宗教法人による墓地の破たん 民事再生の重要性と破産との違いとは

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墓地経営も破たんすることがある

どんな事業であれ栄枯盛衰はあります。

墓地も例外ではありません。

永続性が求められている事業であっても内的・外的な要因で継続ができなくなる場合があります。

実はこれまでに多くの宗教法人が墓地の経営破たんを経験してきました。

破たんに至るまでに3つのパターンがありますので今回はこのことについて解説します。

厚生労働省の指針から見えてくるもの

「墓地経営・管理の指針等について」という指針が厚生労働省生活衛生局長から発せられています。

この指針に基づいて見ていきましょう。

他者の経営介入等

墓地使用権の販売等により一時的に多額の金銭が集まることによる危うさの存在である。これを墓地経営でなく他の事業に回した結果多額の損失を被り、回収不能に陥ってしまうケースや、一時的な収入目当てに他者が経営に介入し、利益を奪い取るようなケースが考えられる。(指針抜粋)

墓地事業の特殊性は宗教法人単独で完結しない点です。

宗教法人として墓石の販売を行うことはできず石材業者が協力し墓地・墓石セットで販売することで宗教法人にも収入が入ってきます。

また墓地となる不動産の購入のための仲介、購入のための資金融通の斡旋など様々な関係者があって成り立っています。

中には土地も資金もあり墓石販売だけを石材店に委託するところもありますが、多くは何もないところからスタートです。

そのような状況で経営をスタートすると他者により経営介入されることも考えられます。

このような時に宗教法人がいかにして周囲をまとめ計画性をもってお金と向き合うかが重要です。

低金利どころかマイナス金利

最近では特に金利が低いために、財産の運用が大変難しいことが挙げられる。いわゆるバブルの時期に比較すれば、経営がより難しいのは当然である。(指針抜粋)

管理料値上げも景気変動で判断される場合があります。

本来は景気に左右されず一定となるような料金設定が肝です。

指針が作成されたときは低金利でしたが現在、マイナス金利となっています。

つまり、墓地によって得た収入を定期預金などの低リスクな金融商品として運用してもメリットがなくなるということになります。

一方では金融機関からの借り入れがしやすくなっているという状況を考えると、墓地の経営を始めることは有利と捉えていいかもしれません。

マイナス金利は一長一短ですが総じて墓地経営をするには不利な点があるでしょう。

少子高齢化と核家族化による無縁墳墓化

墓地経営の見通しが難しいことである。もともと長期的な需要を予測することは簡単ではないが、最近では特に少子化、核家族化が進むと同時に家意識も希薄化しており、何代まで墓参に来るか、すなわち無縁化しないかについても予想が立てにくくなっている。(指針抜粋)

もちろん少子高齢化と核家族化による無縁墳墓の増加や墓守り人口の減少は墓地経営にとってよくない点です。

しかしそれ以上にお墓不要論という価値観の変化は脅威です。

短期間でも故人のために墓地を購入したいという気持ちがあれば墓地は売れます。

無縁化しても最悪は無縁墳墓改葬し無縁塔で合祀するなどすれば再度その墓地を売ることができます。

売っても誰も買わないという事態は墓地経営をするうえで見通しがつかない不安と向き合うことになります。

墓地経営は相当な覚悟を

残念ながら墓地経営が破たんし宗教法人そのものが空白化した場合一番困るのは墓地を使用している方です。

誰も運営しない、誰も管理しないという事態になります。

墓地として利用し続けることはできても希望する宗派の宗教法人が墓地経営を引き継ぐかは分かりません。

墓地を始めるきっかけは宗教法人により様々です。

  • 檀信徒からの要望
  • 寺院活性化
  • 資金需要

特に資金が必要だから墓地経営を始めるケースは非常に危険です。

指針では以下のような指摘もあります。

○ 墓地以外の事業を行っている場合には経理・会計を区分するようにすること。

当該経営主体が墓地経営以外の事業を行っている場合には、宗教活動の一環として檀家向けに小規模な墓地経営を行っているような場合を除き、経理・会計を墓地に係るものとそうでないものに区分することにより、収支の明確化を図ることが必要である。

墓地で得た資金を他に流用することは禁止していません。

それは宗教法人の判断ですが少なくとも、区分経理することでどんぶり勘定にならないよう気を付けるべきです。

宗教法人の民事再生

これまでに述べた墓地の破たんと相まって宗教法人そのものの運営も立ち行かなくなり破産したり、解散するという事例があります。

このブログでも解散に関するテーマで記事を書いたことがあります

〔廃寺〕宗教法人解散とその後のお墓の守り方
廃寺による宗教法人の解散 檀家減少、後継者不足で寺院が悲鳴を上げています。 産経新聞さんの記事で浄土真宗本願寺派が廃寺やその対策など独自の対応をしていることが話題になっています。 過疎化による檀家の減少や後を継ぐ住職の不足を受け、仏教系宗派で最大の信者数を持つ浄土真宗本願寺派(...

解散の場合は経済的困窮よりも運営上の問題(寺院運営の担い手不足や活動そのものの困難さ)が多いかと思いますが経済的破綻が生じた場合は破産か民事再生になるでしょう。

この点は自然人(生身の人間)も法人も同じ扱いになります。

特に墓地を運営している場合は解散や破産をして財産を清算することになれば墓地も一つの財産として扱われることになり、墓地使用者に対して多大な混乱を生じさせます。

ちょうど一年前に破産宣告を受けた宗教法人についてニュースになっていました。

 多額の負債を抱えて1997年8月に宗教法人として異例の破産宣告を受けた入間市の古刹(こさつ)「瑞泉院」の破産管財人・細田初男弁護士は9日、所沢市内で記者会見し、宗教法人が管理していた墓地について、新設した公益財団法人に経営主体を移して正常化させると発表した。この墓地の永代使用権者は約2500人に上

この宗教法人は墓地を運営していましたが、檀家さんの墓地使用権を守るために、破産管財人の弁護士さんが奮闘されたようです。

恐らく檀家さんから墓地運営の継続を強く要望されたのでしょう。この件は新法人に経営主体を移行した特殊な例ではありますが、民事再生に関する事例は存在します。

墓地運営をしているということは一定の収益が多少なりとも発生しているケースがあり、墓地運営の継続を要望する声が強い場合は、破産をすることがよいのか微妙なケースもあります。

今回は宗教法人の民事再生について記事にしていきます。

民事再生法の目的と特徴は?

目的

民事再生については民事再生法に詳しく定められています。

そこで民事再生法の目的を確認してみましょう。

民事再生法 (目的)
第一条 この法律は、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。

民事再生法は経済生活の再生を図ることが目的となります。

一方で、破産法の場合はどのような目的になるのでしょうか。

破産法 (目的)
第一条 この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。

破産法の場合は清算を図り、経済生活の再生の機会の確保を図ることが目的になります。

民事再生法と表現が似ているようですが明確に違うのが清算をするかどうかです。

清算をするということは法人を畳むということで事業が継続できず、財産は債権者に公平に分配されます。

このように民事再生と破産は経済生活の再生という点では共通するもののプロセスそのものと法人継続か否かで全く違う手続きになります。

特徴

一般的な民事再生の特徴は以下の通りです(LSC綜合法律事務所HPより抜粋)

  • 個人・法人を問わず利用できる。
  • 株式会社以外の法人でも利用できる。
  • 再生債務者は一定の財産保有を維持でき、業務遂行権を失わない。
  • 裁判所等の監督はあるものの、債務者自身が主体となって手続を遂行する必要がある。
  • 経営陣の交替が必須とされていない。
  • 債権者の同意・意向が重要な意味を持っている。
民事再生手続とはどのような手続なのかについて,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。民事再生手続にお悩みの方のお役に立てれば幸いです。

この特徴で挙げられているように、債権者の同意、意向が重要な意味を持つといえます。

民事再生する側の一方的な希望だけでは通らないということになり、裁判所を通じて債権者との調整が必要になります。

破産手続開始は解散事由になる

破産手続開始は解散事由になるということが宗教法人法で明記されています。
宗教法人法 (解散の事由)
第四十三条 宗教法人は、任意に解散することができる。
2 宗教法人は、前項の場合のほか、次に掲げる事由によつて解散する。
一 規則で定める解散事由の発生
二 合併(合併後存続する宗教法人における当該合併を除く。)
三 破産手続開始の決定
四 第八十条第一項の規定による所轄庁の認証の取消し
五 第八十一条第一項の規定による裁判所の解散命令
六 宗教団体を包括する宗教法人にあつては、その包括する宗教団体の欠亡

つまり破産手続と解散はセットということになります。

逆に宗教法人法では「民事再生」をした場合は解散事由にはなりません。

事業を継続、再生を目的に民事再生をするので当然言えば当然です。

民事再生の重要性

宗教法人は容易に設立できるものではありません。

まず、宗教団体として立ち上げし、そこから概ね3年程度活動実績が認められないと認証されません。

解散をするのもいろいろな手続きを踏まなければならないのですが、それ以上に設立は難しいといえます。

もし債務超過となった場合は破産による解散よりも民事再生の道をまず探るべきです。

ただ、債務超過によって休眠状態になるのであれば解散を選択するほうが良いのかもしれません。

税金逃れの宗教法人売買の温床になるのであればいっそのこと解散させるほうがいいでしょう。

民事再生は事業継続の良し悪し、債権者の意向、債務超過の状態によって裁判所が判断します。

一方で破産により第三者である墓地使用者が迷惑を被ることになることも避けなければなりません。

破産をすれば墓地や納骨堂の経営許可を出した行政側に永続性を判断する審査が疎かになっていたのではないかという批判も受ける可能性がありますし、宗教法人が解散すると経営主体が不在となり運営に空白が生じることもあります。

墓地行政上、懸念されることが生じることは確実です。

民事再生の手続きは誰に依頼すればよいか

民事再生の手続きは高度な法律知識が必要です。

そのため弁護士に依頼することになります。

もし依頼するのであれば破産や民事再生を専門にしている事務所が無難です。

更に宗教法人による民事再生の経験もあればなお心強いでしょう。

お金の話は宗教的には俗の部分になりますが、お金のことが解決できなければ布教活動を含む運営がしにくくなるのは事実です。

大多数の宗教法人では堅実に運営されていると思いますが、どうしても困ったときはこのような手段もあるということだけ頭の片隅にあればよいでしょう。

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