〔遺言〕だけじゃない!終活で大事な公正証書の話

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NHKクローズアップ現代から

終活の落とし穴として、お墓の問題がNHKで取り上げられていました。

論点はいくつかありましたが、その中で名前や住所は分かるのに納骨する場所が分からないという問題についていろいろ考えるところがありました。

代々の家墓がある、終活で生前建墓したお墓や納骨堂があるのに、そのお墓に納骨されず自治体が運営する納骨堂に一時保管、3年後、合葬墓に納骨。

合葬墓に納骨された場合は、自治体のお墓ですので無宗教となり供養はされません。

中には特定の宗教、宗派の信仰があった方もいたでしょう。終活をしても供養されず、合葬墓に納骨される様子を見て心を痛めた次第です。

このような状況は墓地、埋葬等に関する法律の目的とする国民の宗教感情に配慮するという部分に抵触するとも言えるのではないでしょうか?

今回はこのような問題にどう対処すればいいのか、終活する側だけでなく国、自治体、終活事業者がすべきことを考えます。

↓の動画は公式ページの投稿を埋め込んだものです。終活事業者が倒産し、前金が返ってこなくなった事例も紹介されています。

2017年5月10日(水)放送。自分が死んだ後のために、生前に墓や葬儀を準備しておく”終活”がブームになる中、「墓をあらかじめ用意しても、入れない」という“墓トラブル”が相次いでいる。墓を販売する会社が倒産し、金を支払ったのに墓が建たないケース。生前に墓を準備しておいても、孤立した高齢者が多く、墓の存在を本人以外が知ら...

長い目で何をすべきか

このように準備していた墓地に入れないという問題は、終活する側の問題だけではないはずです。国や自治体はどのような対応が取れるのでしょうか。

国がすべきこと

墓地、埋葬等に関する法律は墓地に関する行政法ですが、この法律は昭和23年に施行されています。

この法律は今日まで改正を繰り返して、現在の法律に至っています。

しかし、この法律は当時の家族形態や寺院と檀信徒の関係が深かったという時代背景の中で作られたものです。

一言で言えば現代社会の状況と合わなくなってきていると言っていいでしょう。もちろん、法律としての完成度は高いのですが。

この法律や施行規則で、生前建墓した場合や身寄りがない方を対象に墓地経営者か墓地使用者が行政に届出る仕組みを作るということを提案したいです。

もちろん、届出する側にとって負担のないものにしないといけませんし、生前建墓するという行為が宗教的な考えに基づいている場合は、その宗教感情に配慮しなければなりません。

難しい部分もあるかもしれませんが、その仕組みがないために購入したお墓に入れなくなるのも問題です。

自治体がすべきこと

生前に墓地や納骨堂を購入している場合は、予め遺骨を改葬していることがあります。

元々あった地元のお墓を都会に移る際に、新たに立て直ししていることがあると、過去の改葬申請から使用している墓地が特定できる場合があります。

改葬申請の際には、通常、埋蔵証明書と受入証明書を添付します。どこからどの墓地に遺骨が移ったかというのは行政が把握できるのです。

ただ電子化している自治体は少ないと思われます。

そのため、容易に検索したり自治体間で共有することは難しいのですが過去の改葬申請から得られる情報で解決することはあるはずです。

後は墓地経営者に対して墓地購入者へのヒアリングをしっかりすることを指導することは可能でしょう。単純に墓地さえ売れればいいというのでは困ります。

マイナンバー制度をここで活かせるのではないかと考えます。

法律の壁があるでしょうが、マイナンバーカードを終活の分野に活かすことは技術的に可能です。

後は制度として確立できるかというところです。

墓地経営者がすべきこと

墓地経営者がすべきことは墓地を購入した方の家族状況など、購入した背景を知る努力をすることです。

次に墓地使用許可証を発行し、大切に保管しておくことを促すことです。

墓地使用許可証は一部の墓地では発行されていないようですが、死後の遺品整理をする中で出てくれば、希望通りの墓地に入れることになります。

希望通りに墓地に入れないということは、その墓地が無縁墳墓になるということになります。無縁墳墓の増加は墓地経営上、必ずしも良いことではありません。

個々人がすべきこと

小谷みどり氏がクローズアップ現代で対応方法を解説していました。

第一生命経済研究所、気鋭のエコノミスト・研究員をご紹介するページです。エコノミスト・研究員が執筆したレポート類を閲覧することができます。

「どのお墓に入るか周りに話しておく」という明快な答えでしたし、これが正解だと思います。

終活は周りを巻き込むことが大事ということです。

そして遺言で納骨場所を指定しておく方法がありますので、確実に希望したところに納骨してもらう方法について後述します。


これから増えることが予想される

漂流遺骨について先日話題にしていますが、今回は漂流もしていない遺骨です。

〔漂流遺骨〕孤独死による遺骨はどこへ 
遺骨を引き取ってくれる家族はいますか? 今、あなたが亡くなったら遺骨を供養してもらえる方はいますか? 不謹慎な質問ですが、他人ごとではないようです。 孤独死で亡くなった後に火葬、収骨までは自治体でしてもらるようですが、遺骨の埋蔵は親族に引き取りを求めることになります。 その遺...

自治体の納骨堂に収蔵されるというのは、遺骨の受け取り手がないということでこのようなケースは最終的に行政が責任を負うことになります。

このような遺骨は漂流遺骨同様、世帯数が減少していくことは目に見えているので増えることは間違いないでしょう。実際にここ数年比較しても増えているという話もありました。

しかし、このような問題は終活する側だけの努力では限界があります。

やはり国、自治体、墓地経営者を含めたセーフティネット作りをしていくことも重要ではないかと考えます。

遺言書と納骨

遺言書は通常、財産の分配や残されたご遺族の方が争わないように予め作成しておくものですが、財産以外の事項である「納骨場所(方法)」についても指定することできます。

終活は周囲と話しておくという具体的手段として検討してみてはいかがでしょうか?

遺言書で納骨場所の指定はできる

遺言書でよくイメージするのは財産をいかに分配するかということですが、財産とは直接関係がない納骨場所に関しても要望を記しておくこともできます。

  • 「生前懇意にしていたお寺さんの境内墓地に納骨してほしい」
  • 「散骨して海に撒いてほしい」(散骨は違法になる場合があり注意が必要です)
  • 「手ごろな価格の納骨堂に永代供養してほしい」  etc…

事情は異なれど遺骨をどのように扱ってほしいか主張する権利はあります。

ではこの納骨場所の指定についてご遺族の方は従わなければならないのでしょうか?

指定通りにする法的義務はない

遺言事項と付言事項

財産をいかにして分配するかということを遺言事項と言います。この遺言事項には法律上限定されており法的拘束力があります。遺言にも自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言などの種類がありますが、いずれも厳格な形式に則って作成されます。そのためこの遺言事項に原則従わなければなりません。

一方で遺言事項以外を付言事項といいます。付言事項には特に決まったルールはありませんが例えば

・代々墓の承継者は長男のAにする

・次男Bと長男Aは○○の件はちゃんと話し合って決めること

・母Cの介護のことはお願いします など

遺言事項を補足したり遺志を確実にするためのものです。

これらは個人の遺志ではあるものの拘束されることはありません。付言事項と異なることをすることも可能です。(周囲から批判されることはあるかもしれませんが)

納骨場所(方法)の指定は付言事項になります

あくまで希望ということ

遺言者が指定した墓地での納骨を希望しても遺族の判断で別の場所にすることも可能です。その場合であっても代々のお墓や菩提寺がある場合は親族や住職さんとしっかり話し合わなければトラブルになるケースもあり得ます。

例えば指定された納骨場所が遠方にあり墓参に通うことができない場合などは仕方がないですよね。また散骨のように法律上グレーな方法での埋葬は尊重できないこともあります。

法的拘束力を持たせる方法もある

通常の遺言であれば付言となり法的拘束力はありませんが

納骨場所(方法)を実行することを負担の内容とする負担付贈与(民法第1002条)という方法をとれば受遺者に対して法的拘束力を持たせることができます。そこで「遺言執行者」を指定すればより確実に負担の履行が期待できます。

負担付贈与とは?

贈与のひとつで、受贈者(贈与を受ける者)に一定の債務(借金など)を負担させることを条件にして行う財産の贈与をいいます。例)3億円の借金を肩代わりしてもらう代わりに5億円の土地を贈与する。

つまり指定した納骨をすれば300万円贈与するというような負担付贈与を生前に契約書を交わしておくとよいと思われます。

公正証書

ここまでで遺言の可能性についてお伝えしてきました。しかし、遺言だけで万全ですか?

と言われれば答えはNoです。そして遺言を自筆で置いておくのではなく公正証書という方法で残しておくことがベターでしょう。

この公正証書ですが終活に関するものは5つあると考えています。5つの公正証書を理解することでそれぞれに適した終活の選択肢が生まれるでしょう。

「終活の方法はこれしかない」ということはなく、終活を検討する人の数だけ終活があるということです。

終活とは、公正証書とは

終活について改めて定義を確認させていただきます。

「終活」とは人生の終わりに向けて、前向きに準備することで、今をよりよく生きる活動です。

よりよい最期を迎えるために「前向きに」というのは重要です。

終活に適齢期はありません。思い立った時です。でも、できれば元気な時に、判断力がしっかりしているときがいいでしょう。

自己決定権という権利が最近、叫ばれています。自分のことは自分で決める。

人生の最期をどう迎えるか、自分が遺したお金のこと、もちろんお墓のことも。

実現できるかはともかく全て自分で決められる時代になりました。

自己決定権をより実現性の高いものにするためにするために、公正証書という形で作成してもらうのがよいでしょう。

公正証書については日本公証人連合会のHPで詳しく説明されています。

公正証書は、公証人がその権限において作成する公文書のことです。公正な第三者である公証人が、その権限に基づいて作成した文書ですから、当事者の意思に基づいて作成されたものであるという強い推定が働き、これを争う相手方の方でそれが虚偽であるとの反証をしない限りこの推定は破れません

公証制度、公証人に関する疑問にお答えいたします。日本公証人連合会。

難しい説明がなされていますが、例えば遺言の話で言えば自筆したものと公正証書では後者の方が指定した通りの財産の分配が期待できます。それだけ公正証書は法的な力が強いということです。

では遺言含めて終活に関連する5つの公正証書についてそれぞれ簡単に紹介します。



5つの公正証書

遺言

遺言とは生涯築き上げてきた財産を、死後どのように扱うのかを生前に決めておく手続きです。

誰にどれだけ残すのか、又は寄付することもできます。

付言事項として納骨場所を指定することもできます。

任意後見

人は誰しも判断能力が衰えることがあります。

生きている間に判断能力が鈍ると財産管理や法律行為にいろんな問題が出てくる可能性があります。そのような場合にあらかじめ、自分がなってほしい後見人を決めておくことができるというのが任意後見です。

任意後見契約がない場合で後見人を付けようとすると法定後見になり裁判所が指定した弁護士や司法書士が収入することになります。

財産管理委任

財産管理について委任する契約になります。

後見人になれば当然、財産の管理も仕事のうちに入るわけですがまだ、後見人を付ける段階でなくても財産管理は任せておきたいという場合に使われます。

任意後見とセットで公正証書を作るケースが多く、任意後見の効力が発動する前から財産管理ができるということで、財産を保全する実効性が高いと言えます。

尊厳死宣言

終末期に過度な延命治療を避けて自然な死を迎えたい場合の公正証書です。

ターミナルケアとも言われるものです。

尊厳死については協会もあるようで詳しく説明されています。

「私の最期は自分で決める」。元気なときに書き置くリビングウイルは、長い人生の終末期をどう迎えるか、自身に問いかける作業でもあります。まずは家族と話し合い、そして私たちにご相談ください。

これは契約ではなく一当事者が、周囲に宣言するというものになりますが、公正証書にした以上は周囲もその意思を尊重することになるでしょう。

死後事務委任

読んで字のごとくですが、死後にすべき火葬、埋蔵などお墓に関することはもちろんですが、葬儀のこと、遺品整理、自宅退去の手続きや敷金の精算など生前に予め取り決めておくことです。

通常、家族がいればこの契約は必要がない場合が多いのですが身寄りがない方が、知り合いにお願いしておくことも増えているようです。

墓友契約のように同じお墓に知り合い同士が入る場合も、相互に死後事務委任契約をしておくことで実現可能性が高まります。

死後についても自己決定権を及ぼすことができるという意味で遺言と同じく必要な方も多いでしょう。

組み合わせる

任意後見に関しては、公正証書で作成しておかないと効力が発生しないのですが、それ以外は公正証書にしなければならないという決まりはなく、自筆でもできます。

例えば、身寄りがない方で判断能力がしっかりしているが全く財産がない方は手書き・ワープロ打ちの死後事務委任だけにする。

大家族で莫大な財産があり、将来の判断能力に不安がある場合は全て公正証書で作っておくというようなオーダーメイドな終活が求められていることは言うまでもありません。

それぞれ置かれている状況ですべきことが全く変わってきますので公正証書についても、どのような価値基準を持っているのかで組み合わせが求められます。

宗教が関与する意義

終活と宗教というのは親和性があります。

特に尊厳死宣言を実行するとなると緩和ケア・ターミナルケアになりますが、このような取り組みを浄土真宗本願寺派がビハーラ病院として形にしています。

病院というのは治療するというのが主眼になりがちですが、宗教だからこそできる病気との向き合い方でしょう。

ただ、この病院に入院するなら尊厳死宣言書を公正証書で作成しておき、強く自身の意思を表明しておくのがいいかもしれません。

尊厳死を実現できる環境が増え、選択肢の一つになれいいなと思います。

次に死後事務。

特に身寄りがなく納骨する人がいない場合、墓地を持つ寺院が納骨、供養まで死後事務として請け負うことは今後求められるでしょう。因みに死後事務には報酬を設定することができます。

可能な寺院は最期の看取り、葬儀、火葬、納骨そしてその後の供養まで、死後事務として含まれることを含めすべて請け負ってもいいでしょう。檀信徒に限るということでいいかもしれません。

このように、親族同士であれば自筆でよいでしょうが、他人同士が死後の事、財産のことを約束するには第三者の法律家が入って作成する公正証書を勧めますし、よりよい終活を考えるうえで公正証書の活用はぜひ検討してほしいところです。