば業です。

金銭を得ているかということですが厳密には、お金ではなくて何かの権利や財産でも同じです。

そこは客観的に判断されると思いますが、実際に問題になるケースというのは悪質性があるかどうかということになるでしょう。

しかしこういったケースはどうでしょうか。

改葬申請代行を予めするとは広告やネットなどで謳ってはいない石材店が墓じまいの改葬撤去作業を請け負った際に、偶然、改葬申請の方法が依頼された方が分からず教えてほしいという要望に丁寧に説明しその場で作成した申請書を人助けとしてボランティアで市役所に提出に行くケースです。申請代行をしてもしなくても墓じまい料金は変わらないことなどの事情があれば有償でしているとは言い切れません。ただ、グレーではあります。

こういう場合に行政書士法違反で問題にしようとするとハードルが高いと言えます。

一方で改葬申請代行の費用や改葬撤去の工事費など全部込みこみで仮に20万円としておき、例外なく改葬申請代行を行うケース。

もし改葬申請代行を行わない場合は数万円安くするなど明らかに業としているとみられる場合は問題になる可能性があります。

更に、領収証や請求書、見積書などに申請代行手数料など名称は何でもいいのですが通常の撤去工事などと別に金額を明示するなどしてしまうとグレーどころか黒の範疇になります。

黒ではなくせめてグレーの範囲で

このブログは行政書士法違反を推奨するものではありません。

しかし、明確に違法と見られるような態様で消費者を誘引するというのはまずもってお勧めできません。

商売と親切というのは意外と曖昧なラインですが改葬申請代行を大きな売りにしている業者は今後、注意しなければならないということになります。

一方で墓じまいという業務を撤去工事だけに限らず、魂抜きなどの行事に同席したり、改葬先まで車で案内したり、依頼者に寄り添うようなコンサルティングなど幅広くしっかりできている業者は多くのサービスの一環としての申請代行ということになり、業と指摘しにくくなる可能性があります。

あくまで業務ではなく親切の一環(無償)で申請のお手伝いをされている業者はこれを問題視することはなかなか難しいと思います。

最も安全な方法は行政書士事務所と協働していくこと

墓じまい案件が発生する一つの契機というのは墓地使用者が思い立つところが一番多いところだと思いますが

遠方への引っ越し
遺言などの終活の一環として
相続や事業承継など

こういった環境の変化の中で墓じまいを選択されるケースもあると思います。

住所が変わると多くの手続きが発生しますし、遺言書作成、遺産分割協議書の作成は行政書士の業務分野の1つです。

墓じまいの元となるきっかけを始め改葬申請も行政書士事務所に任せて分業しながらも、幅広く依頼者の要望に応えていくというのは大事なことです。

行政書士登録をされている事務所数は4万8千以上あります。(2019年1月)

これだけの数ありますので皆さんの地域にも1つ以上はあるのではないでしょうか。

後はホームページなどで「行政手続きも代行」という文言をどうしても入れるのであれば注意書きなどに「提携行政書士に委託」などの注意書きを入れておくことで問題は解決します。

改葬申請は誰がすべきか

改葬申請というのは基本的に墓地使用権者が埋蔵元と改葬先に話を付けてからご自身で行うのが最も王道です。

しかし、どうしてもご自身でできない事情もあるかと思います。

その場合はやはり依頼者から一番近い方が支援するのが実情でしょう。

結果的に行政書士以外の方がそこにいらっしゃるということが多いということです。

個人的にはワンストップという意味で、墓じまい業者が全てを請け負うというのが合理的ではあると思いますが、行政書士法という規制を理解したうえで行う必要があるということです。

実際に行政書士がこの分野に参入しているというのも耳にします。

しかし、行政書士自身が墓地、埋葬等に関する法律を理解していない現状の中でどこまで浸透していくのは疑問です。

墓じまいの流れが今後どこまで続くのか分かりませんが、法律と現状との違いを受け止めてどう対処していくのか、又は調整していくのかが難しいところです。

代理にできて代行にできないこと

ここまでで厳密に「代理」と「代行」の違いを意識して書いていませんが敢えて違いを確認しますと

代行は本人が指示したことをそのまま行うこと。

代理は本人の代わりに法律行為を行いその効果が本人に帰属することです。

ざっくり言うとこのような違いですが、小さいようで意外と大きな違いです。

例えば、改葬申請書を提出する際に、不備が見つかった場合、その場で訂正できるのは代理人、訂正できないのが代行者です。

代行者がその場で訂正を行おうとすると依頼者本人から指示をもらわないといけません。

それって便利なことでしょうか?

「お任せ」できるのであれば代理である方がいいですよね。

また墓地使用者本人以外の方が申請書を提出しようとすると委任状を求められることがあります。

この委任状には申請代理権を付与する旨の記載があるはずですので、提出代行でありながら実質的には代理をしている業者も存在するのではないかという懸念はあります。

行政書士は守秘義務が義務付けられている

行政書士法では守秘義務規定が定められています。

(秘密を守る義務)
第十二条 行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も、また同様とする。

この正当な理由というのは、例えば犯罪捜査の協力要請を受けた時に警察に提供することなどのケースで、秘密保持が厳しく課せられています。

一方で墓じまい業者の場合は行政書士でない場合は課せられていません。

だからと言って、申請書の内容などを漏えいされる業者はいないとは思いますが、仮に漏えいした場合は個人情報保護法(死者の情報でも生存している個人の特定ができる場合など)や漏えいで損害が生じれば損害賠償請求の問題になってきます。

それは行政書士であっても同じです。

このような意味で言えば提出代行を謳いながら情報管理の徹底などがどのようにされているかが明示されているサイトがまだまだ少ないのが実情です。

消費者もこのようなことを理解したうえで業者の選定を行う必要があります。