離檀料交渉
これまでに度々、墓じまいから派生する離檀に関する記事を書いてきました。
寺院境内墓地を墓じまいする際にはどうしても避けて通りないのが離檀です。
この離檀は寺院から見ると檀家さんが一軒減るということになり、収入源が一つなくなることは大きな痛手です。
こういったことから離檀料の問題がここ最近、テレビでも取り上げられています。
改めて言いますと離檀料というものは法律上何ら定められていないもので、根拠はありません。
そのため寺院から離檀料請求をされても支払う必要はありません。
ただし、檀家さんから自主的にこれまでの御礼として布施を包むことは大事なことです。
長年お世話になったわけですから。
布施は強制ではありませんが、人々のこのような善意が今日の寺院を支えていると言っても過言ではないのです。
このような離檀料を請求された場合に誰かに頼りたいという気持ちは痛いほど分かります。
代わりに話を進めてくれる専門家がいればお任せできるので気持ちが楽です。
でも、本当にそれでいいのでしょうか。
今回はこの離檀に関わる交渉を第三者に依頼することの是非について考えます。
墓じまいの専門家とは
行政書士
墓じまいの行政手続や書類作成の代行は行政書士の仕事です。
お墓を霊園や寺院に返還するという行為は、権利義務に関わる重要な契約です。
そして、遺骨の移転をするわけですから、改葬申請が必要になりこれは行政手続きになります。
このような手続きは慣れない方にとっては時間と手間を要します。
書類上の手続きで言えばやはり行政書士なのですが、離壇(料)交渉になると話が変わります。
弁護士
という簡単な話で終われば誰も苦労しないのですが、住職さんにはこれまでのお付き合いがあります。
一部の住職さんは簡単には対応できません。
お金の問題だけではありません。
代々、数世紀に亘って檀家になっている家になると、末代の考えだけで簡単に離檀を認めることに抵抗があることは当然です。
数世紀といかなくても数十年単位で檀家になっている場合でも同様でしょう。
これまでに檀家さんと喜怒哀楽を共有した住職さんであれば当然です。
そこで、墓じまいによる離壇交渉を最初から最後まで請け負ってもらえる専門家がいればありがたいですよね。
時間をお金で買うという感覚が身についていれば利用する方もいらっしゃるかもしれません。
その職業は弁護士です。
根拠は弁護士法72条になります。
弁護士法 (非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
離壇交渉には離檀料の話し合いや、お墓の返還についてなど、檀信徒契約の解除を伴う交渉になります。
檀信徒契約の解除は法律事件で、この交渉の代理をするのであればやはり弁護士が専門でしょう。
逆に言えば報酬を得ずにボランティアでするのであれば、弁護士でなくてもできるということになります。
しかし、無償で行っても住職さんとの話し合いが決裂する場合や守秘義務がない無資格者であれば情報が流出するリスクもあり、話が拗れることもあります。
そういうことを考えれば、料金を支払っても弁護士さんに依頼するのが無難かもしれません。
お近くの弁護士は連合会のHPで調べてみましょう。
専門家に頼む前に…
まず自分で…
離壇(料)交渉をする前に考えたいのが、まず交渉に至らない可能性の方が高いということです。
10軒の離檀があれば1軒あるかないかと言ってもいいでしょう。
大半の寺院関係者は適切な対応をしているので、まずは檀家さんから第三者を介さずに直接、申し入れることが大事です。
何故なら離檀の話し合いというものが信仰心が関係することもあり、第三者が仲介するのに馴染まないことがあるからです。
ただ明らかに紛争になることが目に見えているとか、過去の住職の行動から離檀料交渉に入るのが確実視される場合は、当初から弁護士に依頼することも選択肢です。
料金は10万円から?
弁護士費用についてですが3件ほど弁護士事務所に問い合わせました。
離檀料交渉は業務として確立されていないため、全ての事務所で「最低でも示談交渉に準じる10万円は頂きたい。」という回答がありました。
10万円もかかるなら一度自分で話してみようかな…となるかもしれません。
ここでは業者名は出しませんが、交渉はしないが離檀の申し入れまでは無料で行うという業者も存在します。
しかし、多くの寺院で指定石材店制度があるため指定外の石材店の墓石撤去の施工は受け入れていない、許可しないところもあります。
そういった墓じまい代行業者に依頼する際には、どのようなメリットデメリットがあるかを検討しましょう。
最後に
結論として、まず自分で申し入れをし、もし話が拗れた場合は弁護士に依頼するということです。
ただし、もめるのは10軒に1軒あるかないかです。
それだけ稀なことになります。
弁護士に依頼するにしても1事案に最低10万円は頂きたいというところが多いでしょうからそのような費用面で考えると、多少話し合いが長引いてもご自身でされる方が結果的に安くつくかもしれません。
住職さんも宗教者です。
離檀の結論までに抱えた檀家さんの様々な苦悩を受け入れてくれるはずです。
第三者に依頼するのは最後の手段として、事情を率直に話してみましょう。
墓じまいで注意したいことは以下の記事を参考にしてみてください。