〔改正個人情報保護法〕墓地運営への影響、要配慮個人情報とは?

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個人情報保護法が初めての大幅改正

改正個人情報保護法が今月30日から施行されることになりました。

改正の目玉の一つは、個人情報を誰のものか分からない「匿名加工情報」にすれば自由に売買できるようになることだ。商品の購入履歴などを大量に集めた「ビッグデータ」をビジネスで活用しやすくするのが狙い(yahoo記事抜粋)

従来も個人の特定ができない個人情報であれば、売買をすることができたのですが、今回の改正で明文化されたことにより、ビッグデータとしての積極的な活用が可能になったということになります。

一方で、曖昧な部分もあります。

どこまで加工すれば安全か一律の基準はなく「一般の企業は利用に二の足を踏むのではないか」と指摘する声もある。(記事抜粋)

住所でいえば、「○○県◇◇市▽▽町」と表記するのか「○○県◇◇市」までの表記するのか、氏名でいえば名字のみか名前のみかという問題があります。

どこまで加工すれば個人が特定されないという保証はありません。

しかし、このような基準は一律に決められるものではないということも事実です。

匿名加工情報を売買し、ビッグデータを活用したビジネスチャンスに広げるという側面と、売買によう個人特定で漏えいとされて損害賠償といった法的リスクをどれだけ受け入れるかという側面もあります。

両方を天秤にかけ、事業者が自己責任で選択していく必要がありそうです。

今回の改正については「データのじかん」の記事が非常にわかりやすくまとめられています。

本記事は、事実とは異なる記載についてのご指摘を受け、弊社にて事実を確認した上で、掲載内容の一部を下記のとおり訂正いたしました。(変更日:2017/05/30:記事中打消線) 2017年5月30日、12年ぶりに改正された個 …

今後、個人情報保護法の改正で墓地運営に影響はあるのか、宗教法人としてどのような対応が求められるのかを考えていきます。

改正による墓地使用者情報の取り扱いは?

気を付けるべきところは従来と変わりません

今回の改正で墓地経営者に具体的な影響はどのようなものがあるかですが、従来と特に変わらないといってもいいでしょう。

何故なら依然として、宗教活動の用に供する目的で個人情報を取り扱う場合は第4章(個人情報取扱事業者の義務等)の適用を受けないからです。

改正による影響を受けなかったというのが正確なところです。

個人情報保護法

第76条 個人情報取扱事業者等のうち次の各号に掲げる者については、その個人情報等を取り扱う目的の全部又は一部がそれぞれ当該各号に規定する目的であるときは、第4章の規定は、適用しない。

一 放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関(報道を業として行う個人を含 む。) 報道の用に供する目的

二 著述を業として行う者 著述の用に供する目的

三 大学その他の学術研究を目的とする機関若しくは団体又はそれらに属する者

宗教団体 宗教活動(これに付随する活動を含む。)の用に供する目的

五 政治団体 政治活動(これに付随する活動を含む。)の用に供する目的

宗教法人が行う墓地運営についてはほぼ例外なく、宗教活動の一環で行っているはずです。

墓地使用者から受け取った使用者に関する個人情報はもとより、死者となる埋蔵される方の情報も個人情報ではないため、従来と変わらないということになります。

秘密漏示は刑法で罰せられる

しかし、個人情報保護法の取扱事業者の義務対象外であっても、刑法に秘密漏示についての罰則があります。

刑法

第134条(秘密漏示)

1 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

2 宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同様とする。

当然、この事項は宗教活動のために墓地運営をしている宗教法人(団体)に対しても適用されます。漏えいしてしまった場合は刑法により罰則を受けることになるでしょう。
そのため、個人情報保護法対象外だから「何も気にしなくていい」というのは大違いです。

墓地使用者の情報は総じて「要配慮個人情報」になり得る

要配慮個人情報とは?

改正個人情報保護法において新たに「要配慮個人情報」についての定義が設けられました。

個人情報保護法

第2条(定義)

3 この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、 病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、 偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして 政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。

今回の改正で初めて要配慮個人情報というものが定義されました。

注目すべきは信条に関わるものも要配慮個人情報ということです。

墓地と宗教は密接な関係があるため、どの墓地を使用しているかということが信条に関する情報に当たる可能性があります。

例えば特定宗派の墓地を使用しているということが、その宗派の信仰をしているという意味を持つという考え方です。

これが、仮に宗教法人以外の公益法人や地方公共団体が運営する墓地であれば信条に関わる情報にはならないでしょう。

しかし、公益法人の場合は個人情報保護法で、地方公共団体の場合は行政機関個人情報保護法という法律で取扱上の義務が定められています。


本人の同意なく取得すると?

この要配慮個人情報について、一番気を付けないといけないのは、宗教法人よりも宗教法人から使用者名簿等の提供を受ける側です。

(適正な取得) 第17条

個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得して はならない。

2 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない

要配慮個人情報は本人の同意なく取得できないことになっています。

(利用停止等) 第30条

本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人デー タが第16条の規定に違反して取り扱われているとき又は第17条の規定に違反して取得されたものであるときは、当該保有個人データの利用の停止又は消去を請求することができる。

17条に反して取得した場合はデータの利用停止、削除を求めることができます。

第42条(勧告及び命令)

3 個人情報保護委員会は、前二項の規定にかかわらず、個人情報取扱事業者が第1 6条、第17条、(中略)個人の重大な権利利益を害する事実があるため緊急に措置をとる必要があると認めるときは、当該個人情報取扱事業者等に対し、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき ことを命ずることができる

17条違反によって緊急措置をとる必要がある場合は個人情報保護委員会から是正措置命令を受けることになります。そして、この命令に従わないと…

第7章 罰則

第84条 第42条第2項又は第3項の規定による命令に違反した者は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

以上の罰則を受けることがあります。

そのため墓地運営上、知りえた個人情報というのは要配慮個人情報となり得えて、宗教法人が提供すると前段の刑法によって罰せられますし、リストを買い取った方も是正措置命令を受けたり、それに違反すると罰則を受けます。

このような状況にならないために、墓地使用者に関する名簿はオプトイン方式で予め特定業者への提供を想定しておくことです。

オプトアウトについて、「あらかじめ本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置く」方法が明確化されると共に、オプトアウトに関する事項を個人情報保護委員会にあらかじめ届けなければならないことになります。また、要配慮個人情報を含む個人データについてはオプトア...

規則や約款に定めたり、念書なども予め取っておけば問題は起こらないでしょう。

墓石業者に関しては直接、使用者から建立の依頼を受けるため問題にはならないと思われます。

情報漏えいの代償

情報が漏えいした場合、通常は大なり小なり損害が発生します。

場合によっては悪用されて詐欺に遭ってしまうということもあるでしょう。その場合には刑法の罰則とは関係なく、民事上の損害賠償請求も受けることがあります。

その為、個人情報取扱事業者の義務が適用除外であっても損害が出た場合は結局、責任を負わなければならないわけです。

情報漏えいでの賠償額は以下のブログが参考になります(宗教団体の例はありません)

りそな銀行の派遣社員が、芸能人の個人情報を漏洩した事件が話題だ。 最近では、ベネッセコーポレーションの個人情報漏洩問題も記憶に新しい。 もしあなたが、個人情報を漏洩・流出してしまった時に受ける損害賠償や処罰はどのくらいにのぼるのか? 過去の判例事例をまとめてみた。 宇治市住民基本台帳データ大量漏洩事件 1999年、宇治...

特に使用者台帳、檀信徒名簿、墓籍簿など名称を問わず個人情報の管理は適正かつ厳重にしなければなりません。

ビッグデータの活用

最後にビッグデータを活用する意義を考えないといけません。

個人情報保護法改正の目的はビッグデータを活用し様々な分野で役立てる、そのために情報流通を規制緩和することでもあります。

ビッグデータでどのようなことができるのか身近なものでいえば

・業務フローの最適化によるコストの削減
・商品の組み合わせ変更による売り上げの最大化
・未来の売り上げ予測
・事業の問題や課題箇所の特定
・新たな仮説や可能性の発見

ビッグデータ活用は話題ですが、具体的な事例はまだ多くありません。 そこで、ネット上に存在する売上向上やコスト削減につながるビッグデータの活用事例を集めました。

ビッグデータの活用で中小企業も売上アップに成功した事例があるようです。

では墓地、墓石業界では応用できそうでしょうか?

この業界で起こっている様々な課題をビッグデータで解決できれば、改正の意味があるのではないかと思います。