〔墓地管理料の使途〕値上げにどう対応するか、墓地管理料以外の収入とは

Pocket

墓地管理料を考える

長年、墓地を使用していると管理料が値上げを経験されることがあるのではないかと思います。

例えば一カ月当たり1000円値上げされれば年間で1万2千円となり痛い出費になりますね。

ここまで上がらないにしても誰もが望まない管理料の値上げ。

一体どうして起こるのか、そして値上げに反対することはできるのか。

墓地、埋葬等に関する法律には墓地管理料について規定されていません。

管理料を取るかとらないかは墓地経営者の方針に依るのです。

今回は墓地管理料が一般的にどのような使われ方をしているのか、もし値上げの話になったらどう対処するのか考えていきます。

墓地管理料の中身

墓地管理料を一言で表現するならば墓地を維持し、墓参の環境を整えるために必要な費用です。

具体的に何に使われているのでしょうか?

人件費

墓地の管理は一人ではなく複数人で行う場合もあります。

大きな規模であれば10名近く職員が常駐し、役割分担していることがあります。

寺院境内墓地の多くは住職やその家族が一人~二人で管理しているかと思います。

その雇用形態はアルバイト、パート、正社員など様々ですがパート、アルバイトが多いでしょう。

業務内容は墓参に来られた方の接客応対や清掃、墓地、埋葬等に関する法律に定められた事務など多岐に亘ります。

清掃、修繕など

日頃の簡単な清掃は職員で行い、職員では行き届かないところは定期的に清掃業者に委託するケースもあります。

また管理事務所がある場合は老朽化による経年劣化に対処するため修繕をすることもあります。

水道光熱費や通信費

電話代、電気代、水道代、ガス代など一般家庭と同じく管理事務所で使用しなければなりません。

水道代の一部は墓参される方が清掃するに必要不可欠なものです。

管理料はこのような用途に使われています。

墓地管理料値上げの原因

墓地管理料が値上げされる原因は一つだけではありません。

様々な要因が重なってその必要性が生じる場合があります。

考えられるものをいくつか紹介します。

人件費・物価の高騰

人件費や物価は将来にわたり固定されているものではありません。

経済情勢によって変動することが起こりえます。

ここ最近、労働市場は売り手市場になりつつあります。

アルバイトなどの時給もこれまで通りにしていると募集をかけても誰も応募しないという事態も考えられます。

更に外部委託している清掃や修繕などもこのような人件費の変動に影響されやすいでしょう。

管理料の滞納

墓地を使用する方が多ければ多いほど相対的に管理料を滞納する方は増えます。

滞納が継続したり、そのまま連絡が取れなくなったりすると件数は少なくても墓地運営に影響を与える場合があります。

延滞される方をそのまま放置して対処しないということがもしあれば

「支払わなくても何も言われない」

という話になり他にも滞納される方が増えることがあります。

不の連鎖が生じると対応が難しくなることがあります。

そもそもが安すぎた

墓地の運営開始時に設定した管理料が、これまでに述べた経済情勢、滞納を考慮せずに安く設定してしまっていた場合があります。

当初の運営見通しを甘く見ていたということになります。


管理料値上げに反対できるか?

反対だけであれば一人でもできます。

ただ、管理料の値上げがあるということを聞いた時点でどれだけの墓地使用者が承諾しているのでしょうか?

自分だけではなく他の方も多数反対していれば反対しやすいでしょう。

もし少数であれば状況としては難しいかもしれません。

大規模な霊園であれば反対しにくいですが、小規模で使用者同士顔見知りで話し合いができる状況でまとまれば墓地経営者側と話し合いができるかもしれません。

墓地経営者にどのような状況なのか事情を確認しましょう。

値上げの前に説明責任を

墓地経営者による一方的な管理料値上げは気を付けないといけません。

もちろん値上げする額や値上げに至った背景などにもよりますが墓地使用者の方々と話し合いをし、値上げせざるを得ない事情を説明すべきです。

墓地の使用規則に管理料値上げの条項が入っていたとしてもです。

説明責任を果たさないことで訴訟に至るケースもあります。

最悪の場合

墓地の値上げに端を発し墓地経営者との関係が悪くなると最悪は離檀や墓地を他に移すといったことも考えられます。

小規模寺院にとって檀信徒が1軒減少することは死活問題になりますので注意が必要です。

墓地経営者側も「管理料の値上げが嫌ならこの墓地から出ていけ!」というわけにはいきませんよね。

墓地管理料の使途を調べるためにできること

そこで、値上げを回避するために可能な限りのことをしたい。

と思われることがあるかもしれません。

納めた墓地管理料、どのように使われているのかが知りたい。

墓地管理料の値上げなど墓地管理料の使途に疑義が生じた場合など、できることをお伝えします。

帳簿の作成義務

墓地管理者は墓地、埋葬等に関する法律により帳簿の備付と閲覧請求された場合の応諾義務があります。

墓地、埋葬等に関する法律

第15条   墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、省令の定めるところにより、図面、帳簿又は書類等を備えなければならない
 前項の管理者は、墓地使用者、焼骨収蔵委託者、火葬を求めた者その他死者に関係ある者の請求があつたときは、前項に規定する図面、帳簿又は書類等の閲覧を拒んではならない

ここでいう帳簿とは、金銭・物品の出納など、墓地管理上の必要事項を記入するための帳面です。
墓地管理者は墓地の管理で得た収入や支出については帳簿として残すことになります。

ただ、墓地管理料が一旦、別の勘定科目に振られるとその先のことが分からなくなるといったことが起こりえます。

また墓地管理料他の法事などで受け取るお布施収入と混同して計上している場合は厳密な区別ができなくなります。

その為、この帳簿は管理料の使途を知るうえで万能な方法ではないということです。

では墓地事業としての帳簿から宗教法人としての会計に広げるとどうなるでしょうか。

作成・備置き書類

宗教法人法では宗教法人が作成しなければない会計書類が定められています。

宗教法人法
第25条 宗教法人は、その設立(合併に因る設立を含む。)の時に財産目録を、毎会計年度終了後三月以内に財産目録及び収支計算書を作成しなければならない。

 宗教法人の事務所には、常に次に掲げる書類及び帳簿を備えなければならない

 規則及び認証書
 役員名簿
 財産目録及び収支計算書並びに貸借対照表を作成している場合には貸借対照表
 境内建物(財産目録に記載されているものを除く。)に関する書類
 責任役員その他規則で定める機関の議事に関する書類及び事務処理簿
 第六条の規定による事業を行う場合には、その事業に関する書類
何を作成すればよいのかですが、宗教法人法によれば法人としての財産目録と収支計算書を作成することが義務になっています。
さらに、2項では宗教法人の事務所に備えておく必要があります。
貸借対照表については作成している場合のみということになります。

作成・備付できてないと罰則がある

第十章 罰則

第88条    次の各号のいずれかに該当する場合においては、宗教法人の代表役員、その代務者、仮代表役員又は清算人は、十万円以下の過料に処する。
 第二十五条第一項若しくは第二項の規定に違反してこれらの規定に規定する書類若しくは帳簿の作成若しくは備付けを怠り、又は同条第二項各号に掲げる書類若しくは帳簿に虚偽の記載をしたとき。
作成できていないと代表役員に過料に処せられます。10万円以下ですが…
それ以上に失う信頼が多いかと思います。

閲覧3条件

宗教法人法 25条
 宗教法人は、信者その他の利害関係人であつて前項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項各号に掲げる書類又は帳簿を閲覧することについて正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者から請求があつたときは、これを閲覧させなければならない。

そこで問題となるのは誰がその会計書類を閲覧できるかということです。
以下の3条件を満たす必要があります。

1.信者その他の利害関係人であること
2.閲覧することに正当な利益があること
3.閲覧請求が不当な目的でないこと

これら3条件を満たさなければ閲覧が認められません。

基準は不明確

条件1は寺院であれば檀信徒ということになりますが2や3については程度やそれぞれの基準によって異なる対応になります。

宗教法人の代表役員から見て檀信徒であっても正当な利益がなく不当な目的があると判断すると拒めるということになりますね。

単純に墓地管理料の値上げに反対して檀信徒間で混乱を起こし寺院の運営に支障ができるような状況になると想像できる場合は拒否する対応になるでしょう。

しかし、閲覧したうえで墓地管理料値上げを回避するため建設的な協議をするということであれば拒否することもないはずです。

閲覧拒否の場合

残念ながら宗教法人から閲覧を拒否された場合で、話し合いをしても閲覧ができないことも起こります。

もしどうしても閲覧する必要があれば訴訟により裁判所に閲覧を請求する手続きをとることも検討することができます。

しかし訴訟を起こす時点で寺院と檀信徒の関係は悪化します。

できるだけ訴訟を避け、双方が納得いく形で管理料をどうするか考えることが重要です。

その際、檀信徒の代表者で構成される総代会があれば総代さんに取りまとめていただくことも手段としてはあります。

また寺院を統括する宗派の宗務庁に問い合わせることも考えられるでしょう。

いずれにしてもこれらは最終手段です。閲覧請求をすることで宗教法人としては真摯に対応せざるを得ないので状況が変わることも考えられます。


墓地管理料以外の手数料(収入)とは

ここまで、墓地管理料について解説してきましたが、実は墓地経営で得られる収入は管理料だけではありません。

一番大きな収入は墓地を購入する際に支払う「墓地使用料(永代使用料)」とこれまで解説した「墓地管理料」です。

この2つが墓地に関わる費用の中でも代表的なものですが、墓地によってはこれらの費用以外にも特定の手続きで発生する手数料が決められているところがあります。

管理料の値上げの際はこういった定期的な収入である管理料以外にどのような収入があるのか把握することも重要です。

手数料の種類

管理料以外の費用(収入)は多岐に亘ります。

墓地の使用開始当初に双方が同意すればある意味手数料の設定は自由に決められます。

もちろん徴収意図が不明確で使途も分かりにくいものはNGです。

墓地名義変更料(墓地承継手数料)

まずどの墓地でも考えられるのは墓地名義変更に関わる料金です。

一般的には祭祀主宰者が亡くなるとその祭祀承継者が墓地を引き継ぐことになります。

その際に墓地使用者の名義を変更することになります。

この名義変更ですがしなければどうなるのか?というのは気になりますが双方にとってデメリットしかありません。

使用者側のデメリットは毎年の管理料の口座引き落としが墓地の使用者名義でないとできない場合があり、死亡者の名義のままだと支払いができないという弊害があります。

現金持参でもよい場合はそこはデメリットにならないかもしれませんが不便です。

また墓地に納骨する場合は名義人からの申し出や手続きがないとできない場合があります。

墓地の権利者以外からの納骨は無制限に墓地管理者側が認めることができないのは当然のことです。

一方で墓地管理者側としては墓地名義人を常に把握しておくことで、不測の事態が生じた時の対応ができるということや無縁墳墓化を防止できるということもあります。

納骨手数料(納骨料)

お墓は納骨ができることに意味があると考える方もいらっしゃるかもしれません。

その納骨に対して手数料を決めている墓地があります。

寺院境内墓地になると納骨時には納骨式などの儀式を行うところが多く、その際にはお経をあげることになります。また納骨作業を墓地管理者が代わりにすることもありますので、その手数料を要求するのは理由があります。

施設利用料

霊園規模になると使用者が多くなるため管理棟内や管理棟とは別に法要施設が設置されていることがあります。

例えば親族で墓地に集まり掃除をした後に、法要施設を利用するということもあるでしょうし、雨天の場合は急遽、施設内で法要を済ませるといったこともあります。

このような場合に施設使用料が発生することがあります。

墓地使用証書再発行手数料

墓地を購入するとその使用権を証明する書類、墓地使用証書が発行されるところが多いです。

この証書は自己が使用者であることを証明する重要な書類になりえます。もし紛失した場合は再発行を墓地管理者に依頼できますが手数料が発生します。

墓地の名義変更をするとき、墓地を返還する時(墓じまい時)に証書の返還や提出を求められますので紛失した場合は手数料を支払い再発行してもらいましょう。

相場は決められていない

以上で紹介した手数料は実は相場がありません。

強いて言えば、数千円~数万円の範囲です。10万円を超えることは基本的にありませんが通常の墓地よりも規模が大きい場合や特殊な場合はあり得ます。

相場がない一方で、自治体の条例や墓地、埋葬等に関する法律施行規則などで墓地管理者は料金表を作っておかないといけないといったルールがあったり、それぞれの墓地で自主的に墓地使用規則や契約約款で予め管理料以外の料金を予め明示されているのが一般的です。

墓地をこれから購入する方は管理料以外の手数料がどのようなものがありいくらになるのか確認しておきましょう。

まとめ

墓地使用者から徴収する墓地管理料は墓地を維持するために様々な用途に役立てられます。

この墓地管理料は将来にわたって、不変のものではなく経済情勢によって見直(値上げ)される場合があり、値上げの原因が一概に墓地運営上の問題とは言い切れません。

使用者の方からすれば、ここで解説したように値上げの妥当性を検討する機会や、妥当でないと判断されれば反対と表明することも可能です。

その場合は、墓地管理料だけでなく他の手数料収入なども踏まえ、開示請求した帳簿等と照らして値上げの必要性を考える必要があるでしょう。

そこまでするのは大変…ということで値上げを受け入れるということも選択肢です。