〔ビル型納骨堂〕担保設定と財産処分 梅旧院光明殿脱税事件から

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大阪でビル型納骨堂を運営する光明殿が脱税事件

先月ですが大阪市浪速区でビル型納骨堂「梅旧院光明殿」を運営する「光明殿」社長、山口幸子容疑者らが脱税の疑いで逮捕された事件がありました。

山口容疑者は納骨堂のテレビCMに出演しており関西圏では相当認知されていたと思われます。

こちらがCM画像です。

これが単なる脱税事件であればここまで取り上げられていなかったのですが…

派手な暮らしぶりや、CM出演、そして宗教法人と一緒にビル型納骨堂を運営していたことが相まって注目されているのでしょう。

今回の件では単純に脱税したことを批判するということではなく、ビル型納骨堂についてこれまでも書いてきたことのまとめも踏まえて考えていきます。

納骨堂ビルの土地建物に抵当権設定

この事件から明るみになってきたことは、そもそもは脱税事件だったわけですが、ビル型納骨堂に抵当権が設定されているという話が出てきています。

納骨堂を所有する宗教法人が納骨堂の土地・建物などを担保に、同社(株式会社 光明殿)から多額の融資を受けていたことが分かった

宗教法人「梅旧院」が株式会社「光明殿」から多額の融資を受けているということで、その融資の使途ははっきりしていません。

具体的な金額については引用記事にも書かれている通り11年に極度額5億円の根抵当権が設定されています。

登記簿によると、同社から宗教法人への融資は00年ごろから始まり、03年には約5300万円の融資の担保として納骨堂に抵当権を設定した。その後も融資は続き、11年には極度額5億円の根抵当権が登記され、宗教法人が返済できなければ競売にかけられる状態になっている。

根抵当権って?という方は分かりやすく解説したページがありますので参考にしてみてください。

平たく言えば土地建物を担保に様々な名目で5億円まで借り入れが可能というイメージです。

抵当権設定は財産処分

今回の脱税事件から明るみになった抵当権設定ですが、宗教法人にとってはこれは財産処分に当たります。

〔墓地の抵当権設定〕財産処分に当たる?
墓地に抵当権設定 宗教法人に限らず墓地の許認可を取得する際、土地に抵当権が設定されてないことが条件とされているところが殆どです。 抵当権が設定されていると許可が取得できない理由は、抵当が実行されると競売にかかり土地の所有権が他者に移ることが懸念されるためです。 他者に移ることで、新たな...

財産処分をする場合は、宗教法人規則に基づいて手続きを進めなければなりません。

宗教法人梅旧院の場合は登記簿を見ると曹洞宗の代表役員が承認しなければできません。

本件においても承認があったのかは定かではありませんし、この承認を取ることが簡単なものか厳しく審査されるのか定かではありません。

ただ、このような承認がなくても実際に根抵当権の設定や登記を行うことは実際に可能です。

しかしその場合は後から包括団体から何かしら処分を受けることがあります。

本件についてはあくまで曹洞宗代表役員の承認さえあればよく、総代会などの諮問(議決)機関の同意が必要ではないようです。

なぜ財産処分に規制があるのかというと、宗教法人の役員の独断専行を認めないということや、容易に運営が傾かないようにするために必要最低限の規制ということができます。

そして、この宗教法人の経営が不安定になれば困るのは納骨堂の利用者になります。


宗教法人規則を確認することができるか?

この梅旧院の宗教法人規則を確認することはできるのでしょうか?

私は勿論、世の中の大半の方は確認する術はありません。

しかし、宗教法人法には以下の条文が存在します。

宗教法人法 (財産目録等の作成、備付け、閲覧及び提出)
第二十五条 宗教法人は、その設立合併に因る設立を含む。)の時に財産目録を、毎会計年度終了後三月以内に財産目録及び収支計算書を作成しなければならない
2 宗教法人事務所には、常に次に掲げる書類及び帳簿を備えなければならない。
一 規則及び証書
二 役員名簿
三 財産目録及び収支計算並びに貸借対照表を作成している場合には貸借対照表
四 境内建物財産目録に記載されているものを除く。)に関する書類
五 責任役員その規則で定める機関の議事に関する書類及び事務処理簿
六 第六規定による事業を行う場合には、その事業に関する書類
3 宗教法人は、信者その他の利害関係人であつて前項の規定により当該宗教法人事務所に備えられた同に掲げる書類又は帳簿閲覧することについて正当な利益があり、かつその閲覧請求不当な目的によるものでないと認められる者から請求があつたときは、これを閲覧させなければならない。

規則を含め、収支計算書などの帳簿は

信者その他の利害関係人が

①正当な利益がある

②閲覧の請求が不当な目的でない

この2点に当てはまる場合は閲覧の請求ができ、宗教法人は閲覧させないといけないということになります。

そこで納骨堂利用者はこの条件に当てはまるかというと、私の主観ですが利害関係人に当たりえるでしょう。

なぜなら半永久的にその納骨堂を利用することになっており、宗教法人の運営如何で抵当権が実行され競売にかかれば、たちまち納骨堂としての利用ができないという恐れがあるからです。

そのような法律上の利益が主張できるようであれば資料の閲覧を求めてよいのではないでしょうか。

審査基準で担保設定禁止?

担保設定には審査基準上の問題もあります。

記事には当局が改善を指示してるということが書かれています。

市の審査基準では、納骨堂の安定運営のため、土地を担保に入れることを禁止している。市の担当者は取材に「担保に入っているとは知らなかった」と話し、法人側に改善を求める方針。

実は大阪市の納骨堂審査基準を見てみますと担保設定の禁止などは書かれていません。

大阪市 納骨堂経営許可申請 審査基準

一般的に担保設定をしないことは好ましいことではないのですが、現実的に許可取得後も禁止するのは難しいといってもいいでしょう。

行政の肩を持つわけではありませんが、市の指導が行き届いていないという批判は当たらないと言えます。

よって仮に審査基準などで禁止していても一時的なもので10年、20年先のことまで効果を及ぼすかといえば不可能でしょう。

しかし、大阪市の方もビル型納骨堂ですから建物の維持管理などで多額の資金が必要であることは分かっていたはずです。

それ以上に販売が好調であればよいわけですが、そのようなことはどこにも保証がなく妥当な運営計画を宗教法人側が提示していたのかが問題です。

また上記にあるような審査基準はビル型納骨堂を念頭に置いたものでないということも問題といえます。

墓地と同じく納骨堂も永続性が担保されるべきという考え方ですので、ビル型納骨堂においてはより厳しい審査が求められてくるのではないでしょうか。

納骨堂の永続性についての記事です。

〔納骨堂〕墓地との違い、増加する背景と永続性について考える
納骨堂のこと 今回は納骨堂のことを中心に書きたいと思います。 納骨堂って焼骨を保管して置く場所? 平たく言えばその通りです。 でも法律上の定義がありその定義に一致したものを納骨堂と呼びます。今回はその定義を踏まえて墓地とどのような違いがあるか解説します。 法律上の定義 ...

まとめ

光明殿の社長が脱税の疑いで逮捕されたことがきっかけで、納骨堂に根抵当権が設定されていることが分かりました。

抵当権設定は財産処分に当たるため適正な手続きが必要になりますがどのようなプロセスで行われたのかははっきりしていません。

ただ、納骨堂利用者側にとっては利害関係があると考えられますので宗教法人規則や財務状況を把握するための資料など閲覧する権利があるのではないかと考えられます。

審査基準はビル型納骨堂に関しては通常よりもより厳しい基準で対処すべきで、特に将来的な資金計画については行政も把握しておくようにすべきでしょう。

今回の脱税事件と担保設定との明確な因果関係はまだはっきりしていませんが、仮にあると判断されれば今後のビル型納骨堂の在り方に問題提起がなされるのは間違いないでしょう。