〔解説 墓地乃埋葬取締規則〕現行法との違いをざっくり解説

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墓地乃埋葬取締規則

画像はwikipedia(太政官)より 太政官印の画像抜粋

今、この国で墓地について規範となる法律は墓地、埋葬等に関する法律と言われるものです。

略称として「墓埋法(ぼまいほう)」「墓地埋葬法(ぼちまいそうほう)」などと呼ばれることもあります。

この法律は昭和23年から施行されたわけですが、ではそれより以前はどうなっていたのでしょうか?

無法状態?いやいや、そんなことはありません。ちゃんと規範になるものはありました。

墓地乃埋葬取締規則というものです。

しかし、現在のように国民の代表者である国会議員さんが集まり法律が成立する民主的な方法ではなく、命令という形で明治政府が出していたのです。

今回はこの墓地乃埋葬取締規則について記事にしていきます。

墓地、埋葬等に関する法律との関係

墓地、埋葬等に関する法律との関係でいうと以下のように旧命令を廃止するという関係になります。

つまり、「これからは墓地乃埋葬取締規則ではなく墓地、埋葬等に関する法律を守ってくださいね。」ということです。

墓地、埋葬等に関する法律 第二十四条

日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律(昭和二十二年法律第七十二号)第一条の四により法律に改められた左の命令は、これを廃止する。
墓地及埋葬取締規則(明治十七年太政官布達第二十五号)
墓地及埋葬取締規則に違背する者処分方(明治十七年太政官達第八十二号)
埋火葬の認許等に関する件(昭和二十二年厚生省令第九号)

「太政官布達」というのは、明治時代初期に最高官庁として設置された太政官によって公布された法令の形式という意味です。

余談ですが、太政官布達によって法令化したものの大半は廃止されていますが一部、効力があると解釈されるものも残っています。

その中の1つとして刑法があります。刑法の中にはまだ現在も有効なものとされている規定が残されています。

墓地、埋葬等に関する法律とどう違うのか?

墓地、埋葬等に関する法律は現在の葬送文化についていけてない部分もありますが完成度の高い法律です。

墓地乃埋葬取締規則とどのような違いがあるのか見ていきましょう。

比較表

旧法=墓地乃埋葬取締規則 現行法=墓地、埋葬等に関する法律

  旧法 現行法
経営許可権者 管轄庁 都道府県知事
埋火葬許可権者 区長又は戸長 市町村長
改葬許可権者 警察署 市町村長
24時間ルール※ あり あり
葬儀できる場所 寺堂若しくは家屋構内

又は墓地若しくは火葬場

規定なし
碑表の建設 警察署の許可 規定なし

※24時間ルール

死後24時間以内の火葬、埋葬を禁止する規定

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比較表から

以上の表は墓地乃埋葬取締規則に定められている内容をベースにして墓地、埋葬等に関する法律と比較してどのように違うかということを示すものです。

墓地、埋葬等に関する法律に定められていて墓地乃埋葬取締規則に定められていない事項が多くあります。

当時の墓地行政は警察署も関与していたことが分かります。今では市町村長か都道府県知事となっています。

驚きなのは葬儀ができる場所の規定です。

墓地乃埋葬取締規則では寺堂若しくは家屋構内又は墓地若しくは火葬場として決められています。

家屋というのは人が済む建物のことですから、今でいう葬儀場というのは想定されていないということでしょう。

この時代にはキリスト教の教会があったはずですが、教会での葬儀を間接的に禁止しているようにも解釈できます。

そこで、この規則ができた翌年、教会も家屋構内に含めるという通達が社寺局という国の機関から発出されています。

日本では大浦天主堂という教会が日本最古の教会として有名ですが、この大浦天主堂ができたのは1865年(元治2年)で明治に入る前です。

「キリスト教は葬儀ができないのか?」という批判が当時あったのでしょうか。

2度の規則改正

この墓地乃埋葬取締規則ですが、昭和23年の廃止までに、明治24年と昭和22年の2度改正が行われています。

第1次改正

明治24年の改正では「刑死者の墓標祭祀写真等に関する件」として2点のことが定められました。

まず、刑死者の墓標には法律で定める一定事項以外の事項の記入が認められないということ。

次に、刑死者の祭祀(葬儀や法事等)は警察署の許可がないと公然とできなくなったことです。

このような改正は今であれば考えられないことではあります。

第2次改正

昭和22年の改正では、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」という長い法律名ですが、ここで墓地乃埋葬取締規則は暫定的に法律と同一の効力があるものとされたというものです。

中身についての改正ではありません。

現行法との大きな違い

墓地乃埋葬取締規則の目的は文字通り墓地と埋葬を取り締まるということが目的です。

しかし、現行法である墓地、埋葬等に関する法律の目的は「宗教感情の適合」と「公衆衛生」です。

墓地、埋葬等に関する法律

第一条  この法律は、墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。

これを目的にしているのは、従来の規則や命令でできていなかった反省の現れなのかもしれません。

法律は社会の動向に合わせて変わる部分もあり、法律によって社会が変わっていくこともあります。

分野によっては法律の必要性がなくなれば廃止されるものもあります。

墓地、埋葬等に関する法律も、今後は様々な葬送の問題に対応できるように良い部分は残しながら進化していって欲しいなと思います。

またの機会に、納骨堂や葬儀関係の旧法律も取り上げていきたいと思います。