海老名市で墓地経営の不許可処分、3年近い協議の末に

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墓地経営許可申請が不許可処分に

画像は抜粋記事より「墓地計画予定地」

今回は神奈川県の地域情報誌「タウンニュース」さんから海老名市で墓地経営許可申請が不許可処分を下されたというニュースを取りあげます。

海老名市は5月1日付で、市内宗教法人が計画していた霊園建設の申請に対して、不許可を決定した。  霊園は約9700平方メートルの土地に、2248基の墓地区画と管...

海老名市と言えば、海老名サービスエリアしか思い浮かびませんが…(海老名市民の皆様スイマセン。)

位置的には神奈川県の真ん中にあり、東京や横浜からのアクセスも良好。人口も年々増加傾向(約13万人)のようです。

このような人口増加傾向のある市で霊園の新設計画というのは住民の反発が予想されるところです。

人口増加があるということは墓地需要が高まると同時に、墓地を嫌悪する住民も同時に増えるということで、当然計画の立てにくさはあるはずです。

不許可処分までにどのような経緯があったのかを確認していきます。

住民からの反対と協議

まず、宗教法人と霊園計画の近隣住民との協議があったのですが昨年2月の記事では協議から約1年経過とされているので、2015年より以前から計画はあったものと見られます。

計画看板が立てられた予定地では、道路を挟んだ向かい側に「墓地計画反対」ののぼり旗が掲げられている

大谷南に建設が予定されている霊園を巡り、施工元の宗教法人と近隣住民との間での協議が、開始から約1年経った今も平行線をたどっている。条例に則り開発を進める法人側と、住環境...

このことから、近隣住民からは強い反対を受けていることが分かります。

一方で、宗教法人側のコメントとしては住民と継続協議したいという意向でした。

宗教法人の代表役員は、取材に対し「建設に関して強引に進めるつもりは、全くありません。墓地が近くに欲しいという声もありますので、今後もしっかり協議していきたい」

計画当初は反対が強くても協議を続ける中で双方理解しあうことができ、計画は変更して折り合いがつくというケースも考えられるのですが最終的にうまくいかなかったようです。

それにしても、「墓地が近くに欲しいという声がある」ということで墓地を設置するのは動機として弱い気がします。墓地需要があるのはいくつかある要素の一つでしかなく、本来的には布教活動の一環として墓地が必要という考え方と、檀信徒が求めているなどより強い動機が求められるはずです。

条例改正

画像は海老名市議会facebookページより「海老名市議会」

そこで、ほぼ決定的な対応が海老名市議会でなされました。

以下は海老名市 保健福祉部 健康づくり課のページです。改正後の条例はこのページで確認できます。

そして、このことも「タウンニュース」さんで取り上げられていました。

大谷南に建設予定の霊園を巡り、施工元の宗教法人と近隣住民との間で協議が続いていた問題を受け、海老名市は墓地経営許可に関する条例の規則を一部改正した。同条例施行により、現...

何故、市議会が動いたかというと…

今年2月には市議会に中止を求める陳情書を提出し、賛成多数で了承を得ていた。(タウンニュース記事抜粋)

墓地計画中止の陳情を行っていたことから条例改正により事実上、不許可となる対応となったものと見られます。

これまでは、墓地と納骨堂の設置は学校・病院・診療所・児童福祉施設・介護老人保健施設・老人福祉施設及び障害者支援施設から110mの距離が必要と定められていた。

改正後はこれらに「現に居住している人家から50m距離を離す」ことが追加された。近隣の綾瀬市や厚木市でも同様の距離が条例で明記されている。

市担当課は「周辺環境と調和を図るために一定の距離が必要と判断し、条例改正に至った」と話している。

この50mという基準ですが実は決して厳しいものではありません。実際に人家から100mという2倍の基準を設けている都市もあります。

近隣の綾瀬市や厚木市でも同様の距離規制が置かれていることからこの条例変更は適切なものと言えるでしょう。


霊園規模のこと

霊園の規模は「約9700平方メートルの土地に、2248基の墓地区画と管理棟、駐車場整備を予定(記事より)」で1ha近い広さとなっています。

霊園開発を行う際に、特に市街化調整区域(平たく言えば建築が禁止されている場所)では1haを敢えて超えないように計画することが多いようです。これは1haを超えると第2種特定工作物として霊園であっても建物の建築と同様に開発許可が必要だからです。

国土交通省のHPより

2. 開発行為の定義

 開発行為とは、主として、(1) 建築物の建築、(2)第1種特定工作物(コンクリートプラント等)の建設、(3)第2種特定工作物(ゴルフコース、1ha以上の墓園等)の建設を目的とし た「土地の区画形質の変更」をいいます。

開発許可を取得するとなると時間と手間がかなりかかります。

最終的には海老名市の開発審査会にかけられて許可されるかの判断になりますが、住民の反発があれば、審査会にかからないか、かけても不許可になるのは目に見えています。

「手続きさえとれば全てよし」という考え方ではよくないということです。

不許可理由

この不許可について、結果としては良かったのか悪かったのかはまだ判断ができません。

しかし、不許可事由の説明としては隙がないというのが第一印象です。

市は【1】住宅からの50m規制に抵触【2】計画用地を全て所有していない【3】都市計画法、農地法の許可の見込みが確認できない【4】資金計画や利用者保護の面などで許可に相当しない、との事由をもとに不許可とした。(タウンニュース記事抜粋)

住民との協議不調を不許可の理由として挙げなかったのは個人的に適切だと考えます。

以下の記事でも書いていますが、住民同意に重点を置くと市長の裁量権逸脱を指摘される恐れがあるからです。

〔墓地の設置〕住民同意は必要なのか?住民説明会後にすべきこととは
住民同意の要否 墓地に限らず納骨堂や火葬場が近隣に計画されていると分かったら皆さんどのように感じますか? お墓好きな私としては個人的に歓迎します。 近くに墓地ができればそこを利用する可能性が高いからです。 墓じまいが進んでいる昨今、墓参しにくい場所というのは敬遠されます。...

条例や施行規則のルールに明確な不一致があるというところを指摘するのが王道です。

ただ、一つだけ心配な部分があります。【1】【2】【3】の不許可事由については事実であれば反論のしようがないのですが【4】の資金計画と利用者保護の部分。

求められる資金計画の基準については海老名市に限らず、一般的に条例や規則で定められていません。提出書類の一つとして位置づけられているのみです。

1ha近い霊園に対してどのような資金計画が望ましいのかはモデルがない限り比較が難しいでしょう。

今後、考えられる宗教法人側の対応

この不許可処分を受けて、宗教法人側がとれる選択肢は3つあります。

1つ目は海老名市に対して審査請求を行う

2つ目は裁判所に不許可処分の取消訴訟を提起する

3つ目は霊園計画の撤回です

3年間という長期間の協議の末、不許可ということでなかなか諦めがつかないところとは思われますが、条例が改正された以上、基準に明確な不適合が一つだけでなく複数ある以上は、墓地経営許可の取得は相当難しいと予想しています。