〔従たる事務所〕墓地の設置には布教拠点が必要という話

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主たる事務所と従たる事務所

宗教法人が墓地の経営許可を取得する条件として様々なものがあり解説しているのですが

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布教拠点が必要というものがあります。

一般的な寺院境内墓地であれば境内建物の傍に墓地があるケースが多く布教拠点と墓地(納骨堂)は一体となっているところが多いです。

この布教拠点という表現は宗教法人法で言うと主たるor従たる事務所と呼ばれるものです。

この主たる事務所と従たる事務所というのは寺院で言えば本山と別院のようなものです。

会社で言えば本店と支店ですね。

宗教法人を設立する際は主たる事務所がベースになって後から信者さんが増えると別の場所に従たる事務所を設けるという流れになります。

そこで、ある市に主たる事務所(本山)がある宗教法人が同じ県の別の市に墓地を設置する場合、従たる事務所を設置する必要があります。

今回はこういった事務所設置の理由を解説していきます。

「墓地経営・管理の指針等について」から

厚生労働省が出している「墓地経営・管理の指針等について」には墓地を設置する上で留意すべき点が多数指摘されています。

これは、ある意味で墓地の許認可マニュアルと言ってもいいぐらいボリュームがありこれまで多くの宗教法人が犯してきた失敗と反省を反映した集大成と言ってもいいぐらいの内容になっています。

名義貸しでトラブルになったケースの反省から

そして事務所を求める主な理由として「名義貸しの防止」があります。

2 墓地経営の許可に関する指針

(2)墓地経営主体

○ いわゆる「名義貸し」が行われていないこと。

特に宗教法人の墓地経営を許可する場合には、宗教法人の名を借りて実質的に経営の実権を営利企業が握るいわゆる「名義貸し」の防止に留意することが必要である。
この「名義貸し」については、その実態はなかなか究明できない場合もあり、何をもって具体的に「名義貸し」というのかは難しいが、問題となる事例としては例えば次のような場合が考えられる。まず寺院(宗教法人)に対して石材店等の営利企業(仮にA社とする。)が墓地経営の話を持ちかけ、この寺院はA社より資金その他について全面的なバックアップを得て墓地経営の許可を受ける。ところが当の寺院は墓地販売権を始めとした墓地経営については実質的に関与しない取り決めがA社との間で交わされている。そしてA社は墓地使用権とともに墓石を販売して多大な収益を得るが、これは一部を除いて寺院の収入とはならない。しかしながら、使用者とのトラブルについては、最終的な責任者は寺院にあるとしてA社は責任を回避する。そして、運営の安定性を欠いたままで、後には資金力のない寺院と墓地だけが残る、といったような事例である。
こうした事例で最も被害が及ぶのは墓地利用者である。このような事態を防ぐことが行政の役割であり、このため、宗教法人担当部局と連絡をとりながら、実際に当該宗教法人が墓地経営を行うことができるかを十分に精査する必要がある。また、宗教法人の側も、自らが墓地経営の主体であることを十分に認識して事業に着手することが重要である。

石材店主導で寺院の名義で設置し、トラブルや運営が行き詰まったら責任回避をし、最終的に墓地ユーザーにしわ寄せがあった問題が伺えます。

宗教法人として許可を取得しているという認識を持つ必要があるということで、これは至極当たり前の話ではあります。

宗教活動実態を重視

また、こうした事態が起こるのは主に宗派を問わない事業型墓地のケースであると考えられることから、いわゆる事業型墓地を認める場合にはより厳格な審査を要する、とするのも1つの方法である(例えば、他の県に主たる事務所を有する宗教法人が自県で事業型墓地の経営を行う場合には特に、自県の圏域内に事務所と信者を有して宗教活動を行っている実態があることや、前述の組織・責任体制の明確化の観点からも、当該墓地において責任者が常駐していることを条件とするなど)。(指針一部抜粋)

このような名義貸しというのは事業型墓地に起こりやすく、審査を厳格にする必要性から宗教法人法上の事務所を求めるというものです。

事務所があるということはその周辺に信者がいることや布教活動を行っていることが前提となります。また事務所設置には都道府県知事の審査が入ります。

純粋に宗教活動の一環として墓地の運営をするのが前提ですのでこのような対応は当然と言えば当然です。

自治体ごとに墓地経営許可の審査基準がありますが、その中に事務所の存否が影響するところが大半です。

そのため、特定の区域で事業型墓地を設置する場合はまず従たる事務所の設置(別院など)する必要があります。

逆を言えば従たる事務所がないとうことは信者がないということであり、墓地を設置する必要もないという考え方です。

墓地乱立の歯止めになっている

墓地というのは「宗教法人が土地を持ちさえすればすぐにできる。」という時代ではなくなり、墓地と宗教感情の関係を重視し、墓地の乱立を防止する方向に向かっていると言えます。

一定数の信者がいてこその墓地ということで、信者が全くいない状態から墓地を作って信者を増やすというのは順序としては間違いです。

今後も宗教法人が手掛ける事業型墓地には厳しい目が向けられることは間違いがないでしょう。もちろん事務所の有無だけでなく、布教実体や名義貸しの疑いがないかという部分も行政側は注意しなければなりません。