〔土葬〕イスラム教徒用の墓地問題を考える

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カトリック墓地にイスラム教徒を埋葬

九州でイスラム教徒用の墓地が不足しているようです。

九州のイスラム教徒が「死後の行き場がない」と悲鳴を上げている。イスラム教の葬儀は火葬を禁止し、土葬を用いることから墓地開設の理解が得られにくく、九州にはイスラム専用の墓地はゼロ。協力姿勢を示す自治体もあるが、実現のめどは立っていない。イスラム教徒たちは「今後も日本に住む仲間は増えると思う。本当に切実な問題」と訴えている。

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不足している主な理由は

①イスラム教は土葬が原則。火葬は禁止。

②土葬に対する偏見、抵抗感により行政が土葬墓地の許可を出さない

この2点になろうかと考えられます。

イスラム教の埋葬方法は以下のような説明があります。

教義上の理由で日本のように火葬を認めていないようです。

イスラム教では神だけが人間を罰するときに火を使うとされている。さらに死者の復活が信じられており、死によっていったん離れた魂が再び戻るための肉体が必要との理由から火葬を禁じている。深さ1・5メートル前後の墓穴に、ひつぎから出された遺体は布で包まれたままあおむけに置かれ、顔は必ず聖地メッカの方角へ向かなければならない。

もしかすると中にはイスラム教そのものに対する偏見があるのかもしれません。

九州でこのような偏見が続いた結果、イスラム教徒の埋葬ができず困っているのを見かねたカトリック別府教会の神父さんがイスラム教徒の土葬を受け入れるという事態に至っています。

同じ土葬文化があると言っても、キリスト教とイスラム教。

崇拝の対象が全く違います。

日本においてはまだまだマイノリティと考えられているイスラム教徒。

そのような概念を変えていかないといけない時期に来ているのかもしれません。

今回はイスラム教徒用の墓地をテーマに記事にしていきます。

行政は墓地、埋葬等に関する法律違反を冒(犯)している

少し挑戦的な見出しにしていますが突き詰めると最終的には行政の責任になります。

まず墓地、埋葬等に関する法律の一番最初の条文で以下のように謳われています。

墓地、埋葬等に関する法律

第一条 この法律は、墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。

このような法律がある根本の部分を考えてみましょう。

人間は例外なく死にます。

これは仏教徒、イスラム教徒、キリスト教徒関係なく人間である以上、必ず起こる生理現象です。

そして死亡したら適切に対処するというのが生きている方がより衛生的に生活するために必要なことです。

この記事から埋葬が支障なく行われているかを考えると、支障が出ていると言わざるを得ないということです。

そして墓地の許可権を有するのは行政です。

第十条 墓地、納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。

その為単純に行政の責任と言えます。

イスラム教徒の努力ではどうしようもない部分があるのではないでしょうか。

しかし行政の中でも「国(厚労省)」は含まれません。

何故なら法律上、許可権を都道府県知事(市町、町長)に権限移譲していますので国(省)が許可のために動くことはできません。

ただ、各自治体に指針や通達を出すことは可能です。

今回は日本という狭い国土にイスラム教徒のための墓地をいかにして確保するかという課題を国が率先して自治体に指針を示すべきものだと考えられます。

このように墓地、埋葬等に関する法律の観点で行政の責任は重大と言えます。

具体的なハードル

土葬に対する規制

具体的になぜ土葬墓地を設置できないかということになりますと引用記事にあるように各自治体の条例が障壁になっています。

土葬全般の話については以下の記事を参考にしてみてください。

〔土葬は禁止?〕土葬に関わる様々な制約
土葬とは 土葬は法律上、「埋葬」と呼ばれ複数ある葬送の中の一つです。 これは墓地、埋葬等に関する法律でも定義されており未だ有効な葬送手段です。 この土葬を巡っては法律や条例で禁止されているという誤解があります。 このような誤解が生まれた背景や土葬が今どのような扱いになって...

条例においては多くの自治体は土葬そのものを禁止していません。

土葬を禁止する区域を定めてはいます。

火葬を前提とした墓地であっても民家から一定の距離の範囲にあるとそれだけで要件を満たさなかったり住民説明会の開催が必須など自治体によって要件を満たす難しさはそれぞれですがさらに土葬となると、通常の墓地よりも困難なことは想像がつきます。

行政も周辺住民も快く土葬墓地として許可が出せて提供できる場所は限られているのかもしれません。

経営主体の問題

さらに墓地の運営主体の問題があります。

厚生労働省が出している「墓地経営・管理の指針等について」で墓地の経営主体を限定しています。

墓地経営主体は、市町村等の地方公共団体が原則であり、これによりがたい事情があっても宗教法人又は公益法人等に限られること。

この規定はどの自治体の条例を見ても同様のことが書かれています。

つまり、イスラム教徒用の墓地を設置しようとするとイスラム教の宗教法人でないと設置の協議すらもできないとうことになります。

まだ宗教法人化していない宗教団体の場合は墓地の設置ができないということになります。

また、墓地を設置しようとする自治体に主たる事務所や従たる事務所といった布教拠点があるかどうかも審査対象に入ることになります。

イスラム教徒が利用できる土葬墓地を設置する方法論

では具体的にどうすれば土葬墓地を確保できるのか考えていきましょう。

私からは2つの方法を提起します。

しかしいずれも周囲からの反発を避けるため、人里離れた山中でかつ相当な広さの土地を確保しなければなりません。

土葬用公営墓地

イスラム教団体から多額の寄付と墓地となる不動産の寄付を受けられることが前提となりますが、行政が運営主体となり土葬墓地を準備する方法です。

この場合は利用者をイスラム教徒に限ることはできません。

キリスト教徒も仏教徒も宗教を問わず埋葬させなければなりません。

行政が運営するということで住民も安心するケースがあるかと思われますが、行政側の負担は増えるということになります。

しかし、土葬墓地ということで墓地利用料や管理料を高めに設定すれば人件費を捻出できるのではないでしょうか。

多くのイスラム教徒が訪れることになれば結果として、町おこしという意味合いでも経済効果が出そうな気がします。

公益法人が経営主体で運営

もし行政が動けないということがあれば、次は民間で準備するしかありません。

例えば、九州地方で活動をしている公益法人に寄付をして、公益法人名義で土葬墓地の申請を行うことも考えられます。

この場合は公益法人なら何でもよいわけではなく、法人の目的に墓地運営が含まれているところになります。

ただでさえ、土葬墓地が特殊ですので墓地運営のノウハウがあるところでなければかなり厳しいのではないかと考えられます。

この場合でも墓地使用料や管理料は高めに設定することになるでしょう。

なぜ宗教法人としての運営を提案しないか

宗教法人として墓地の経営許可を取得するのが最も近道と思われるかもいるでしょう。

しかし宗教法人が墓地経営許可を取得する場合、「墓地利用者は檀信徒用に限る」というような条例があると同じイスラム教徒でも所属しているモスクの関係で使用できない方が出てきます。

また宗教法人同士の力関係、人間関係でイスラム教徒同士でも特定の国籍、派には使用させないといったことも起こりえます。

仏教徒の場合は全国に無数の寺院と墓地があり、ある程度墓地供給が安定していますがイスラム教のように墓地の絶対数が少ないケースになると些細な宗教感情が壁となって揉めるケースがあります。

公営墓地や公益法人の墓地の良いところはそのような宗教上の関係性を抜きにして運営ができるということです。

九州地方ではまだイスラム教徒が利用できる墓地がないということで、供給が安定していけば宗教法人として運営するところが出てきても問題はないと考えます。

用地確保ができるかが重要

いずれにしても土葬墓地にするための用地を確保できるかがまず最初のハードルです。

民家から極力離れており、周辺への影響が少ない場所というのはかなり限定されると考えられます。

土葬墓地として日本でも昔から利用されていたのは山です。

ただ、墓地として利用するためのインフラ整備も多少必要になることを考えると求める側がどれだけ予算があるか、また周辺住民の感情なども考慮すると一筋縄ではいかないところもありそうです。

今後、日本においてもイスラム教徒は増加していきますしこれまで表向けイスラム教徒であることを言わず日本に滞在されている方もいるかもしれません。

潜在的なイスラム教徒も日本に住みたい、永住したい、そして死んでも日本で土葬して欲しいと言えて初めてイスラム教徒にとって住みやすい世の中と言えるでしょう。

そのためには墓地行政の努力と社会の受け入れなど様々なことを乗り越えていかなければなりません。

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