民法改正で墓地運営に影響はあるのか

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墓地使用契約は分かりにくい?

墓地を購入する際に、署名捺印をする墓地使用契約書。

契約書という名称ではなく畏まらない申込書という形式のものもあります。

いずれにしても小さい文字で約款が記載されていて、署名捺印をした時点でその約款を承諾したとみなされるものが多いです。

しかし、「そんなはずじゃなかった」と契約後、墓石建立後など約款に十分目を通さなかったがために契約を解除したいということも出てきます。

逆に墓地経営者側から解除することもあります

墓石建立をした後になるともはや使用者側からの解除は不可能になり契約内容の認識の違いでトラブルになる事例もあります。

実際に一般の方からすると分かりずらいところがあるのは事実です。

最近は墓地と一口に言っても、従来型の墓地、樹木葬墓地、合葬墓地など様々な使用形態があり、契約内容もそれぞれ変わってきます。

そのような多様な墓地形態があれば、売る側がそれに対応できるのかが問題になります。

契約時の説明に時間と手間を割きましょう

墓地を運営されている方にお願いしたいのは、運営している墓地の形態が万国共通のものではないということを強く認識してほしいということです。

墓地は立地や運営者やその宗教法人の教義によって十人十色(十墓十色)です。

うちの墓地は他の墓地と全く同じという感覚があればまずそれは捨てましょう。

というより、もし自分の墓地しか知らないということであればもっと周りの墓地を見て違いを意識してみましょう。

墓地の運営は大同小異。

大半は共通していても小さな違いが使用者にとっては大きな違いになることがあります。

墓地を使用される方と契約に臨まれる際は、錯誤が生じないように丁寧な説明を心がけるべきです。

この業界に関わられている方の中には

「とにかく販売して数字を出したい」

「説明する余裕がない」など綺麗ごとだという批判があるかもしれません。

しかし、説明を怠ることで後々、訴訟など賠償の話になると経営上非効率な話になります。

また訴訟が多い会社や宗教法人はそのような噂が流れ消費者が敬遠するでしょう。

宅建仲介と比較して

ところで人生で大きな買い物の代表例として自宅(住宅ローン)があります。

マンションにしても一軒家にしても一括で現金で買うことはほぼないので住宅ローンを組むことになりますが、数千万もするものがほとんどですので、契約をする時には契約書類は隅々まで目を通されることでしょう。

しかし、多くが不動産仲介あっての取引になります。

特にマイホームの購入では通常、宅建業者が仲介しそこで重要事項説明を受けるはずです。

宅建業者による重要事項説明の制度はこちらのサイトが参考になります。

宅建試験における宅建業法の解説。とても重要な、重要事項の説明(35条書面)方法から説明内容まで見ていきます。

何故、このような制度があるかというと非常に高額な取引になるために、消費者を守る制度が必要になるからです。

予め重要事項を宅地建物取引士という国家資格者に説明させ、後々のトラブルを回避するため取引の安全性を担保しているわけです。

墓地は不動産ではありません。

しかし、墓石の購入などを含めると200万~300万円もする大きな買い物です。(樹木葬や合葬墓は100万円以下でも購入できるところが多いです)

因みに、宅地建物の取引以外には保険販売、マンション管理委託などでも重要事項説明が法律で義務付けられています。

墓地に関しては消費者保護の仕組みはまだまだ未整備といえるでしょう。クーリングオフ制度も適用されない場合もあり消費者保護が万全かというと微妙なところです。

説明不足によるトラブル事由

ほんの一例ですが説明が不十分で起こり得る問題を紹介します。

使用期間の不知

半永久的に使用できると思っていた墓地が実は使用期限が区切られている。

期限後も使用できるが更新料が必要になることがあります。

これらを知らないまま墓地を使用開始し、期限について後から気付くケース。

墓じまいをする際の更地工事費用

墓じまいをする場合は墓地を墓地経営者に返還する必要があります。

返還するということは更地にすることになりますがその費用は原則使用者負担です。

このようなことを予め説明していないことで墓じまいでトラブルになるケース。

墓地使用料が返還されない

墓じまい等で墓地を返還する際は当初支払った墓地使用料は返還されません。

それを知らずに、返還し揉めるケース。

墓石建立に関するルール

墓地購入後、一定期間内に墓石を建立しないといけない。

墓石は決まったサイズや形状に従わないといけないなどの規則があるのを知らずに購入しトラブルになるケース。

管理料の変動

墓地購入時の管理料が将来的に値上げされる場合があるが、説明不足による値上げ時にトラブルになるケース。

業界の常識は一般人には通用しない

以上で紹介したトラブル事例は、この業界で勤めている方にとっては常識でしょう。

しかし、この常識は一般人にとっては別の世界の話で知らないことの方が多いです。

墓地使用規則を定めておいて、購入者に配布する。というのでは不十分です。

購入時に使用者にとってデメリットもしっかり話をして、そのうえで購入する判断ができるように配慮すべきです。

今のところは墓地や墓石について、消費者に重要事項説明を義務付けるような法制化の動きはありませんが、トラブルが後を絶たない場合は消費者団体や厚生労働省や消費者庁といった公的機関が動く可能性があります。

そのようなことが起こらないよう、墓地を運営する方は独自の販売マニュアルや規則の読み合わせなど従来経験したトラブル事例などを再び犯さないように対処することが求められます。

民法が改正される

墓地使用契約時のトラブル回避の話と関連がある民法の契約ルールが大幅に見直される見通しとなりました。

契約のルールを定めた規定を大幅に見直す民法改正案が12日、衆院法務委員会で可決された。取引条件を示した「約款」に関する規定の新設などが柱で、今国会で成立する見通…

そもそも契約って何?という話があるので念のため確認すると

約束。一定の法律的効果を発生させる目的で、相対する当事者の合意によって成立する、法律行為。

お互いに権利と義務を決めることでもあります。

例えばお金の貸し借り(金銭消費貸借契約)で言えば

お金を借りる権利とお金を貸す義務を合意します。

逆に言えば…

お金を返してもらう権利とお金を返す義務も合意することになります。

そのような合意をする時のルールが大きく変わるというのが今回の民法改正です。

改正の中身とは

では契約ルールのどの部分が変更となったのでしょうか?

今回ニュースで挙げられているのは以下の5点です。

①商品の売り主が契約内容を示す「約款」が買い主に著しく不利益な内容であれば無効
②個人が企業向け融資の連帯保証人になる際、公証人が面談して意思を確認するよう義務付け
③未払い金や滞納金を請求できなくなる期限(時効)を原則「請求できると知った時から5年」に統一
④賃貸住宅の原状回復費について、通常の使用で劣化した分は入居者の負担にならないと明示
⑤認知症の高齢者など判断能力が低い人が結んだ契約は無効と明記

一見すると墓地の運営と何ら関係がない改正のように見えます。

当ブログでは、5つのうち3つで少し影響が出るのではないかと見ています。

改正で影響すること

影響が出るのは①③⑤の3点と見ています。

それぞれ見ていきます。

墓地契約約款に影響?

①の改正によると墓地使用権を購入する買主とって著しく不利益な内容になると契約は無効となります。

ここでいう「著しく不利益」という程度が不明ですが、墓地経営・管理の指針等についてにある墓地使用に関する標準契約約款が基準になるのではないかと思われます。

例えば墓地使用規則に反すると罰金が科せられるとか、年に〇回墓参や行事を参加を義務付けるなど非常識なことを条件にすると「著しく不利益」になるかもしれません。

管理料の請求に影響?

次に③による未払金請求の時効が5年に統一されるというものです。

これは墓地管理料の未払い対応に影響ができるのではないかと考えられます。

請求できると知った時から5年ということですので、口座振替であれば引き落としができなかったことが分かってから5年ということになりそうです。

一般民事債権であれば金銭債権は10年となっています。この墓地管理料は商事債権ではないので従来の10年から5年になります。

民事債権と商事債権にはいろいろ違いがあるようです

 今日は民事債権と商事債権について。  前者が民法上の債権であり、後者が商法上の債権。後者は、営利性..

墓地使用契約の成立に影響?

最後に③の判断能力の低い方が契約をした場合は無効にする改正です。

これも①と同様に墓地使用契約の時に墓地を販売される方は判断能力の有無をしっかり確認しないといけません。

日頃から気を付けている墓石営業の方は多いはずですが、この改正が現実になると生前建墓をされる高齢者に対して注意が必要になります。

自宅では認知症の症状が出ているのに、外出すると症状が出ない方もいらっしゃいます。

販売する側とすれば少し困難な部分があります。

事理弁識能力を欠いた常況である成年被後見人となった場合は墓地を購入した後に後見人から、墓地使用契約の取消しができます。

後見制度をより浸透させる方が先決であるような気がしますが、これで無効になると後見制度自体が必要なの?とならないか個人的に心配です。

ただ後見申立てをしようとする前でも、実際に認知症になっている以上、無効になるのはある意味で理にかなった考え方でもあります。

弱者救済

この改正の趣旨を見てみると弱者救済の度合いを強めていると言えます。

特に連帯保証人になるのに公証役場での意思確認を要する部分や、賃貸住宅の経年劣化を借主の負担にしないことはある意味で弱者救済でしょう。

民法改正が公平で揉めないような契約ルールになってくれるのを願っています。

墓地使用契約についても今の契約書を見直して、改正が必要な部分は早めに対処されることをお勧めします。