〔典礼施行権〕墓地管理者は他宗派による典礼を拒否できる?

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他宗派による典礼拒否は可能か?

「宗旨宗派を問わない」という墓地や納骨堂は今や至る所にあるわけですが特定宗派による典礼しか認めないというところが多いのではないでしょうか。

そもそも「宗旨宗派を問わない」という謳い文句自体が色々誤解を生じされるところがあるのですが、墓地を利用するまでの宗旨宗派は問わないという意味なのか、前者に加えて墓地利用を開始してからも宗旨宗派を問わないのかというところで全く意味が違ってきます。

宗旨宗派不問についての類型は6つに分けられるという話は以前にも記事にしたことがあります。

〔宗旨宗派不問って?〕墓地使用管理規則との関係
「宗旨宗派を問わない」は誤解がある? 新聞やネットでもいいのですが、霊園や納骨堂の広告を見てみると「宗旨宗派問いません」や「宗派不問」という文言が踊っています。 宗旨宗派とは、仏教でいえば真言宗、浄土宗、法家宗、黄檗宗などに分類されるものです。キリスト教で言えばカトリックとプロテスタ...

実際に前者は寺院が運営する霊園、後者は公営墓地が多いのではないかと思われます。

いくら寺院が運営する霊園であっても他宗派の典礼で法要を行うことはご法度な部分があります。

自宗派以外の典礼を認めないこと又は自宗派での典礼を求めることができることを「典礼施行権」と呼ばれています。

今回はこの典礼施行権について考えていきます。

正当な理由がなければ納骨拒否はできない

墓地、埋葬等に関する法律13条では正当な理由なく納骨を拒むことを禁止しています。

墓地、埋葬等に関する法律

第十三条 墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない。

つまり、正当な理由があれば納骨を拒めることになります。

では正当な理由とは何かという問題ですが、他の典礼で納骨を利用者が求めた場合拒めるでしょうか?

これは拒めるということになります。

実は過去に他の宗教団体の構成員であることを理由として納骨を拒むという事例が頻発し、トラブルや訴訟が提起されていたことがあり、これに対し国の考え方を示す必要がありました。

墓地、埋葬等に関する法律第13条の解釈について

国から出ている通知を以下に抜粋します。

抜粋量はかなりありますのでご注意ください。

厚生省が内閣法制局に照会をかけて別紙として引用する形での通知です。
(昭和三五年三月八日)
(衛環発第八号)
(各都道府県・各指定都市衛生主管部(局)長あて厚生省公衆衛生局環境衛生部長通知)
最近、宗教団体の経営する墓地について、その墓地の管理者が、埋葬又は埋蔵の請求に対し、請求者が他の宗教団体の信者であることを理由に、これを拒むという事例が各地に生じているが、この問題が国民の宗教的感情に密接な関連を有するものであるとともに、公衆衛生の見地から好ましからざる事態の生ずることも予想されることにかんがみ、これについての墓地、埋葬等に関する法律第十三条の解釈をこの際明確ならしめるため、先般、別紙(1)により内閣法制局に対し照会を発したところ、このたび別紙(2)のとおり回答があつた。従つて、今後はこの回答の趣旨に沿つて解釈運用することとしたので、貴都道府県(指定都市)においても遺憾のないよう処理されたい。
なお、これに伴い、墓地、埋葬等に関する法律第十三条について(昭和二十四年八月二十二日衛環第八八号東京都衛生局長あて厚生省環境衛生課長回答)は廃止する。
〔別紙(1)〕※内閣法制局への意見照会を行った文面です。
(昭和三四年一二月二四日 衛発第一二八○号)
(内閣法制局第一部長あて厚生省公衆衛生局長照会)
標記について次のとおり疑義があるので意見を問う。
墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号)第十三条においては、墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたとき、正当の理由がなければ、これを拒んではならない旨規定されているが、最近にいたり、宗教団体の経営する墓地の管理者が、埋葬又は埋蔵の請求に対し、請求者が他の宗教団体の信者であることを理由に、これを拒むという事例が各地に生じている。この場合当該管理者の行つた埋葬又は埋蔵の請求に対する拒否は、正当の理由に基くものと解してさしつかえないか。また、埋葬又は埋蔵の請求者が、当該墓地の区域内に、先祖伝来の墳墓を有しているときと、これを有しないときとでは、その解釈上相違があるか。
〔別紙(2)〕
(昭和三五年二月一五日 法制局一発第一号)
(厚生省公衆衛生局長あて内閣法制局第一部長回答)
昨年十二月二十四日付け衛発第一、二八○号をもつて照会にかかる標記の件に関し、左記のとおり回答する。
墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号。以下単に「法」という。)第十三条は、「墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければ拒んではならない。」旨を規定するとともに、本条の規定に違反した者は、法第二十一条第一号の規定により刑に処するものとされている。墓地、納骨堂又は火葬場の管理者に対してこのような制限が課されているのは、管理者がこのような求めをみだりに拒否することが許されるとすれば、埋葬(法第二条第一項)、埋蔵、収蔵又は火葬(法第二条第二項)の施行が困難におちいる結果、死体の処理について遺族その他の関係者の死者に対する感情を著しくそこなうとともに、公衆衛生上の支障をきたし、ひいては公共の福祉に反する事態を招くおそれのあることにかんがみ(法第一条参照)、このような事態の発生を未然に防止しようとする趣旨に基づくものであろう。このような立法趣旨に照らせば、お示しのように、宗教団体がその経営者である場合に、その経営する墓地に、他の宗教団体の信者が、埋葬又は埋蔵を求めたときに、依頼者が他の宗教団体の信者であることのみを理由としてこの求めを拒むことは、「正当の理由」によるものとはとうてい認められないであろう。
ただ、ここで注意しなければならないのは、ここにいう埋葬又は埋蔵とは、その語義に徴しても明らかなように(法第二条第一項参照)、死体又は焼骨を土中に埋める行為-この行為が社会の常識上要求される程度の丁重さをもつてなされることは、当然であるが-を指す趣旨であつて、埋葬又は埋蔵の施行に際し行われることの多い宗派的典礼をも、ここにいう埋葬又は埋蔵の観念に含まれるものと解すべきではない。すなわち、法第十三条はあくまでも、埋葬又は埋蔵行為自体について依頼者の求めを一般に拒んではならない旨を規定したにとどまり、埋葬又は埋蔵の施行に関する典礼の方式についてまでも、依頼者の一方的な要求に応ずべき旨を定めたものと解すべきではない。いいかえれば、このような典礼の方式は、本条の直接関知しないところであつて、もつばら当該土地について、権原を有する者としての資格における墓地の経営者と依頼者との間の同意によつて決定すべきことがらである。したがつて、宗教団体が墓地を経営する場合に、当該宗教団体がその経営者である墓地の管理者が、埋葬又は埋蔵の方式について当該宗派の典礼によるべき旨を定めることはもちろん許されようから、他の宗教団体の信者たる依頼者が、自己の属する宗派の典礼によるべきことを固執しても、こういう場合の墓地の管理者は、典礼方式に関する限り、依頼者の要求に応ずる義務はないといわなければならない。そして、両者が典礼方式に関する自己の主張を譲らない場合には、結局依頼者としては、いつたん行つた埋葬又は埋蔵の求めを撤回することを余儀なくされようが、このような事態は、さきに述べたように法第十三条とは別段のかかわりがないとみるべきである。

この通知を簡単にまとめると…

かなり文量が多い通知でしたが簡単にまとめると

他の宗教団体の信者というだけで納骨を拒むことはできないということ

管理する寺院の宗派に則って納骨するのであれば例え異教徒でも拒むことはできないということになります

内閣法制局の考え方は至極真っ当ではありますが、国としてこの「正当な理由」を明確にしたのはある意味で画期的なことではないかと思います。

このように、運営している墓地内で自派の典礼での納骨を求めることを「典礼施行権」と呼ばれています。

墓地管理者の一種の権利と言えますし、言い換えれば運営している墓地では自宗派の典礼で行う義務でもあるということになります。

このような権利は長い歴史の中で確立され、国による通知で明確になったものと言えます。

他にも正当な理由があるとすれば

正当な理由という表現に法律的で曖昧なところがありますが、ここまでで述べた典礼施行権以外にも考えられるものはあります。

例えば、既に墓地の空きがない場合やカロートが焼骨で一杯になっている。

土葬をしたいが墳墓自体が物理的に不可能な構造となっている場合。

墓地利用や納骨を許可することで明らかに他の使用者に害を及ぼしたり管理に支障が生じるような場合。

微妙なところですが墓地使用管理規則などで宗教的な感情から動物の焼骨の埋蔵を禁止している場合に、埋蔵を要望する(又はこっそり埋蔵する)ことが明かな場合等々…

予め想定するのが難しいところですが宗教感情に照らして容認できないことは墓地管理者に裁量があるのかなという印象です。

どうしても、異教の典礼で納骨をしたいのであれば公営墓地を利用してくださいという話になるでしょう。

まとめ

典礼施行権とは「他宗派での典礼で納骨を含めた墓地利用を拒むこと」ができる権利のことで墓地、埋葬等に関する法律13条における正当な理由に該当する。

一方で他宗派であることのみで納骨を拒むことは認められない。

このことは国からの通知で考え方が明確になっています。

宗教感情の希薄化している昨今、このような問題というのは起きにくい側面はあると思います。

逆に、希薄化している中で典礼施行権を振り回されると使用者側も困惑したり反発することは考えられます。

宗教的な教義の捉え方を巡って分派することで起こりえるかもしれません。

とは言え、宗旨宗派不問という言葉の裏にはこのようなことも念頭に置いておくことも必要ではないでしょうか。

墓地の分譲時にこのような点をしっかり説明しておくことも長くお墓を持っていただくうえで重要なことだと思います。

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