〔納骨堂〕墓地との違い、増加する背景と永続性について考える

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納骨堂のこと

今回は納骨堂のことを中心に書きたいと思います。

納骨堂って焼骨を保管して置く場所?

平たく言えばその通りです。

でも法律上の定義がありその定義に一致したものを納骨堂と呼びます。今回はその定義を踏まえて墓地とどのような違いがあるか解説します。

法律上の定義

墓地、埋葬等に関する法律には納骨堂について以下のように定義しています。

墓地、埋葬等に関する法律 2条

 この法律で「納骨堂」とは、他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう。

他人の委託

まず他人の委託とは文字通り身内以外の方から預かってほしいという依頼があることです。寺院の場合で考えると檀信徒からの依頼になります。では他人ではなく身内の焼骨を預かることはどうでしょうか?

これは問題ありません。ご自身の両親の焼骨を預かってほしいと頼まれた場合は預かって差し支えないです。

焼骨を収蔵する

収蔵するものは焼骨に限定されます。

焼骨であるためには火葬場で火葬することが前提になります。実際には骨壺などに納められたものを収蔵(安置)することになります。

行政の許可を得ている

墓地、埋葬等に関する法律では都道府県知事の許可が必要とされていますが実際には市や町に許可権限が委譲されています。納骨堂の場合はほとんどが市や町の許可になるでしょう。

行政の許可がなければ納骨堂の運営をすることはできません。

室内であること

納骨堂は室内施設になっていることが一般的です。

最近は納骨堂なのか墓地なのか微妙なものがありますが室内で雨が降っても影響が生じないようにしなければなりません。

因みに墓地の場合はカロートという空間が墓石の下にあり雨の影響はないような仕組みになっています。

定義のまとめ

  1. 他人の委託を受け
  2. 焼骨を収蔵するために
  3. 都道府県知事の許可を受けている
  4. 施設(室内)

以上の4条件がそろって初めて納骨堂になります。①②④の条件がそろっている場合は行政の許可を取らないといけません。

墓地との比較

墓地と納骨堂には違いがあります。どのような違いがあるか以下に分かりやすく解説します。

墓地、埋葬等に関する法律では墓地についても定義しています。

墓地、埋葬等に関する法律 2条

 この法律で「墳墓」とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう。
 この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事(市又は特別区にあつては、市長又は区長。以下同じ。)の許可を受けた区域をいう。

墓地と納骨堂の大きな違いの1つとして墓地は焼骨だけでなく死体も埋葬できるという点です。現在、死体の埋葬というのは限りなくゼロになりましたが法律上は可能です。(もちろん条例で制限されている自治体はあります)

簡単な比較表

埋蔵・収蔵  遺体の状態 行政の許可 設置環境 墓石
墓地  埋蔵  焼骨・死体  必要 屋外施設 必要
納骨堂  収蔵  焼骨のみ  必要 室内施設 不要

外見上の違いとしては室外か室内かというところです。いずれも行政の許可が必要になります。

納骨堂のタイプ

納骨堂には様々なタイプがありますが大きく分けるとロッカー式、棚式、仏壇式、墓石式、機械式の5つになります。特に機械式は焼骨が入った箱を自動的に指定した場所に機械が運ばれるため参拝は大変便利になります。今後はこの機械式が普及していくと思われます。

納骨堂のデメリット

墓石はいらない、室内で参拝できる、費用が安いというメリットがある半面で気を付けるべきところがあります。

それは建物にあるが故に老朽化の問題です。墓地に関してはそのような心配はありません。納骨堂になるといずれは立替えや大規模修繕の時期がきます。

そのようなことをあらかじめ考慮した建物になっているか、墓地と同じく納骨堂にも永続性を求める自治体があるため購入時には注意が必要です。


納骨堂が増える背景

日本における死亡者数

お墓の問題と密接に関わることとして、死亡者がどれだけ存在しているのかということは常識として知っておいてもいいかもしれません。

その死亡者数が過去と比較してどれだけ増えてきたのか、そしてどれだけ増えるのかという予想まで考えることは重要なことです。

日本が高齢化社会になるということは多くの死亡者と向き合わないといけないということです。

そして若い方やこれから生まれる方は今後、よほど出産数が増えない限り多くの方を見送る立場になると考えられます。

このような数字と真摯に向き合いお墓のことを考える材料となればということで記事にしてみました。

※この記事では平成 27 年(2015) 人口動態統計の年間推計に基づいて作成しています

死亡者数推移

まず日本における死亡者数は1,302,000名となっています。

この数字は1966年の死亡者数670,342名と比較すると約2倍になっています。また対象年度から10年遡れば2005年の1,083,796名と比較すると218,204名の増加になっています。

このことからこの半世紀の中で現状が一番高く、この10年で比較すると急激な増加を示しています。

更には戦後で考えるとやはり現状が最も多いという結果になっています。

お墓の数は足りるのか?

以上の通り、ざっくりとですが日本における死亡者数についてまとめました。

ではお墓の数が実際のところ不足しているのかどうかという話になるとまた別の話です。地方の墓地では人口が少なくなるため死亡者数も少なくなる傾向があります。一方で都会はその逆です。つまり墓地の供給は地方は供給過多になりやすく、都会は供給不足になりやすいという傾向があります。

納骨堂が救世主となるか

もし墓地不足が懸念される地域において解決を図ろうとするのであれば低価格帯で多くの遺骨を収蔵できる納骨堂や合葬墓が解決方法の1つになりえます。

使用する側も、お墓にこだわりがあるという方でなく周囲の理解があれば納骨堂や合葬墓は有力な選択肢になりえます。

将来的に見れば都会になればなるほど特に納骨堂が増えていくでしょう。

墓地の場合は嫌悪施設として周囲に反対される傾向が強いですが、納骨堂の場合は建物の中が見えない分、反対は限定的です。

宗教法人が運営する納骨堂も寺院の境内建物の一角で、納骨堂経営許可が取得できれば設置することができますので官ではなく民が積極的に参入して欲しいところです。

墓地の場合は工事費用が相当掛かるのである程度の規模が求められますが、納骨堂の場合は機械式のようなハイテクなものでなければ小規模からでも可能です。

官が行う公営納骨堂などは身寄りがない方や、公営墓地の無縁墓地の改葬先としたり民間とは役割を棲み分けするというのも墓地行政上考えるべきことではないでしょうか。

多死社会と言われている中、納骨難民が増えることを見越して官と民が取り組む必要があります。


納骨堂の永続性

納骨堂の普及から思うこと

「もはや暫定利用ではない」納骨堂というものが墓地の代わりになるのは必至です。

従来、墓地が見つかるまでの一時的な収蔵場所という考え方だったのが、今では半永久的に遺骨を委託するような施設になってきています。

遺骨の収蔵委託を受ける以上は墓地と同じく永続性を求められる可能性が高いと考えられますが、このことについては思うところがあります。

一時的な収蔵になるかは納骨堂運営者と使用者(この法律で言う他人)との間に、個別の契約があって期間を定めた場合になるでしょう。

そのような特約がない場合は納骨堂運営者は収蔵の委託を続けなければなりません。勝手に遺骨を処分することは原則許されないということです。

納骨堂はそのような運営が永続的にできるのでしょうか?考えるところがあります。

永続性を考えると一長一短?

永続性とは何か?という話があるのですが簡単に言えば、世紀(100年)単位で公益事業として成立するのかどうかです。

例えば墓地や納骨堂を購入したが10年で運営ができなくなると、購入した側が不利益を被ることになります。

そのため、何世代もの遺骨を埋蔵、収蔵できるようにすることが重要で、宗教上の教義として先祖祭祀を重んじるところは尚更、永続性を追求しなければなりません。

その上で納骨堂の永続性を考えると一長一短な部分があります。

建物の修繕費

一部、屋外墓石型の納骨堂も増えてきているようではありますが、ビル型納骨堂を始めとする境内施設と納骨施設が併設された納骨堂が増えてきています。

このような、施設は建築物ということで数十年に一度は大規模なメンテナンスをしなければならないはずです。

参考になる資料として国土交通省 国土技術政策総合研究所が案として公表している公共建築の部位・設備の特性等を踏まえた 中長期修繕計画策定及び運用のためのマニュアル(PDF)があります。

納骨堂を公共建築物として捉えると、中長期的な修繕計画を策定するべきです。

メンテナンスは怠れば使用上の弊害が出てくることがあり、永続性を担保することができないことも考えられます。

特にビル型納骨堂のように規模の大きく、境内施設と併設するような場合は計画的な資金運用がされているか、経営許可を出す際に行政はよく見なければならないですし、購入される方もその辺りの配慮がなされているか目を光らせる必要があるでしょう。

販売壇数は増やせる

資金計画上の話がありましたが、当初の販売予定壇数を増枠することは墓地に比べれば容易なはずです。

墓地の場合は完売後に追加販売を検討する際は、墓地変更許可を受けなければ広げることができず、余剰の土地がない場合は誰かが墓じまいをしたり、無縁墳墓改葬をしない限りは、新たに墓地使用料などの収入を得ることができません。

納骨堂の場合は建物という空間ですので、ロッカー式や棚式のものであれば、配置方法によっては余剰空間を創出することが可能です。

後から販売壇数を増やせるということは、使用料収入が長期的に取得できるということになりますので、修繕のための資金計画が立てやすい側面があります。(但し、販売数を増やす時点で行政の許可を改めて取得する必要があります。)

更に、予め契約時に数十年の使用期限を設けて期限後は別の合祀墓に改葬するという、特約入りの契約にすれば、割合にもよりますがある程度余裕のある運営ができるかもしれません。

納骨堂はビル型だけではない

今はビル型やICカードによる入管管理ができる納骨堂に目が移りがちですが、このような納骨堂はまだまだ特殊で、多くは寺院境内建物の一角(本堂など)で収蔵するタイプが多いでしょう。

その場合は寺院の檀信徒になる必要がありますが、敷居の低いところも中にはあります。

納骨堂を運営する宗教法人は建物の規模に応じた資金計画を策定するか、それが難しい場合は建築計画の時点で永続性を考慮した規模に留めるようにすべきでしょう。

数十年後に納骨堂が破たんするという事態にならないよう、行政も適正な指導を行うべきです。