〔宗教法人の公告〕必要なケースとは 公告を怠るとどうなる?

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宗教法人の公告

公告とは何かご存知ですか?

字のごとく「げる」ことになります。

この公告は宗教法人を運営していれば、しばしば経験することではないでしょうか。

意外と混同される言葉として告があります。

広告は新聞に入っているチラシやテレビCMのことで商品やサービスを広く消費者に知らせる行為です

ではこの公告とは何か、一般的な公告の話を抜粋します

公告(こうこく)とは、政府・公共団体が、ある事項を広く一般に知らせること、または公人・私人が法令上の義務により特定の事項を広く一般に知らせることをいう。

日本法上の公告は、官報・新聞への掲載や掲示など文書又はインターネットなど電磁的方法により実施される。(wikipedia)

「広く一般に知らせること」を目的に「法令上の義務」に基づき行われるものです。

宗教法人の場合は宗教法人法で公告をすべきケースが決められています。

公告をすべきケースは一つだけでなく解散をする場合や財産処分をする場合など、様々なところで義務付けられています。

今回はどのようなケースで公告が必要なのか。何故、公告は必要なのか。

もし公告をしなければどうなるのかなど、宗教法人の公告をテーマに記事にしていきます。

なぜ公告をするのか

法律で公告を義務付けている理由としては、利害関係者に対して法人内で行われようとしている重大なことを予め伝えることで、利害関係者に話し合いの機会を持たせる狙いがあると考えられます。

株式会社も同様ですが、法人内部で何が行われ、重要な意思決定が外部に示されないとブラックボックスになってしまいます。

上場している株式会社に株式投資することをイメージしてください。

会社の成績や財産状況がはっきりしないと投資するのが怖くなります。

宗教法人は投資の対象にはなりえませんが、株式会社程の透明性は求められなくても債権者等の利害関係者が宗教法人と関わる以上はある程度の重要事項についてオープンにしなければなりません。

例えば宗教法人に債権者がいた場合に、宗教法人の大事な財産を処分するというような行為を予定する場合は予め債権者に理解をしてもらわないといけません。

納得してもらえない場合は債権者側から意見をすることもあるでしょう。

この様な機会を確保し利害関係者を保護することに公告制度の意義があると考えられます。

そして公告する対象は何も債権者に限られません。檀信徒さんも重要な公告対象です。

檀信徒さんは宗教法人に対してお布施をしていたり、その宗教法人の存在自体が心の拠り所になっている場合もあります。

例えば解散や合併などをする場合には、債権者は勿論ですが檀信徒に多大な影響を与えるため、公告が必要とされています。

公告の方法

では公告はどのようにすればよいのか。

これは各宗教法人に置かれている状況に寄りますが、宗教法人法で公告方法について定められています。

宗教法人法 (設立の手続)

第十二条 宗教法人を設立しようとする者は、左に掲げる事項を記載した規則を作成し、その規則について所轄庁の認証を受けなければならない。
十一 公告の方法

2 宗教法人の公告は、新聞紙又は当該宗教法人の機関紙に掲載し、当該宗教法人の事務所の掲示場に掲示し、その他当該宗教法人の信者その他の利害関係人に周知させるに適当な方法でするものとする。

宗教法人法の12条では設立手続きの中で公告方法を規則に盛り込むことが義務付けられています。

そして、その公告方法については2項において新聞紙や機関紙への掲載、事務所の掲示場への掲示などの例示をしながらも、「信者その他の利害関係人に周知させるに適当な方法」も認めています。

この趣旨は、もし新聞紙や機関紙での公告を法律で強制してしまうと新聞への掲載料や機関紙の印刷料金など、檀信徒の数に関わらず多大な費用が掛かってしまうため、このような方法以外にも事務所の掲示場への掲示も認めながら、周知させるのに適当な方法も容認する内容となっています。

実際、多くの宗教法人は公告方法には「事務所の掲示場に〇〇日掲示して行う」と登記されています。

機関紙を発行して周知する方法はもちろん、新聞紙の掲載もかなり稀な方法になります。

事務所の掲示場に掲示するだけであれば最も経済的かつ簡易で、宗教法人にとって負担とならないでしょう。

掲示場を確保する費用は必要ですが…。

ただし、事務所の掲示場で済ませるのは地域に根差した宗教法人であって、全国規模の寺院の場合は新聞か機関紙のほうがよいでしょう。


公告が必要なケースとは

財産処分等をするとき

宗教法人の場合は境内建物や境内地のみならず宝物が多数存在します。

このような土地建物、宝物は宗教思想を伝達するための貴重なツールであり、代々伝わる祭祀財産という意味合いもあるでしょう。

このような財産は檀信徒にとっても貴重なものであるため、公告手続きが求められるということになります。

宗教法人の役員の独断で処分ができないようにするためもブレーキになるという考え方もできましょう。(以下、根拠条文)

宗教法人法 (財産処分等の公告)
第二十三条 宗教法人(宗教団体を包括する宗教法人を除く。)は、左に掲げる行為をしようとするときは、規則で定めるところ(規則に別段の定がないときは、第十九条の規定)による外、その行為の少くとも一月前に、信者その他の利害関係人に対し、その行為の要旨を示してその旨を公告しなければならない。但し、第三号から第五号までに掲げる行為が緊急の必要に基くものであり、又は軽微のものである場合及び第五号に掲げる行為が一時の期間に係るものである場合は、この限りでない。
一 不動産又は財産目録に掲げる宝物を処分し、又は担保に供すること。
二 借入(当該会計年度内の収入で償還する一時の借入を除く。)又は保証をすること。
三 主要な境内建物の新築、改築、増築、移築、除却又は著しい模様替をすること。
四 境内地の著しい模様替をすること。
五 主要な境内建物の用途若しくは境内地の用途を変更し、又はこれらを当該宗教法人の第二条に規定する目的以外の目的のために供すること。

宗教法人を設立するとき

宗教法人の設立は宗教団体から宗教法人になるということです。

法人化についてはメリットしかありませんがどんなメリットなのかは以前記事にしています。

〔宗教法人化〕宗教団体から宗教法人にすることのメリットとは
宗教法人と宗教団体 皆さんの周りにある寺院や教会は殆どが宗教法人です。 意外と初耳な話だと思いますが、表札では「○○寺」と出ていて宗教法人かどうかは外見上分からないことがあります。 しかし実際は宗教法人です。宗教法人の場合、寺院名を名乗る際に宗教法人を付けることは義務とされてい...

メリットしかないとは言いますが、檀信徒にとっては法人化することはやはり大きな影響があるでしょう。個人事業から株式会社化(法人成り)する場合でも、利害関係者やお客さんには法人化したことは知らせるものだと思いますし、周囲への告知は行うものでしょう。

宗教法人成りにしても同じことで、団体から法人にれば宗教法人法の規制にかかることになり公告は必要ということになります。(以下、根拠条文)

宗教法人法 (設立の手続)
第十二条
3 宗教法人を設立しようとする者は、第十三条の規定による認証申請の少くとも一月前に、信者その他の利害関係人に対し、規則の案の要旨を示して宗教法人を設立しようとする旨を前項に規定する方法により公告しなければならない

被包括関係の設定・廃止の規則変更をするとき

特定の包括団体と被包括関係にあるというだけで、すぐに特定の宗教思想を連想することができメリットになる部分もあります。
特定の宗派に属しているということで、檀信徒になったという方もいらっしゃるかもしれませんし、信用力が生まれます。
逆に被包括関係を廃止するということは、単立になるということですので、宗教法人としての方向性に変化が生じやすく檀信徒にも大いに影響があることなのでしょう。
そういう意味で公告は必要と考えられます。(以下、根拠条文)
宗教法人法 (規則の変更の手続)
第二十六条
2 宗教法人は、被包括関係の設定又は廃止に係る規則の変更をしようとするときは、第二十七条の規定による認証申請の少くとも二月前に、信者その他の利害関係人に対し、当該規則の変更の案の要旨を示してその旨を公告しなければならない。

 吸収合併や新設合併をするとき

宗教法人同士が合併する場合は、基本的に吸収合併と考えてよいでしょう。

なぜなら新設合併をするということは、新たに宗教法人を一つ立ち上げることになるので、手続き的には時間と手間がかなりかかるからです。

新設するよりも一方の宗教法人を残して、もう一方を解散させるほうが分かりやすく、まだ新設に比べればですが時間と手間はかからないでしょう。

ただし、どちらの法人を残すかで揉めることがあるのでこの点は双方話し合いをすべきです。

合併をするということは一方はもう一方の財産や檀信徒を引き継ぐわけですからこれまでの運営から大きく変化し、もう一方は解散するため債権者等の利害関係者にとっては影響が生じます。

そのため公告は必要になるということです。(以下、根拠条文)

吸収合併に関する根拠条文

宗教法人法 (合併の手続)
第三十四条 宗教法人は、合併しようとするときは、規則で定めるところ(規則に別段の定がないときは、第十九条の規定)による外、信者その他の利害関係人に対し、合併契約の案の要旨を示してその旨を公告しなければならない
2 合併しようとする宗教法人は、前項の規定による公告をした日から二週間以内に、財産目録及び第六条の規定による事業を行う場合にはその事業に係る貸借対照表を作成しなければならない。
3 合併しようとする宗教法人は、前項の期間内に、その債権者に対し合併に異議があればその公告の日から二月を下らない一定の期間内にこれを申し述べるべき旨を公告し、且つ、知れている債権者には各別に催告しなければならない。
4 合併しようとする宗教法人は、債権者が前項の期間内に異議を申し述べたときは、これに弁済をし、若しくは相当の担保を供し、又はその債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社若しくは信託業務を営む金融機関に相当の財産を信託しなければならない。ただし、合併をしてもその債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。

新設合併に関する根拠条文

宗教法人法 (合併の手続)

第三十五条 合併に因つて一の宗教法人が存続し他の宗教法人が解散しようとする場合において、当該合併に伴い規則の変更を必要とするときは、その合併後存続しようとする宗教法人は、規則で定めるところにより、その変更のための手続をしなければならない。
2 合併に因つて宗教法人を設立しようとする場合においては、その合併しようとする各宗教法人が選任した者は、共同して第十二条第一項及び第二項の規定に準じ規則を作成しなければならない。
3 前項に規定する各宗教法人が選任した者は、第三十八条第一項の規定による認証申請の少くとも二月前に、信者その他の利害関係人に対し、前項の規定により作成した規則の案の要旨を示して合併に因つて宗教法人を設立しようとする旨を第十二条第二項に規定する方法により公告しなければならない

 解散をするとき

残念ながら宗教法人も事情があれば解散することもあります。

解散の墓地について記事にしたことがありますが、寺院の運営継続が困難となり任意で解散するケースがあります。

〔廃寺〕宗教法人解散とその後のお墓の守り方
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一方で裁判所から解散を命令されることも稀にあります。

〔解散命令〕宗教法人はどのような時に解散命令がでるのか
宗教法人の解散命令 宗教法人が解散させられた事件があるのを皆さんご存知でしょうか? 宗教法人法81条に定める解散命令を受けるとで裁判所から解散を命じられることがあります。 ここ最近で一番有名なのが宗教法人オウム真理教解散命令事件です。 オウム真理教の事件は多数の犠牲者を出...

今回、公告が必要なのは前者、任意で解散するケースです。

解散というのは宗教法人から法人でなくなるということです。

先ほど法人化はメリットしかないという話をしましたがその恩恵を全て受けられなくなるということになります。

このことは檀信徒や債権者にとっては大きなことです。

もちろん解散をして宗教法人から宗教団体になっても宗教活動は制限されませんが、税制上の優遇などがなくなり、墓地や納骨堂など公益事業の経営主体になれないというデメリットは発生します。

そういった意味で、公告が求められると考えられます。(以下、根拠条文)

宗教法人法 (任意解散の手続)
第四十四条 宗教法人は、前条第一項の規定による解散をしようとするときは、第二項及び第三項の規定による手続をした後、その解散について所轄庁の認証を受けなければならない。
2 宗教法人は、前条第一項の規定による解散をしようとするときは、規則で定めるところ(規則に別段の定がないときは、第十九条の規定)による外、信者その他の利害関係人に対し、解散に意見があればその公告の日から二月を下らない一定の期間内にこれを申し述べるべき旨を公告しなければならない
3 宗教法人は、信者その他の利害関係人が前項の期間内にその意見を申し述べたときは、その意見を十分に考慮して、その解散の手続を進めるかどうかについて再検討しなければならない

もしも公告をせずに財産処分をしたら

無効になる

これまでに、どのような場合に公告をすべきか、どのような公告をするのかなど説明してきましたが。

では公告をしなかった場合はどうなるのでしょうか?

これは、設立、合併、解散などの所轄庁の認証が必要なケースと、認証の必要がない財産処分のケースで話が変わってきます。

所轄庁の認証が必要なケースになると、申請に必要な書類が揃わないため、受理をしてもらえず手続きができません。

もちろん、不適切な公告を行った場合は後から認証取消や不認証になる場合があります。

では財産処分のように認証が不要な行為について公告をしなかった場合はどうなるでしょうか。

結論から言えば無効です。(以下、根拠条文)

宗教法人法(行為の無効)
第二十四条 宗教法人の境内建物若しくは境内地である不動産又は財産目録に掲げる宝物について、前条の規定に違反してした行為は、無効とする。但し、善意の相手方又は第三者に対しては、その無効をもつて対抗することができない。

無効ということは、財産処分そのものがなかったということになります。

ただ、公告がなされず、この財産処分を信じた善意の相手方や第三者についてはその無効をもって対抗ができません。

例えば、宗教法人の財産目録に記載された財産を公告をせずに相手方に売却したようなケースです。

この場合、後から公告をしなかったことを理由に売買契約を無効にするということができません。

もちろん公告していないことを買主が知っていた場合は善意ではなく悪意(故意)があるため無効になります。

さらに転売され善意の第三者に渡った場合は売買の無効を主張することはできません。

公告を怠った場合の罰則

公告をせずに財産処分等を行った場合は罰則はあるのでしょうか。
宗教法人法88条には具体的な罰則が定められています。(以下、根拠条文)
第十章 罰則
第八十八条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、宗教法人の代表役員、その代務者、仮代表役員又は清算人は、十万円以下の過料に処する。
三 第二十三条の規定に違反して同条の規定による公告をしないで同条各号に掲げる行為をしたとき。

過料について聞きなれない方もいらっしゃると思いますが、簡単に言えば行政による制裁、罰則です。

似た言葉として「科料」があります。その違いについては以下のサイトが参考になります。
https://dokugaku.info/kotu/hou-11.htm

10万円という過料が安いか高いかはそれぞれの価値観によると思われますが、一度過料を課されるとその事実は一生消えません。

行政間でこのような罰則の情報共有をどこまでしているか分かりませんが、墓地や納骨堂の経営許可を取得するような場面でマイナスイメージがついてしまい不利になる可能性が考えられます。

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