〔墓地経営主体の交代〕の手続き ルール整備はどうなっているのか

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墓地経営者を変更することはできるか

墓地の運営ができなくなった。

資金的な問題で継続が困難。

後継ぎがいない。

などの理由で墓地経営を諦めざるを得ないことがあります。

しかしその墓地を引き継ぎたいという宗教法人が現れたら…

いわゆる地位の継承について解説していきます。

変更のみの手続きはない

端的に言うと国の考え方は、墓地の経営権は譲渡しえないものとしています。

その為、新たに引き継ぐ宗教法人が許可を取得する必要が出てきます。

AからBに経営を引き継ぐ場合は

Aを一旦廃止し、Bで新たな許可を取得するという流れになります。

何故、このような流れになるのか。

新たな宗教法人Bが墓地経営をするに足りる、条件を整えているのかをしっかり審査しなければならないからです。

これが例えば自治体が経営する墓地を宗教法人に変更する場合も同様です。

注意すべきこと

墓地を廃止し、新たに許可を取るということは非常に珍しいケースであり、行政としても渋い対応をすることになります。

前例があまりないないため仕方ないと言えます。

廃止する墓地を使用している使用者の意向はどうなるのか。

ということも重要です。

自治体が運営していたものを寺院などの宗教法人を運営するということになれば抵抗がある使用者がいないかということもあります。

寺院から寺院であっても宗派が違えば教義上の違いが生じます。

墓地、埋葬等に関する法律の目的の一つに国民の宗教的感情に適合というものがあります。

ここを侵害されたと訴える使用者がいると問題になります。

しかし、墓地さえ使い続けられれば目をつむるという使用者も相当数いるでしょう。

特に事業型霊園の場合は墓地の立地に惹かれて購入するケースもあります。

いずれにしても運営ができなくなる旧経営者の事情、使用者の意向、そして新経営者の適性を総合的に考慮しなければならないということになります。

墓地の廃止=全て改葬することではない

墓地を廃止するということは、墓地としての利用を廃止するということです。

しかし、この場合経営者の都合で使用者は改葬をしなければならないかというとNOです。

ここは行政も現実的な対応をし、墓地の廃止日と経営許可取得を同日にし無許可状態を回避することで円滑に継続できるよう配慮しなければなりません。

使用者が混乱するといった状態を作ることは認められず、経営者が変わることで改葬を求めるということは現実的ではありません。

やむを得ず、運営を継続できなくなった場合はその原因について説明しなければなりません。

その原因に対してどのような対応をしたか、本当に継続できないのかという疑問に対して真摯に答える必要があります。

墓地使用者に迷惑をかけないためにできるだけのことをしましょう。

墓地の地位継承を前提とするルール整備が求められる

檀信徒の散逸が著しい場合、墓地経営者である宗教法人が解散したり休眠するということがあれば、墓地経営者を変更する必要があるでしょう。

吸収合併、新設合併に関わらず別の法人格が担うのであれば管轄する行政庁と協議が必要になります。

ルール整備について

法律上は墓地事業の譲渡、いわゆる地位の継承という概念はないので、旧経営者による墓地廃止申請と新経営者による経営許可申請の手続きを同時にすることになります。

通常、墓地を廃止する場合は全ての墓地を改葬して遺骨がない状態にしなければなりません。

しかし、経営者を変更するのみであれば全件改葬はしなくてもよいはずです。(もっとも経営者が変わることで宗派や管理者の変更が伴う場合、改葬したい使用者がいれば応じる必要はあります。)

このような経営者変更に対応したルール(内規を含め)を整備しているかは自治体によりますが、表向き整備されていない自治体の方が圧倒的に多いのです。

今回、経営者変更を想定した細則等が整備されている自治体を紹介しまだできていない自治体はこの事例を参考にして欲しい。

ということで烏滸がましいのですが記事にしてみました。

経営者変更のルールがある自治体

私が調べた限りでは以下の2つ。

矢巾町と糸満市です。

この2自治体はそれぞれ定め方に違いがあります。

矢巾町の事例

矢巾町は経営者変更に伴う、墓地廃止申請の際に改葬申請をする必要はないということを明記しています。

(改葬完了の確認)

第6条 墓地の廃止の許可又は区域の変更の許可は、当該区域に埋葬されている死体又は埋蔵されている焼骨の改葬が完了していることを確認した後に与えるものとする。ただし、経営者変更の場合であって、墓地廃止許可申請と墓地経営許可申請が同時になされたときは、この限りでない。

多くの自治体で経営者変更の概念自体を持たないところ、経営者変更とその場合の改葬は不要ということを踏み込んで細則に定めているのは先進的です。

個人的にこのような内容を多くの自治体の細則で盛り込み、経営者を変更できる仕組みを整備して欲しいところです。

矢巾町はモデルケースだと思います。

糸満市の事例

糸満市の場合は矢巾町と違い改葬が不要ということについては触れていませんが、経営者変更について明記されています。

糸満市墓地等の許可申請に関する事務取扱要領

第3 変更許可及び廃止許可の取扱い

1 変更許可 

墓地の区域の変更とは、既設の墓地に隣接して墓地区域を拡張する場合及び既設の墓地区域内において墳墓の設置場所を拡張する場合、並びに既設の墓地の一部を廃止する場合をいう。また、既設の納骨堂に隣接して新たな納骨堂を建造する場合は、たとえ同一地番あるいは境内地内であって も新設として取り扱う。(既設の納骨堂を増築する場合は、変更許可) なお、経営者を変更する場合は、新たに法第 10 条第 1 項の許可を受けなけ ればならない。

条例や細則で定めるべき?

墓地、埋葬等に関する法律10条では墓地の新設、変更、廃止は都道府県知事の許可を受ける必要があることを定めています。

具体的にどのような条件で許可を受けることができるかは市町村長の広範な裁量権により、審査基準が自治体によりばらばらです。

そのことは地方分権の流れがあるのでよいのですが、墓地の運営ができなくなった宗教法人が他の宗教法人に運営を任せたいという場合に、どのような手続きが求められるのか不透明なところは困ります。

廃寺が増えている状況でこのようなルール整備がなされず、手続き自体がよく分からず宗教法人を解散するといったことになると墓地使用者に多大な影響が出てきます。

経営者変更の絶対数は少なくても、具体的な運用を国が主導で決めるか、自治体が自主的に整備して欲しいところです。

もちろん、引き継ぐ宗教法人についてはしっかりと審査され永続性が担保されるべきなのは言うまでもないことです。