〔海外からの改葬〕海外戦死者の遺骨を納骨するために

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海外戦死者の焼骨

第2次世界大戦で犠牲になった日本人は310万人に上ると言われています。

310万人という数字は、当時の日本では全人口の3~4%になり尋常ではない数です。軍人と民間人を合わせた数字ですが、その中で海外で戦死した人、国内で犠牲になった人と分かれます。

この310万人が全て土葬なり納骨がなされているのであればよいのですが、現実にはこれだけの人数ですから難しいのではないかと思われます。

特に海外で戦死した軍人の場合、戦地で死亡後、火葬され遺族のもとに返されたケースがあったり、火葬されたことも不明なまま現在に至ることがあります。

日本人戦死者の遺骨をめぐって国家間での話し合いになっていることもあり、まだまだ戦争の爪痕が残っています。

今後も海外で火葬された遺骨が日本に戻ってくる可能性がありその取扱いと墓地、埋葬等に関する法律との関係で現実に則さない状況が生まれることがあります。

その一つとして海外戦死者の遺骨では火葬許可証が存在しないということがあります。

墓地、埋葬等に関する法律14条との齟齬

まず、まだ一度も納骨されていない場合、墓地の管理者には火葬許可証を提出しなければ納骨させてもらえません。

しかし、墓地、埋葬等に関する法律は日本にいる人が日本に亡くなることを前提としていて、海外で亡くなったことは想定外のような法律になります。

墓地、埋葬等に関する法律

第十四条  墓地の管理者は、第八条の規定による埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を受理した後でなければ、埋葬又は焼骨の埋蔵をさせてはならない。
 納骨堂の管理者は、第八条の規定による火葬許可証又は改葬許可証を受理した後でなければ、焼骨を収蔵してはならない。
 火葬場の管理者は、第八条の規定による火葬許可証又は改葬許可証を受理した後でなければ、火葬を行つてはならない。

第八条  市町村長が、第五条の規定により、埋葬、改葬又は火葬の許可を与えるときは、埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を交付しなければならない。

海外での戦死者は死亡時に火葬や土葬されていると考えられますが、それは日本の法律に則ったものではなく海外の法律であったり、法律以外の軍事規則など各国の事情により埋火葬されたものになります。

その為、火葬許可証などは発行されることはありません。

火葬許可証がない場合、戦死者の遺骨が日本に戻ってきたときに納骨ができるのかが問題になります。

改葬許可申請になる

結論から言うと納骨はできます。

親族と同じお墓に入れてあげるのが人の道です。

ただ、海外での戦死者の取り扱いは少し特例になります。

そこで必要なものは戦死公報です。

戦死公報でなくても戦死、戦病死したことを証明できる書類であれば市町村で柔軟に対応してもらえます。

戦死公報については以下のページが参考になります

具体的な手続きは改葬申請になります。

一旦は、戦死した国で納骨されたという扱いにして海外から日本の墓地への改葬という考え方です。

その際、この戦死公報を埋蔵(収蔵)証明書の代わりに市町村で対応することになります。

その為、戦死者の遺族は遺骨が本国に戻ってきたときに納骨を希望される際は、墓地の受入証明と戦死公報の2つを準備するということになります。

もちろん、納骨はせず当面、手元供養をするという選択肢もあります。

兵庫県と国の照会と回答から

このような運用となっている根拠としては兵庫県から国に対し海外から持ち帰った火葬許可も改葬許可もない遺骨を日本の墓地に納骨をする際に疑義が生じ照会をかけた回答でも示されています。

○改葬許可の取扱について

(昭和三〇年一〇月二四日)

(兵防第五一九四号)

(厚生省環境衛生部長あて兵庫県衛生部長照会)

右のことについて神戸市東灘区長より左の通り照会がありましたのでこれが取扱いについて何分の御回報願いたく照会いたします。

左記申請人は昭和二十一年七月一日満洲よりの引揚者にして現在神戸市に居住しており、在満当時に死亡せる親族の焼骨を持取り(死体埋火葬許可証、改葬許可証なく)現在まで自宅に保管し、今度東京都台東区谷中墓地に埋葬するに当り谷中墓地管理者より改葬の許可証の提出を求められ当区役所に証明方申請せるものですが、現に埋葬もせず納骨もしていないのであり埋葬又は納骨の事実を証する者がないのであり、したがつて改葬許可の根拠がなく而るに焼骨をそのまゝ自宅に保管しているものを東京都の墓地へ埋葬することは改葬とみなされないものと思料されるのでありますが、たまたま申請者の近親者(福岡市居住)において、これと同じケースで許可証の交付を受けた事例がありますので、これが取扱いを如何にすべきか。

死亡者の本籍氏名、東京都文京区湯島新花町六六 水倉孝雄

死亡場所 年月日 奉天市稲義町四 昭和九年九月三日

改葬の場所    東京都台東区谷中墓地

申請者住所氏名  神戸市東灘区本山町岡本 水倉孝三郎(死亡者との続柄父)

類似ケースにおいて既に福岡市の方で改葬許可が出ているという先例があったということですが、長年、手元供養していることから改葬という定義には当てはまらないという考え方もできます。

これに対する回答は以下の通りです。

(昭和三○年一一月一五日 衛環第八四号)
(兵庫県衛生部長あて厚生省環境衛生課長回答)
昭和三十年十月二十四日兵防第五、一九四号をもつて、環境衛生部長あて照会のあつた標記の件について、左記のとおり回答する。
引揚者等であつて、本法施行地外で火葬した焼骨を持ち帰つた者が、その焼骨を埋蔵又は収蔵するための許可を申請した場合に、火葬を証する書類のないときは、特殊の事情による特例として改葬の手続により取り扱われるよう考慮されたい。その場合には、焼骨の現に存する地の市町村長は、本法施行地外で火葬したことの事実を証する書面を発行し、これを以て墓地、埋葬等に関する法律施行規則第二条の墓地若しくは納骨堂の管理者の証明に代え改葬の許可を与えられたい

海外で火葬をした証明がない場合は特例として取り扱うことになり、火葬をした証明書を発行することになります。

その証明書を以って、改葬の許可を与えるということで海外で火葬した焼骨も日本の墓地で納骨ができるようになっています。

この場合でも戦死公報というのは貴重な資料になるかと思われますので、いずれ同様の状況で納骨を控えている方は、準備しておくとよいでしょう。